甘えんぼモンスターの成獣 なぜか、梅宮を見上げている。より正確に言うならば、すっかり瞳孔の開いた梅宮の向こうに広がる空を見上げている。雲が少なく、快晴と言っていい空模様だ。天気が良いとなんとなく元気な気がする。
「なあ」
「黙ってろよ、今状況を良い感じに噛み砕いてるところなんだからよ」
「あ、そう」
梅宮はぱちりと瞬きをひとつすると、また口を閉ざした。
どうしてこんなことになっているのだったか、柊にはいまいち理解できていなかった。杉下の去った屋上で二人、畑と畑の間の小さなスペースで、柊は梅宮によって押し倒されている。つい数分前まで野菜の苗の育ちが良くてご機嫌の梅宮と、それを嬉しそうに見る杉下を眺めてベンチに座っていた。梅宮はともかく、杉下は自分の預かる衆の人間であり、以前から交流もあって柊にとっても大事な可愛い後輩なのだ。それが土汚れを頬につけてニコニコとしているもんだから、軽く拭ってやって、ついでに頭を撫でた。杉下の髪は柔らかく、指通りが良かった。
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