分からない 呼び止めると菅原さんは振り向く。体育館を出て歩き始めた後に。それで俺に笑ってみせる。
「日向? なに、どしたの?」
「菅原さんって、」
時々寂しそうにしてますよねなんとなく。
そう言うと菅原さんは笑った。そんなことないけど、って言った。それでひと回り小さい俺の肩に優しく触れる。手があったかかったのを覚えてる。
菅原さんがトスを上げてた頃、俺はそれをうまく打てなかった。本当に下手だったと思う。トス上げよっか? っていう菅原さんの誘いを俺は、何度か無邪気に断ってた。そういうのをなぜか思い出す。今さら会って話したところで、あの頃の埋め合わせができるわけじゃないけど。
「菅原さん、お久しぶりです!」
玄関先で俺がそう言うと、菅原さんは笑う。
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