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    高間晴

    @hal483

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    高間晴

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    ロナドラ800字。

    ##94SS

    ■お手入れ


     ソファに座っていたロナルドは自分の唇の皮を剥いた。やっちゃいけないとは分かっているが、皮がめくれかかっているとついやってしまうのが人間の心理。
    「ッ、痛って」
     そう言って自分の唇をぺろりと舐めると鉄錆の味がした。同時にその声で気づいたのか、傍にいたドラルクが携帯ゲーム機から顔を上げる。
    「何してんの、きみ」
    「唇の皮むいてた」
     それを聞いたドラルクは「ハァ!?」と目を瞠って、信じられないものを見る目になる。続いて「ちょっとそのまま動くなよ」と言いおいてゲーム機を置くと自分の棺桶の方へ行く。蓋を開けてその中から何やら取り出した。何かの薬だろうか。小さなチューブを手にして戻ってくる。
    「なにそれ」
    「リップバーム。リップクリームより保湿力があるやつ」
     ロナルドの隣に座るとチューブの蓋を開けて中身を人指し指に適量取った。そして反対側の手でロナルドの顎を捕まえてそれを唇に塗りつける。ドラルクの冷たい指先がロナルドの唇を数回撫ぜていって離れた。丹念に唇にそれを塗られたロナルドは半ば呆然とドラルクの顔を見つめる。
    「まったく、きみは外見に無頓着だから困る」
     せっかく美しいんだからもっと大事にしたまえ。そんなことをブツブツ言いながらリップバームの蓋を締めるドラルクに、ロナルドは言い返す言葉もなく上下の唇をこすり合わせた。さっきまでカサついていた唇がぷるぷるに潤っていて自分で驚く。
    「うわ、なにこれすげぇ。ぷるっぷるじゃん俺の唇」
    「すごいだろう。まあその分ちょっとお高いんだがね」
     そう言ってドラルクが自慢気に笑うものだから、ロナルドはその顎を捕まえてキスをした。
    「……ンアー! この若造! せっかく塗ったのに!」
     唇を離した瞬間にドラルクが抗議の声を上げる。ロナルドはにやりと笑った。
    「お前が自分に塗っとけよ。俺はそれ分けてもらうから」
    「きみ若干オッサン臭いぞ」
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