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    兄カフ♀。いち兄が白蛇に特殊体質。カフがそもそも女性。展開が早い。

    白蛇様のお花さん弟なんて薄情なもんや。

    ブスくれている保科宗一郎に対し付き添っていた部下の如月が呆れきったような顔になる。

    「全面的に宗一郎さんがあかんと思いますよ。半年振りの再会で、顔合わせたのと同時に間髪入れず【雑魚四郎】なんて呼んだりしたら………。そりゃ宗四郎君じゃなくても、誰だってあんなめっちゃ汚らわしい虫螻を見るような目になってしまいますよ」
    「なんやねん!久々に可愛えぇ弟に会えて嬉しいって言うおにぃの可愛らしい照れ隠しやんか。これだから関東人は。ほんまノリ悪いで」
    「隊長………今の台詞、ほんまにどちらの地方の人にも苛つかれるんで。絶対にインタビューとかでほざかんで下さいね」

    結構本気で窘めてきた如月に宗一郎はへいへいとあきらかに適当だと解る返事をしながらヒラヒラと片手を振って歩き出した。

    「隊長どこいかはるんですか?あと1時間で会議始まりますよ」
    「なんや、おかんが東京行くなら東京バ●ナ買うて来い言うてん。雑魚四郎にパシらせよう思ったんやけど死ね言うわれてん。あいつ、関東行ったら人情味の無い冷たい人間になってしもうたんや。ほんま、悲しくて泣いてまうで」
    「………ちなみに宗四郎君に頼む時なんて台詞を言ったんですか?」
    「あ?普通に頼んだで。【雑魚四郎、ちょっとお前ひとっ走り東京●ナナ買って来いや】って」
    「宗四郎君が殺意覚えんのも仕方ないっすね」

    心底呆れた顔で如月は言うと、会議始まるまでには戻って来て下さいよとさらに付け加えて言い、さっさと背中を向けて去って行ってしまった。

    「なんやねん。ここの奴らは薄情もんばかりや」

    そう毒づくと宗一郎は憮然とした顔をしたまま基地を後にしたのだった。


    そして現在、宗一郎はピンチに陥っている。

    「くそっ………ありえへんやろ。なんでバナ●無いんや!」

    舌打ち塗れの六件目。宗一郎は申し訳なさそうにしている店員に気にせんといてなと優しく告げると店をでた。

    「あ───くそ。時間もヤバなってきたし。もういっそサボったろかな。如月が出てくれるやろ。適当でえぇか」

    そんな宗一郎の隊長としてあるまじき言葉を神様が聞いていたのだろう。宗一郎が一歩踏み出した瞬間、バケツをひっくり返したように大雨が降り出した。

    詰んだ。

    無論、傘なんて持っていない宗一郎。激しい凍てつくくらい冷たい雨が宗一郎の体に問答無用で直撃して降り注ぐ。あいにく季節は吐く息が白く見えだしてくる冬。

    最悪や………腹も減ったし………軒並みついてへん。東京で師団会議なんぞするからや。今はリモートっちゅうサボれるツールがあるんやから有効利用せんでどないするねん。

    ぶつくさと文句を言いつつ、このままいてもどうにもならないと悟った宗一郎はびしょ濡れのまま歩きだそうとした。

    その時である。

    「誰か!怪獣に子どもが!」
    「嘘やん。今日は厄日か!」

    助けを求める叫び声に宗一郎は大きく舌打ちして駆け出した。



    水たまり、そこに浸かっていたのは───。

    「蛇?」

    日比野カフカは首を傾げて歩み寄る。昼から降り始めた雨は時間が経つにつれ、激しさを増して行き、やむ気配など全くなく、寒いのに最悪だとうんざりしつつ、仕事を終えたカフカは家路を急いで歩いていた。砂利混じりのモルタルの道、そこにいくつ生まれていた泥水の水たまりの一つでカフカはそれを見つけた。

    「白蛇って珍しんじゃなかったっけ?」

    長さとしては三十センチの物差し程。一般的な散水用ホースくらいの太さの白い鱗をした蛇に、カフカはしゃがみ込んで物珍しそうに眺める。

    「し、死んでのか?」

    どうしよう。

    カフカは考え込む。

    「確か白蛇ってめっちゃ縁起のいいやつじゃ………このまま放置したりなんてしたら罰当たりとかになるんじゃねぇだろうな」

    カフカは呻く。するとモルタルに顔をふせていた白蛇がゆっくりと頭をもたげてカフカの方を見た。

    「ふぉ!」
    「腹減った………寒い………」
    「へ?」

    ポカンと呆けたカフカに白蛇は金のような瞳を不快げに細めると告げた。

    「あかん………しんでまう」

    と。ハッキリバッチリ聞き取りやすい日本語で。

    へ、蛇って喋るのか!?白蛇だから?いやいやいや!ありえないかだろ!ってか何で関西弁!?や、やっぱりただの蛇じゃねぇんだ!

    パニックになりかけているカフカ。すると白蛇は言った。

    「東●バナナ………」
    「は?白蛇って●京バナナ食うのか?」

    激しく降り続けている雨の中、日比野カフカ三十二歳、歳のわりには見た目は若く見られる元気とそこそこのやる気が売りの女性は謎の人語を喋る白蛇様を自宅に連れて帰ったのだった。

    白蛇の主食だと言う、東京の有名な菓子を購入して───。


    暖かい。

    微睡む意識の中で宗一郎は思った。

    ほんま最悪やで。腹減って怪獣討伐したら道に迷って………。

    「ん?ぽよぽよ………」
    「あ、気づいた」

    意識を取り戻した宗一郎は視界に広がった景色にクワッと目をひん剥いた。

    「よかった。やっぱこうやって風呂に浸かるのがほどよく温まっていいよな」
    「くぁwせdrftgyふじこlp!?」

    察しのいい方は気が付かれたであろう。意識を取り戻した宗一郎が見たのは瑞々しい玉のような肌色、そして頬を少し赤くしてニコニコと自分見つめていた女性だった。

    「おまっ!何しとるんや!」
    「はぁ?仕方ねぇだろ。私も濡れて寒かったから早く風呂に入りたかったし!お前だけだと溺れるかなって」
    「にしてもや!お前、女がやすやすと肌を見せるもんやない!しかも俺は男やぞ!」
    「男って………。お前の場合、男ってより雄だろ?蛇だし。それにこんなだらしないおばさんの裸なんて見てもどうって事ねぇじゃんか」

    ケラケラと笑う女性。ベリーショートの黒髪に勝ち気な瞳、おばさんと言うには若く見える。宗一郎が枕にしていた部分は勿論、普通の女性よりは筋肉質だがしっかりと肉付きのいい体をしており、ある意味で魅力的だと言える。なんなら宗一郎の好みは、こういったぽちゃぽちゃと触り心地のいい体をしている方で。

    あかん………これはあかんで。

    蛇の姿をしてなければ、ここでは書けない男のアレコレが非常に大変な事になっていた。宗一郎は思わず遠い目になる。まぁその場合であれば、このような事態にはならなかっただろうが。

    「俺をどこで?」
    「会社の帰りに道で。水溜りに浸かってたんだ」
    「まじか………最悪や」

    うんざりとなる宗一郎。見なくても解る。帰ってこない。しかも連絡もつかない事で如月がため息をついて謝っている姿が。そして呆れ返る周囲。きっと真面目な弟は、こんな迷惑をかけている宗一郎に対して、こめかみに青筋を立てて兄弟の縁を切る事を本気で検討し始めているであろう。

    「えっと、白蛇は「宗一郎や」………名前あるのか。ってなんか聞いた事あるような………。まぁいいや。宗一郎はどこから来たんだ?」
    「大阪や。本部でしょーもない会議がある言うてシブシブ来たんやけど。こないな事になるんだったら来るんやなかったわ」
    「会議?えっと宗一郎って実は偉かったりするのか?」
    「単に家がそことズブズブな関係なだけや」
    「………本人が言うのかよ」

    苦笑した女性は宗一郎の頭を撫でながら息をつく。

    「けどさ。それでもきっと宗一郎自身が慕われているからこうやっていられるんだよ」
    「………えらい解った口聞くやないか。名前は?」
    「カフカ。日比野カフカ。まぁ一応長く社会人してるからな。何となく宗一郎は出来る上司なんじゃないかって思ったんだ」

    カフカの天真爛漫な邪鬼のない笑顔に一瞬、虚を突かれたように宗一郎は魅入られた。

    なんや………こいつ。見た目はガテン系の元気な姉貴って感じしとるんに。笑顔になるとめっちゃおこぼいって言うか………こう………ぎゅって抱きしめてやりたくなるような………そうや!タロウや!こいつタロウに似てるんや!

    タロウ。それは宗一郎が幼い頃から大切にしている柴犬の大きなぬいぐるみの事であり、今でも宗一郎の自宅で相棒として大切にベッドのお供になってくれている。

    うっわ………しかもめっちゃ尻尾振ってそのお目目くりくりさせて………生きとるやん。タロウ。いやカフカやった。あぁ、撫でたいわ。抱っこして頬ずりしたいわ。

    「ん?どうした?宗一郎。湯当たりしたか?」

    ある意味でとても激しい欲求に悶々としている宗一郎にカフカは小首を傾げる。

    「………せやな。ちょっと熱うなってしもうた」
    「まじか!」

    慌ててカフカが湯船から立ち上がる。宗一郎を抱き上げて。結果、勢いよく宗一郎の頭がふくよかなでたわわなカフカのお胸の谷間にズボッと入り込んでしまった。

    「ひゃっん!」

    このど阿呆がぁあやわ………あ………天国やねん。

    宗一郎は幸せな圧迫感を感じながら頭の中で何度も沸き起こってくる煩悩を滅却するため、よく解らない般若心経を唱え続けたのだった。


    一方その頃───

    「ほんますまん。俺が付いていくべきやったんや」
    「如月さんは悪くないですよ。あれが全部悪いんや」

    完全にうんざりだと言うのを隠しもせずきっぱりと吐き捨てる保科宗四郎に如月は渇いた声で笑う。

    「隊服と端末は回収済みだと連絡はあったんですけど。財布が取られてしまうたみたいで」
    「あ、大丈夫や。隊長は面倒くさがって最近は全て端末での決済にされとったから。財布は部屋に置きっぱなしや。せやからそれは心配されなくても大丈夫や………。えっと………。宗四郎君。そない殺気まみた顔せんといてや」
    「如月さん………あいつ、見つけたらぶつ切りにして土鍋で炊いてやろう思ってん。漱石先生の小説で蛇飯ってのがあってん。一度食うてみたい思ったんですわ」

    爽やかな笑顔で言って腰に携えている自身の専用武器である刀の柄を鳴らした宗四郎。

    隊長………あんた帰って来ない方がえぇかもです。まぁ、でも、元々はあんたの自業自得なんで。諦めてうまく逃げて下さい。応援はしてますから。

    如月はあっさりと隊長である宗一郎を見捨てる事にした。


    保科宗一郎。室町から続く怪獣討伐を生業としていた一族の長子として生まれ、将来は家を継ぐ跡取りとして役目が定められている男である。そんな彼には一族と防衛隊の一部にしか知られていない秘密事項があった。

    曰く、呪である。保科に討伐され恨みを持った怪獣からの呪いとでもいうべきか。一族の跡取りになれるほどの才能がある者は例外なく蛇へとなってしまうというものである。なるのは疲れが溜まったり体力がとても落ちた時など様々あり、今回の場合、空腹に突然の雨で体を冷やしたせいで体力を低下させ、さらにその状態のままど怪獣討伐を1人したのが重なってなってしまったというわけである。

    「帰るあてとかあるのか?」
    「まぁ、立川基地にいけばどないでもなると思うねん」
    「立川基地………第3部隊の………」

    表情を曇らせたカフカに宗一郎は頭を傾げる。

    「どないしたん?」
    「んー、まぁちょっとな。解った。明日連れてってやるよ」
    「おおきに。あんじょうよろしゅうな」
    「おう。乗り掛かった船だからな。きちんと送り届けてやる」

    布団の中、カフカは笑顔で言うと、宗一郎の頭に額をグリグリと押し当てた。

    「ふふ………」
    「なんや?おもろい事でもあったんか?」
    「ううん。誰かとこうやって一緒に眠るのなんて子どもの時以来だなって思って。宗一郎には悪いんだけど。なんかすげぇ楽しいなぁって」
    「っ………阿呆ぉ。男と寝てんのに緊張感あらへんなんて。親御さんが知られたら怒られるで」
    「………ん………いいよ………会えるなら。怒ってくれてもいい。会いてぇな」

    うとうとしながらひどく懐かしむような口調でカフカは言う。その言葉に宗一郎はカフカの家族、親がすでにこの世にはいないと言う事を察した。

    「すまん………。お前………家族」
    「あやまんなよ。気にしてねぇって。私が小さい時に怪獣災害で2人ともな。今どき、そんな珍しくねぇだろ。ってかなんだよ〜。宗一郎ったら、私を慰めてくれんのか?めっちゃいい蛇だなぁ」

    カフカはからかうように宗一郎に音を立ててキスをするとおやすみと言って嬉しそうに顔をよせたまま瞼を閉じると、数分もしないうちにクウクウと快さそうに眠りだした。

    「ほんまありえへんやろ。無防備過ぎやボケ」

    宗一郎と言う得体のしれない相手といるのに、安心しきったように眠っているカフカの顔を眺めながら宗一郎は呟いた。出会ったばかりの普通の女性。それなのに宗一郎は自分がこの日比野カフカを気に入ってしまっているのに気がついていた。

    「一目ぼれとはちゃうな。せやけど俺ほんまチョロすぎやろ。まぁえぇか。結婚しろってせっつかれとったし丁度えぇか……まぁ、恨むんなら俺に出会わせてしもうた神さんを恨んむやなって事で………覚悟しぃや。カフカ」

    宗一郎はそう言って何も知らずに気持ち良さそうに眠っているカフカの桃色の唇に自身の口を当てた。



    そして一夜明けた朝、カフカは目の前の景色仰天した。

    「ふっ!───ングッ!」
    「朝っぱらから五月蝿いとご近所迷惑になるで」
    「ンンッ────!」

    反射的に叫ぼうとしたカフカの口を素早く片手で塞いだのは宗一郎であった。ただしその姿は白蛇ではなく、しっかりとした成人男性の保科宗一郎の姿であり、さらに生まれたままの素裸な姿であり、そのしなやかで鍛えられている裸体をいかんなくカフカの視界で披露していると言う状態で。そう。見ようによってはカフカと宗一郎が艷やかな一夜を共にしたと捉えられてもしかないと言う感じになってしまっていたのである。

    「落ち着け。きちんと事情説明するさかい。叫ぶのはやめや。えぇな?カフカ?」

    宗一郎の言葉に慌てふためいたカフカだったが埒が明かないと判断してゆっくりと頷いた。宗一郎はえぇ子やと言って塞いでいた手を外す。

    「ほな改めて自己紹介から。俺は保科宗一郎。職業は日本防衛隊っちゅうとこで隊員として日々日本の平和を守っとる。まぁスーパーヒーローってとこやな」
    「防衛隊………保科………宗一郎って………第6部隊の隊長の!?」

    目を丸くしたカフカに宗一郎はケラケラ笑いながらそうやと答える。

    「やっぱ関東でも俺は有名人やなぁ」
    「えぇっと………もう色々わかんねぇんだけどさ、宗一郎って人?なんだよな?」
    「ちゃうで」

    あっけらかんと答える宗一郎にカフカは啞然となる。すると宗一郎はちょっと考え込むような素振りを見せた。

    「どないするかなぁ」
    「ど、どうしたんだよ?」
    「俺が白蛇ってのは保科家と防衛隊でもトップの極一部のもんしか知らへんねん。所謂トップシークレットってやつやな」
    「そりゃそうだろ………で、それがどうしたんだよ?」
    「まぁまぁ、落ち着いて話を聞き。俺が白蛇って言うのはトップシークレットって言うたやろ?お前の言う通り当たり前やねん。怪獣討伐の組織に所属してる隊員、しかも隊長がバケモンやって世間に知られたらパニックになってまうやん」

    宗一郎の説明にカフカが真面目な顔で何度も頷く。素直な反応するカフカを愛らしいと思いつつ宗一郎は話を続ける。

    「それでな。もし他人にバレてしもうたら、最悪そいつは口封じに消されてしまうかもしれんねん」
    「………は?く、口封じって………」
    「んー、怪獣災害に巻き込まれて死亡とか。保科家や防衛隊なら簡単に偽造でるやろ?」
    「死亡って………わ、私殺されるのか!?」

    真っ青になったカフカに、宗一郎は意地の悪い笑みをこっそりと浮かべる。

    まぁ、ほんまに最悪の場合って話やけどなぁ〜。実際は他言せんように誓約書なりを書かせてしまいやろうけど。直ぐに別れるなんてせんように、ここは勘違いしてて貰っとった方がえぇやろ。

    そんな宗一郎の見解など知る由もないカフカはどうしようと不安な表情でうなだれている。宗一郎は手を伸ばしてカフカの頭を優しく撫でた。

    「安心しや。お前の事は俺がきっちり護ったる」
    「宗一郎………」
    「一宿一飯の恩や。せやけどお前には一旦俺と防衛隊や保科家本家に来て貰う必要がある。事情の説明やら今後について話し合いせんとあかんしな」
    「わ、解った!それでこれからどうするんだ?」
    「せやな………とりあえず………朝飯やな」
    「は?」

    窓から差し込む穏やかな朝日に照られた宗一郎の笑顔はとても爽やかで輝いていた。


    有り得ないだろ!どうしてこんな時に私は朝ごはんなんてのんびり作ってるんだ!

    こんがり狐色に焼けた食パンを皿にのせ、フライパンで美味そうな焼ける音を立てているハムエッグを見つめながらカフカは心底疲れ果ている深いため息を付いた。

    「出来たぞ。そっちは服着れた?私の服だけど、宗一郎になら着れるだろ?」
    「おう。Tシャツにジャージなんて久しぶり着たわ。やっぱ楽なのがえぇな」
    「うっわ………すげぇ似合わねぇ。宗一郎ってなんか部屋でも着物とかかっちりしたものを着てそうだもんな」
    「偏見や。休みの日は普通にダルダルのスエット着てベッドに横なってポテチボリボリ食うとるで」
    「嘘だろそれ」

    カフカは声を出して笑いながら、ハムエッグとトーストが乗っている皿をテーブルに置く。

    「大したもん作れないけど」
    「ん?美味そうやん。食おう食おう」

    トーストにハムエッグを挟んで大口を開けて一口食べて見せた宗一郎は美味いやんとニカッと笑うと言った。

    「口に合ったならよかったよ。宗一郎って箸とか使って丁寧な食べ方するもんかと思ってたんだけど」
    「───、くっそ面倒な会食やメディアが入っとるようなパーティーでは如月にどつかれるからしぶしぶするけどな。ほんま面倒やで。美味いもん食うならガブッと行くべきやで」

    しみじみと言う宗一郎にカフカは笑ってしまう。

    「宗一郎って面白いよな。見た目と中身のギャップっての。なんかテレビとかで見た時は綺麗だからなんか周りと違うのかなって思って近寄りがたいってイメージだったんだけど」
    「よぉ言われるで。家が特殊でさらにな。ダチなんておらんし」
    「そうなんだ?」
    「あぁ、それこそ地元では保科の長男ってだけで遠巻きにされとったからな。こないやって誰かの家にお泊りなんてした事ないで。一緒にお風呂もな」

    からかうように宗一郎が言った途端、カフカは昨夜を思い出してしまい飲んでいたコーヒーを吹いてしまう。

    「ッ!あ、あれはお前が蛇だと思っていたからで!人間の男だったなんて知らなかったんだ!知っていたらあんな真似しねぇし!」
    「ほぅ、俺はちゃんと男やって言うてたで。聞き流してたお前が悪い。なんなら俺、意識失っとったやん。むしろカフカが責任とらんとあかんやろ」
    「はぁ!?なんでだよ!」
    「考えて見てや。気づいたら裸で風呂に一緒に入れられとったって。どう考えもアウトやん。もう俺、お嫁にいけへんで。せやからカフカは責任とって俺を娶らんとあかんな」
    「っ!そ!………わ、悪かったよ………ごめん」

    宗一郎の言葉にカフカはぐうの音も出ないと言う顔になりつつ謝罪する。

    「でも責任って………。こんなおばさんの嫁………じゃねぇ。旦那になるなんていやだろ普通。い、慰謝料とかで………あんま金ないけど、分割にしてくれれば頑張って払うし」
    「慰謝料なんていらん。むしろ俺にはご褒美やったし。せやけど一緒に裸の付き合いして同衾までしたんや。もう責任とって結婚するしかないやろ」
    「そんなわけあるか!」
    「お、ナイスツッコミやで。やっぱり俺とお前はえぇ夫婦になれると思うで」
    「本当、やめろよ。宗一郎が言うと、冗談でも本気にしちゃう子とか絶対出てきちゃうと思うんだけど」
    「阿呆。こない甘ったるい事、本気で嫁にしたい相手にしかよう言わへんわ」

    呆れ顔で言うカフカに宗一郎は顔をしかめて舌を出す。宗一郎のその返答を聞いたカフカは内容を理解して思わず真っ赤になった。

    「はぁ!?ほ、本気でって………」
    「俺が言った通りや。あぁ、逃げるんは諦めた方がえぇで。俺は欲しいと思ったもんはどんな手使っても手に入れる主義やから。カフカと一夜過ごして好きになってん。そんで絶対にお嫁さんにしたいって思ってしまったんや。せやからこれからカフカには俺と結婚したいって思って貰えるまで口説いて口説き落とすつもりでいくからな。よろしゅうたのむな」

    まるで好物の獲物を狩る前に舌なめずりする獣ように、宗一郎は形のいい笑みを浮かべた唇を舐める。そして唐突に告白され驚きすぎて固まってしまっているカフカの顎の下を指でクイッと軽く持ち上げると、よろしゅうなと心底楽しそうに告げたのだった。


    日本防衛隊、立川基地。カフカは緊張しつつロビーに足を踏み入れた。

    「えっと………第6部隊の如月さんをお願いしますでいいんだよな」

    ボソッと小声でカフカが問いかけるとカフカの着ている大きめのマウンテンパーカーのフードに白蛇の姿で隠れている宗一郎がそうやと答える。

    「雑魚四郎でもえぇんやけど。多分あいつ面倒くさがって来ない可能性あるからな。我が弟ながら薄情になってしもうて。ほんま関東は情が無くなるから嫌やわ」
    「ちょっ、黙ってろ………バレたらやばいんだろ?」

    焦りつつ宗一郎に注意するカフカ。しかし彼女こそ言動があからさまに挙動不審過ぎて結構目立ってしまっていた。そしてそんなカフカに声をかけてきたのは立川基地に所属する第3部隊隊長である亜白ミナであった。

    「カフカちゃん!どうしたの?私に会いに来てくれたの?」

    ちなみにミナとカフカは今でも連絡を取り合っており仲が良い。ミナに至っては、友人と言う関係を通り越して、もうなんか愛してると言うのに近いくらいのカフカ大好き人間となっていた。

    「よぉ。久しぶりだな。ミナ。元気そうで嬉しいぞ!あ、実はちょっと会いたい人がいて来たんだ」

    嬉しいと目を輝かせるミナにカフカは苦笑しつつ答える。途端にミナの目がスンッとなって凍てつくようなものになった。

    「誰?もしかして男?一目ぼれ?彼氏?婚約者?」

    問いかけるその摂氏零度の瞳は告げていた。

    自分の大切な大好きなカフカに手を出した。かりに、万が一にでもそんな不埒な奴がいたのなら、自分の専用武器で文字通り粉々してやる。と。周囲がヒビって見入ってしまう程の殺気を放っていた。

    「えっと………その」

    ミナの気迫に思わず返事に詰まるカフカ。怪しいとミナがさらに言葉を放とうとした時だった。

    「亜白隊長。どないしたんですか?」
    「保科」
    「あ」
    「え?」

    聞き慣れた名字に反応してしまい、ついカフカは見つけたと言うような動作をしてしまう。その結果は押して知るべしである。

    「保科。貴様か?私のカフカに手を出した愚か者は」
    「は?ちょっ、亜白隊長?めっちゃキレてますやん。どないされたん………は!?何で銃口向けて来とるんですか?」
    「ミナ!ストップ!駄目だ!保科副隊長は関係ないから!あ、関係はないわけじゃないけど」
    「なら関係あるんだよね?………私のカフカちゃんを汚す奴はもれなく殺処分してやる」
    「ちょっ!カフカさん?って人!うちの隊長止めてぇな!まじであかん!目がいっとる!」
    「ミナ!ストップ!話を聞けぇえ!」

    完璧にカオスな状態になってしまったロビーにカフカの半泣きの声が響き渡った。


    やっと会議に来て一息付いたカフカは第3部隊副隊長である保科宗四郎に謝罪して頭を下げた。ちなみにミナにはカフカが頼んで席を外してもらっている。(きっとこの後も揉めるだろうとカフカが予測したため)

    「本当すみませんでした。うちの幼なじみが」
    「いやいや。日比野さんは亜白隊長のとても大切な幼なじみの方だと聞いてましたから。気にせんでえぇですよ」

    にこやかに宗四郎が答えた時であった。

    「なんや一丁前に出来る大人ぶった返事しよって。雑魚四郎の癖に」
    「?」
    「ちょっ!宗一郎!?」

    悪鬼のような表情になった宗四郎にカフカは慌てて宗一郎を嗜める。宗一郎はするりとカフカのフードから出てくるとカフカの肩に頭を乗せて顔を顰めている宗四郎を見据えた。

    「よぉ。雑魚四郎」
    「おまっ………何でその姿………ぁ。解った………もう嫌や。ほんまふざけんな。どうして僕に会いに来るたび問題起こすんやあんたは。ほんまくそ面倒な事この上ないやんか」

    あぁ。この人、きっと確実に身内って事で宗一郎に色々とやられているんだろうな………。

    即座に全てを悟った宗四郎。天を仰ぎ唸って頭を抱えてしまった彼にカフカはなんだかすごく同情してしまった。ちなみに渦中の宗一郎はカフカの首筋に顔を寄せて気持ちよさそうにしていた。

    「なん?カフカ香水つけとるか?えぇ匂いや。めっちゃ俺の好みやで」
    「へ?何もつけてねぇぞ」
    「なら元からのカフカの香りなんやな。ほんま最高やな」
    「ちょっ、くすぐってぇって!」

    そんな和やかな会話しつつ戯れるカフカと宗一郎。すると宗四郎が近寄って来て勢いよく宗一郎の首根っこを掴んで引き剥がした。

    「一般人にセクハラかますんやない!ドアホ」
    「はぁ?俺とカフカのラブラブに嫉妬か?雑魚四郎はうぶやからなぁ。女と話すのも緊張してまうからこんなスキンシップなんてしたくても出来へんもんなぁ」
    「あぁ。そない鍋の具材になりたいやな?」
    「雑魚四郎ごときに俺はやれへんやろが。離せや」
    「もう!ストップ!」

    慌ててカフカは声を上げて口論する2人を止めた。

    「宗一郎!からかうにしても言い過ぎだぞ!弟君を雑魚なんて言っちゃいけねぇだろ!」
    「えぇ、可愛がってるだけやん」
    「それでも相手が嫌がる事を言うのは駄目だ」

    ぴしゃりと言ったカフカに宗四郎が目を輝かせる。

    「日比野さん………おおきに」
    「………おい。カフカに懸想すんなよ。俺の女やぞ」

    引い呻くような宗一郎の声音に室内の空気が一瞬で張り詰めたものになる。すると見る間に白蛇の姿から人間の姿に宗一郎が変わっていく。そして驚いている2人を他所にカフカに歩み寄ると抱きしめて宗四郎を睨みつけて宗一郎は告げた。

    「これは駄目や。『保科』宗四郎」

    宗四郎は息を呑んだ。兄である宗一郎は宗四郎の事を下の名前でほとんどの場合呼ぶ。しかしある場合のみにおいてわざわざ名字を付けて呼ぶのである。その場合とは宗一郎が『保科家当主』として厳命を下す内容である時であった。その場合、宗四郎は当主である者に下る者として、その命には絶対に逆らってならないと教えられている。

    今、わざわざ言うんか………。まさか兄貴、日比野さんを本気で自分のにしようと思っとるんか。最悪や………。うちの亜白隊長が聞いたらもれなく第3と第6は………いや、最悪亜白隊長の専用武器が保科本家を砲撃するかもしれん。なんにせよ面倒な事になったで。

    そんな宗四郎であるが、現在進行系でもっと大変な事になっているのに気付いていなかった。

    「カ………カフカちゃん………」

    心配して様子を見に来たミナ。彼女は真っ青な顔をしてカフカと宗一郎を凝視している。

    「な、何で裸の保科隊長がカフカちゃんを抱きしめてるの?」
    「「「あ」」」

    無論、会議室は修羅場と化した。


    まるで猫が威嚇してるみたいだなとカフカは苦笑を漏らす。

    「ミナ。な?もう大丈夫から離れような?」
    「………駄目。危ない」

    後ろからカフカの腰に抱きついたミナが厳しい眼差しを向けるのは危うく討伐されかけた宗一郎である。ちなみに今は連絡を受けで慌ててやって来た如月が持ってきた隊服を身につけていた。

    「はぁ、ほんま死んだかと思ったで」
    「笑いながら言うなよな。宗一郎」
    「なんやカフカ、そない冷たくせんといて。うぉっ。めっちゃ亜白威嚇してくるやん」

    ケラケラ楽しそうに笑うと宗一郎はカフカに歩み寄る。

    「ほんま助かったでカフカ。お前に拾って貰えんやったら路頭に迷って野垂れ死んどったで。おおにき」
    「いいよ。中々楽しかったし」
    「せやな。一緒にお風呂入って仲良う1つの布団でねんねまでしたもんな」
    「その話は忘れろ!」

    顔を真っ赤にして言うカフカ。宗一郎はそんなカフカの顔を愛おしげに見つめると端末を取り出す。

    「連絡先、交換してや。今度お礼させて」
    「お礼なんていいって!別に俺が好きでした事なんだからさ」

    慌てて固辞するカフカに宗一郎は苦笑する。

    「やっぱりカフカにはストレート言わんとあかんな。お礼言うんは建前や。ほんまはお前と会いたいだけやねん。言うたやろ?カフカが俺と結婚したいて思うまで口説き落とすって」

    本気やで。宗一郎は自然な動きでカフカの手を取ると笑顔を向けた。

    「は!?そ、宗一郎ぉ!?」
    「………なぁ、カフカ。俺にチャンスくれへん?」
    「チャンスって………こんなおばさんに何いってんだよ。宗一郎みたいなイケメンなら引く手数多だろ」
    「俺はカフカと結婚したいって思ったんや。お前以外なんて関係ないやろ。な?とりあえずお友達からって事でえぇやろ?」

    ちなみにこの会話。ミナ、宗四郎、如月の前で堂々と行われている。ミナは柳眉を上げ宗一郎を完全にカフカを誑かす敵とみなし、宗四郎は実兄がめちゃくちゃグイグイ女に迫っていると言う、身内だからこそ見たくなくない光景を見せられて苦虫を噛み潰した顔になっている。如月に至ってはもう傍観者になっていた。

    「カフカちゃん!離れて!」
    「───最悪や。こない頭イカれとるお花畑な奴が兄貴やなんて………ほんま、いっそ逮捕されてしまうとえぇわ」
    「うわっ、えらいウザ………情熱やなぁ」

    無論宗一郎はそんなギャラリーなどガン無視して耳まで真っ赤になっているカフカの手を掴んで頼み続ける。

    「初めてなんや。こない誰かを愛したのは。せやから答えてくれへんか?それとも誰か心に決めとる相手おるんか?」
    「そ、そんな相手いねぇけど」
    「なら俺でえぇやろ?大切にしたる。カフカが嫌がるような事絶対せんから」

    熱心に頼んでくる宗一郎。カフカは困り果ててしまった。

    嫌じゃねぇけど………。ってか、宗一郎は本当に格好いいし。一緒にいて楽しかったし。けど私なんかが宗一郎の相手になんて似合わねぇって。

    カフカは女としての自分に全くと言っていい程自信がなかった。幼い頃から見た目も中身も男勝りで通っており、周りの異性からもカフカは友達って感じだよなと言われてしまうしまつだったのである。仕事の内容もあって着飾ったり身綺麗にする事あまり頓着しなくなってしまい今まで来ていた。結果、カフカは恋愛と言うものに完全に奥手になっていたのである。

    それなのに………急にこんな来られるなんて………ふざけてるのか。けど宗一郎ってそんなたちの悪いことしなさそうだし。

    悶々となるカフカ。すると宗一郎がそんなカフカの両手を取ると真剣な表情で告げた。

    「俺は本気や。せやからカフカが嫌なら大人しゅう引く。けど少しでも付き合ってえぇって思ってくれとるなら頼む」

    宗一郎の瞳に見つめられ、カフカは頬を赤くし俯いて考え込んでいたが視線を合わせゆっくり頷いた。

    「その………宗一郎と話してて楽しかったから。と、友達からなら………」
    「おん!勿論えぇで!おおきにな!カフカ!」

    傍から見てもはっきりと解るくらい宗一郎ははしゃいでカフカの腰に腕を回すとミナから奪い去って抱き上げて顔を寄せて来た。普段の宗一郎なら絶対に見せないような無邪気な姿に周りは啞然となり、カフカは耳や首まで真っ赤にして宗一郎の肩に手をおいて喚いた。

    「うわっ!急に抱きつくなって!」
    「えぇやん!嬉しくて堪らへんねん!」

    そう言って本当に無邪気な笑顔を見せる宗一郎に、カフカは苦笑してしまう。

    「もう、そんなに嬉しいのかよ」
    「おん。最高な気分や。今ならフォルティチュード100の怪獣もあっちゅうまに討伐出来るで!」
    「………なんだよそれ………」
    「お、なんやかあいい顔しとるやん。さては俺に惚れたか?」
    「ば、ばかぁっ!調子にのんな!」

    カフカが宗一郎の頭を叩くが、宗一郎は痛がったり嫌がる様子も無く、むしろ嬉しそうに笑顔でカフカを見つめ続けている。

    「うわ………兄貴ゾッコンやわ」
    「こないだらしなくデレデレしとる隊長初めて見ましたわ」

    完全に傍観者となっている宗四郎と如月。ミナはカフカが笑顔で受け入れているのを見て我慢する事にしたらしい。しかしその表情はとても悔しそうにしている。

    「保科隊長、カフカちゃんを悲しませるような真似をした場合、問答無用で私の射撃の的になって頂きますから。ご覚悟を」
    「み、ミナぁあ」
    「おん、肝に銘じとくで」

    ケラケラと笑いながら宗一郎は答えると、抱き上げたままのカフカを自分と向かい合わせにして下から覗き込むようにして微笑みかけると告げる。

    「なぁ、カフカ。早うお前が俺を愛してくれるよう頑張って口説くさかい、覚悟しとくんやで」
    「ふふ、解ったよ。頑張ってな。宗一郎」

    宗一郎の言葉にカフカが答え、2人は顔を見合わせると笑い合った。



    それから2人の交際が始まった。兵庫と東京での遠距離であり、防衛隊の隊長である宗一郎はもとより、カフカも職場では班長を任される程の実力者である。よって2人で会うと言うのはあれから無く、もっぱらトークや音声通話やビデオ通話のコミュニケーションアプリでのやりとりになっていた。

    「なぁ………これって進展しとんるんやろか」
    「日比野さんとですか?連絡は取り合ってるんですよね?」
    「せや。けどあれから全く会えとらん。怪獣の出現が増えて俺が空いてる日にはカフカが、カフカがえぇ日は俺があかんとか………ほんま神さんも意地悪い事しよる………」
    「………むしろ神と言うよりは亜白隊長の呪いな気がするんやけどな」

    ボソッと如月は宗一郎に聞こえないように呟く。宗一郎は端末画面を見つめながら不貞腐れた顔でうなだれる。

    「テレビ電話でカフカの可愛えぇ姿は見る度に堪らへんくなるんや。もういっそ兵庫に転職して………いや、俺の嫁になれば………」
    「………隊長。相手はまだ恋人にもなってへん人ですよ」
    「解っとるわ!はぁ………カフカが足りへん」

    如月はだらけきった宗一郎を眺めながら思う。

    恋ってほんま人を変えるんやなぁ。以前は他人なんて全く興味のないお人やったんに。少しは近寄りがたくなくなって、えらい人間らしゅうならはったって事で、日比野さんには感謝すべきなんやろか。

    「───、1ヶ月くらい休みとってカフカのとこに泊まりにいこかな。………あかん。そない泊まったら確実に帰りたくなくなってしまうわ。そうや!1ヶ月でカフカと結婚する流れにしてしまえば………」
    「隊長、くれぐれも犯罪や日比野さんが嫌がったり悲しんだりされるような真似せんといて下さいよ」

    婚前交渉、授かり婚等と言い出した辺りで如月は慌てて釘を差した。

    「解っとるわ!俺は本気なんや………はぁ、カフカ会いたい」

    そんな事をブツブツと呟き書類に全く目を通さない上司に如月は半眼になると告げた。

    「そないままやと仕事終わらんで日比野さんとテレビ電話する時間まで無くなりますよ」

    瞬間、背筋を伸ばしきびきびと仕事に励み出した宗一郎。如月はいい手を見つけたとばかりにほくそ笑んだ。



    その頃カフカは諸々あって怪獣8号となってしまった事、そして防衛隊入隊をまた目指し始めた事を宗一郎に告げるべきかと悩んでいた。

    「どう考えても怪獣の事は話せねぇよな………。防衛隊の事はどうせ立川で受けるんだから保科副隊長から聞くだろうし。それなら言っても………いや。別に宗一郎には関係ないよな」

    宗一郎が聞いていたら「関係ないわけあらへんやろ!」と怒鳴るところである。しかしカフカの中では宗一郎は友人枠に留まっている。まぁ気になる異性ではあるが。

    「うーん。まぁ、一応さらっと伝えておくか」

    とそんな感じでカフカは伝えた。

    「は?防衛隊の入隊試験受ける?」
    「おう。年齢引き上げになっただろ?だからラストチャンスで受けてみようって思ったんだ」
    「さよか………」

    画面の向こうで考え込み始めた宗一郎にカフカは首を傾げる。するとにこやかだった宗一郎の表情が真剣なものになった。

    「あんな、防衛隊隊長としては、危険と隣り合わせなこの役目を志望してくれたんは嬉しいと思っとる。カフカの事や。きっとしっかり考えて決めたんやろしな。せやけど保科宗一郎一個人としては危なくていつ死ぬかもよう解らん防衛隊にはなって欲しくないと思ってしまうんや」
    「宗一郎………」
    「なぁ、カフカ。頼む。無茶だけはせんでくれ。それだけは約束してや」
    「………うん。約束する」

    力強く頷くカフカを宗一郎は心底愛おしげに見つめる。

    あぁ、ほんまは嫌や。愛しい相手が戦場になんて誰だって嫌に決まっとるやろ。安全な所で護られてて欲しい。綺麗なもんだけに囲まれてあの暖かい太陽のような笑顔で笑っててくれればえぇ。
    せやけど、俺の愛しとる日比野カフカはきっと護られるだけで満足する女ちゃう。だから、これは譲歩や。カフカ。

    「応援はせん。入隊出来るようにとりなすもや」
    「いいよ。むしろそんな事されたくねぇよ!きちんと実力で受かるからさ!」

    笑顔で言うカフカに眩しさを感じ、宗一郎は抱きしめたい衝動に襲われた。

    くそっ。ほんま傍にはよ連れて来たいわ。せや。受かったら第6部隊に入れてしまえばえぇんでは!?ナイスアイデアや!

    そんな事を考え出した宗一郎にカフカは告げる。

    「私さ、ちっちゃい時にミナと約束したんだ。怖いって言ったあいつに、そんときゃいつだって私が隣にいるって。なのに約束守れなかった」

    今でもカフカとミナは仲良くしている。それでもカフカの中には言い表せない苦いモノがずっと心の奥底に蔓延っていた。

    「だからさ。絶対に防衛隊に入ってミナの隣に行くんだ!」
    「………さよか」

    なんとも言えない気持ちになる宗一郎。

    正直面白くない。いや。カフカの気持ちは解るしそんな幼い頃の約束を果たそうとしている彼女は好きだ。いや愛していると断言出来る。だが、しかし、恋する宗一郎の心は色々と面倒なのである。

    俺の隣にって言うてくれてもえぇやん。

    まぁ、そう言う事である。

    「あとさ。その………そ、宗一郎の隣りでも戦えるようになりたいって思っててさ」
    「!」

    思わず画面のカフカを凝視した宗一郎。カフカは照れて俯いているので気づかないで頬を指でかきながら告げる。

    「だから、待ってて。宗一郎。お前の隣りに行くから」
    「カフカ………おん。絶対や。約束や」

    2人は微笑み合って画面に小指を重ね合わせた。


    面倒くさ。

    如月は目の前で端末の画面を凝視している宗一郎を眺めながら思った。今朝からあからさまに様子がおかしい。どこに向かってか分からないが両手を合わせて祈ったり、拝んだりをしては部下達から不審者扱いをされている。そろそろ本格的に仕事をしなくなってやばくなってきたので、如月はしぶしぶ声をかけることにした。

    「隊長。えぇ加減にしてください。隊長がソワソワした所で日比野さんの合否にはなんら影響ないんですから」
    「阿呆ぉ!万物には神さんが宿ってるんや!祈ればちょっとでもカフカの助けになるかもしれへんやろ」

    そう宣った隊長に如月は思った。

    ほんまこの人変わったで。阿呆に。

    余談であるが、宗一郎はこの日のために事前に兵庫にある伊弉諾神宮、生田神社に参っていた。ちなみにこの二つ、それぞれ恋愛運、縁結びにご利益があると言われている。

    そんな宗一郎のせつなる願いは届く。

    『候補生だけど入隊決定!』

    そんな文面と共に通知書を持ってピースサインをして満面の笑みのカフカの写メが送信されてきた。

    「日比野さん、受かりましたか?」
    「おん。ほんまひやひやさせよるで。俺にこんな思いさせるんはカフカだけやな」

    宗一郎は慈愛に満ちた表情で画面のカフカを見つめる。

    『正隊員になれるよう頑張るからな!待ってろよ!』

    「早う来てや。待つのは嫌いなんや。待てへんって迎えに攫いに行ってまう前に、早う俺のとこに来い」

    呟く宗一郎の瞳は渇望に塗れている。愛情。愛執。甘くもどこか毒のようなもの。そんな宗一郎のオーラに如月は思わず唾を飲み込む。

    「ほんま、変わられましたね」
    「せやろ?カフカが変えてくれたんや。こない相手の出方で一喜一憂なんてした事あらへんねん。ほんま楽しゅうてしゃーないんや。あぁ………早うカフカと会いたいわ」

    うっとり画面のカフカに唇を寄せる宗一郎。

    うわぁ………隊長、会ったらそのまま自分のもんにして絶対離さへんって顔しとるやん。

    如月はカフカに同情しつつ、今後色々と面倒な事が起こる予感に深いため息を付いた。


    『正隊員昇格した!』

    そのメールを最後に、宗一郎はカフカと連絡が取れなくなった。そして宗一郎の元に衝撃過ぎる緊急連絡が入る。

    防衛隊第3部隊隊員、日比野カフカは怪獣8号であった。

    その身柄を拘束。本部有明りんかい基地へ移送。四ノ宮長官より尋問後処罰を決定とする。

    「なんや………何言っとる………」

    口内が酷く乾くのを感じつつ、宗一郎は通達の文面を睨みつける。どのような状況下でも冷静に物事を考え行動出来る宗一郎であったが今彼は何も考えきれずにそこに立ち尽くしていた。

    「いつ………から………ちゃう。そないなのどうでもえぇ」

    宗一郎の脳裏に笑顔のカフカの顔が浮かび上がる。

    『宗一郎』

    『テレビ観たぞ。宗一郎格好いいな』

    『少し疲れてるか?無理するなよ』

    『なんか宗一郎と話してると元気になってくる』

    『待ってて。宗一郎。お前の隣りに行くから』

    様座なカフカの言葉が耳鳴りのように響いていく。

    あぁ───

    宗一郎は画面に拳を打ちつける。

    あぁ………カフカに愛しい彼女に会いたい。

    「保科隊長、何しとるんですか?はよ、日比野さんのとこ行ってやらんとあかんでしょう」
    「如月………」
    「今の隊長は彼女がおらんとよう仕事もこなせんポンコツになってまうんですから。はよ会いに行きなはれ」

    その言葉に宗一郎はすまんと短く告げると駆け出した。



    拘束されながらカフカは思う。

    宗一郎はどう思う?絶対に怒るよな。もうきっと仲良くしてくれないだろうな。もしかしたら怪獣なんて殺せって言うかも………。仕方ない………けど………何だろう………今凄く宗一郎に会いたい。

    「はは………今………かよ」

    カフカの中に生まれた感情は確かな恋慕。気づかないうちにカフカは宗一郎を愛していたのだ。

    あぁ、馬鹿だなぁ………。もう二度と会えないかもしれない。想いを伝えるなんて出来ない相手を愛しちゃうなんて。

    カフカは口角を上げる。

    「本当………いまさら。笑っちゃうよな」

    明るい声音と共にカフカの頬を幾重も熱い涙が伝い落ちていた。


    生を受けてから宗一郎は感情を顕にした事はない。顕にする程心が揺さぶれる事がなかったからだ。冷静沈着。人を食ったような性格。決して揺るぎない人格。それが次期保科当主たる男、防衛隊西方の最強と謳われる男、保科宗一郎であった。

    『自分は怪獣8号じゃない』

    『日比野カフカだ』

    そこにいた誰もが捉えきれない。日本最強の対怪獣戦力と言われている鳴海弦ですら。まさに刹那の刃。胸を貫き怪獣化が解けていき地面に倒れ込もうとしたカフカを抱きとめ、片手で抜き去った物干し竿と呼ばれる見目をした太刀でカフカに向けられようとしていた鳴海の武器をあっさり弾く。そして禍々しい殺気を周囲に向けつつ宗一郎は口を開いた。

    「こいつに手ぇ出したら殺すぞ。ぼん」
    「?突然出てくんな。クソ糸目」

    宗一郎は鳴海の言葉を無視し、素早く上着を脱ぐと上半身が裸になっているカフカを包み込み抱き上げる。そして零度の冷たく鋭い眼差しのまま防衛隊長官、四ノ宮功を見据えた。

    「生かすんですやろ?」
    「そうだ」
    「ならえぇです。もし殺処分なんて抜かしよったら長官の貴方でもやっとりましたわ」
    「………日比野カフカは戦力とする。医療班、すくに8号を収容しろ。核が損傷している可能性がある」

    四ノ宮の通信でやっと動き始める周囲。タンカーで早急に連れて行かれるカフカに付き添って行こう宗一郎に四ノ宮が声をかける。

    「もう8号は日比野カフカとして人の世を歩んではいけなくなる。下手な情をかけるのはやめろ」
    「───おもろい事言わはる。俺は生まれた時からもう人ではない化け物だったんや。いまさら愛しい女が怪獣やったなんてどうでもえぇわ」

    それだけ言うと宗一郎はさっさとカフカの元に向かって行った。


    微睡む意識でカフカは思い出す。

    胸を自ら貫き倒れ込んでいく。霞んでいく視界は捉えた。美しい艷やかな白銀の髪を。カフカが恋しくてたまらない。そんな愛する男の姿を───。

    「話終わったならえぇですか?」

    四ノ宮との会話に気を取られていたカフカは宗一郎が部屋にいたのに気づかなかった。驚きその姿を視界に捉えたカフカは唇を噛む。

    会いたかった。けれどもこんな姿では会いたくなかった。

    四ノ宮が部屋を出ていきカフカと宗一郎だけになる。

    何か言わなきゃ。そうだ!あ、謝らないと………。

    「そ、宗一郎………ぁ………違っ………保科隊長」

    慌ててカフカは言い直す。もう親しげに宗一郎なんて呼んではいけないと気づいたからだ。今のカフカと宗一郎は決して前のような友人でない。解っているのにその認識が酷くカフカの心に痛みを生み出した。顔を歪めて何とか平然を保とうとしてカフカが再度口を開いた時だった。

    「宗一郎やろが。ど阿呆」
    「っ………!」

    きつく宗一郎に抱きしめられてカフカは息を呑む。

    「お前はいつもみたいに宗一郎言うてればえぇ。言うてや」
    「でも………私は宗一郎に怪獣だって隠してた………」
    「それに関しては話して欲しかったと思っとる。けど俺を思って隠しとったんやろ?」
    「な………んで」

    カフカは驚いた。宗一郎に自分が怪獣だと隠していた理由。それは何も怪獣だと正体がバレたら殺処分されるかもしれないと言うことだけではない。もしカフカが宗一郎に話して宗一郎が黙っていたとバレた場合、宗一郎も危うい立場になってしまう。それをカフカは危惧したのだ。宗一郎を自分の事情に巻き込みたくない。そう思ったから黙っていたわけである。

    「お前分かり易いんや。ほんまいじらし過ぎて………堪らへんねん。俺は怒ってるんや。約束破って無茶しおって心配かけたお前にな」
    「宗一郎………ごめん」
    「ん………素直に謝れたから許したる。二度はないで」

    軽口を叩くように告げた宗一郎。カフカは両手を震わせ彷徨わせながら宗一郎の服を掴むと胸元に顔を埋める。

    「宗一郎………愛してる」
    「カフカ………」
    「ごめん。こんな時に。けど伝えられる時に伝えたくて」

    カフカは子どものように泣きじゃくりながら顔をくしゃくしゃにして声を震わせて宗一郎の瞳を見つめて告げる。

    「好きだ。宗一郎。今更だと本気でお前が好きなんだ」

    思わず宗一郎は言葉を発したカフカの唇に自身のを重ねていた。かさついた感触。それを労るように角度を変えて幾度も口づけしていく。深く強く離さない。カフカは溺れて助けを求めるように宗一郎の服をきつく掴む。時間にすれば数分。それでも濃厚な口づけに完全に蕩けきり惚けたようになったカフカを見つめながら宗一郎は告げる。

    「俺もや。カフカが好きや。愛しとる。愛おしゅうて堪らへん」
    「っ………嬉しい」

    カフカの頬を涙が伝う。宗一郎はそれを指で拭ってやると目尻に唇を寄せる。

    「なぁ、カフカ。結婚しよう」
    「………へ?け、結婚!?」

    唐突なプロポーズに驚きを隠せないカフカに宗一郎はにこやかにそうやと肯定する。

    「もうカフカと離れて暮らすなんて無理や。ずっと一緒にいたいんや。えぇやろ?」
    「で、でも色々なんか問題とかあるんじゃ」
    「俺がどないでもしたる。する。なぁ?頼む。後生やから」
    「わ、私怪獣だし」

    すると宗一郎は呆れた顔になり、瞬きするとその姿を白蛇の姿に変えた。

    「どや。俺やてこないやで。カフカが怪獣なんて事、俺にとったら欠片も問題ないわ。カフカなら何でもどうでもえぇ。大事にする。愛しいんや。俺の嫁さんになってぇな?」
    「うぅ………」

    甘ったる声音で懇願しながら宗一郎はカフカの頬やこめかみ首筋などに求愛するようにキスを落としていく。

    な!なんかすげぇ恥ずかしいんだけど!うぅ………けど嫌じゃねぇ。むしろ………嬉しくてしょうがない………。って事は………。

    カフカは林檎のように顔を真っ赤にしながら宗一郎の名を呼ぶ。

    「ならまずはお、お付き合いから………」
    「嫌や。もう十分したやろ。結婚や」

    即答。

    「けど今までは恋人じゃなかったし」
    「恋人みたいなもんやったやろ。結婚して恋人もすればえぇ」
    「えぇ………無茶苦茶だろ」
    「………すまん。困るんは解っとるんや。せやけどもう十分俺は待ったんや。俺の一生涯の相手はカフカしかおらんって確信しとる。誰より何よりどんな事よりも大切に慈しむから。俺と一緒になってくれや」

    そこまで言われたらカフカは頷くしかなかった。

    「………こ、こんな奴でいいなら」
    「こんな奴がえぇんや」

    そう言って宗一郎は照れて真っ赤なままのカフカの顔を覗き込むようにして顔を近づけていく。

    「よろしゅう頼むわ。俺の可愛ぇカフカ」
    「………っ、ば、ばーか」
    「そない素直になれへん口は塞いでしまわんとな」

    からかうように言うと宗一郎は姿を人間のものにするとカフカに口づけしながらベッドに体を押し倒すのだった。


    保科家が所有する土地の一角、日本家屋の落ち着いた佇まいの一軒家が宗一郎の自宅である。

    「帰ったで〜」

    玄関で宗一郎が声をかけると奥からカフカがやって来る。その姿は着物と割烹着と純和風。そんなカフカを見て宗一郎が目を瞬かせる。

    「えらい綺麗な格好しとるやんけ。似合っとるで。流石は俺のカフカや」
    「ありがと。けど宗一郎。もう着物は買わなくていいからな」
    「何でや?カフカは何でも似合うやんか。俺に着物贈られるの嫌なんか?迷惑やったか?」
    「違うって。勿体ないだろ。もう箪笥いっぱいなんだから。たくさんあり過ぎて全部着れないだろ」
    「のんびり好きな時に着ればえぇって。カフカに似合うもんばっかり見つけてしまうんや。夫としてはせっかくなら着てほしいって思ってしまうんや。な?許してぇな?カフカ」
    「買い過ぎはよくねぇよ。って!うわっ!」
    「はーい。この話はしまいや。今日もぎょうさん仕事して疲れたんや。癒やしてな?」

    宗一郎は困った表情のカフカを抱き上げるとそのまま歩き出す。そして縁側に着くとカフカを下ろして板張りに座ると隣りを叩く。カフカは慣れた様子で苦笑して宗一郎の隣りに座る。すると待ってましたとばかりに宗一郎はカフカの太腿に頭を乗せてだらしなく横になった。

    「ほんま仕事終わりのカフカの膝枕は最高や」
    「変態なおっさんみたいな事言うなよ」
    「カフカ限定や。嫁好き過ぎる旦那の楽しみなんやからほっといてや」

    そう言って宗一郎は両手で見下ろしてくるカフカの頬を包み込む。自然と2人は唇を合わせて笑い合う。

    「なぁ、俺の事好き?」
    「好きだよ」
    「もっと好きになってや。何をしたらえぇ?」
    「んー、もう十分色々して貰ってるからなぁ」

    カフカは苦笑する。

    怪獣としてカフカを投獄、拘束すべきだと言う意見を宗一郎はあらゆる力を使って黙らせた。結婚に関しても反対する身内などはカフカに内緒にしているが諸々手を回し、それはもう宗一郎にしてはかなり厳重に気を配り神経を使って、なんとか愛しいカフカとのゴールインを果たしたのだ。

    『蛇って執念深いって言うけど、兄貴のは格別、いや、一種の狂気の沙汰や。ほんまやばい思ったら遠慮なく助けを求めるんやで』

    神前式の際に本気で部下であるカフカの事を心配した宗一郎の実弟、保科宗四郎の言葉が全てである。

    「そうだなぁ………しわくちゃのおばあちゃんとおじいちゃんになってもこうして一緒に幸せにいられるといいな」

    へらっと笑うカフカはまるで穏やかで陽気な心地のいい太陽の光のようで、宗一郎は心が安心感に包まれていくのを感じとった。

    「そないな事ならお願いされんでも叶えたるで。俺はカフカを一生手放すつもりはないんやからな。覚悟しぃや」

    意地悪い笑みを浮かべる宗一郎に、カフカは嬉しそうに頷く。そして2人はゆっくりと顔を近づけていった。













































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