逃げ場無し…またやってしまった。
寝起きとはいえこのヘマをやらかすのはこれで二度目だ。ギラギラと目障りな照明が目に刺さり、女客の高い笑い声が鼓膜を揺さぶり思わず眉間の皺を深めた。
他の店ならまだしも、前回といい何故よりにもよってここに辿り着くのか、自分自身へのヘイトが募る。
レビューの店名は嫌というほど確認しろとあれほど自分自身に言い聞かせたはずだったが、効果はなかったらしい。
目の前にいる前髪の長ったらしい男は切れ長の目を一層細めて、呆れ果てたように薄い唇を開いた。
「見ての通り営業中だが。何か用でも」
「…あー……」
こいつの邪険な態度には毎回カチンとくる。また店を勘違いしたとは言い難い。こいつに1ミリでも間抜けだと思われるのは癪だ。
2288