Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    高間晴

    @hal483

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 385

    高間晴

    ☆quiet follow

    書き初め。さんこいちのお正月。

    ##文スト
    #さんこいち

    あけましておめでとう 元日。夜更けのバー・ルパンにて。
     太宰は一人、カウンターでビールを飲んでいる。店内には相変わらずほの明るい照明に、居心地の良い音楽が流れていた。今日は正月にも関わらず開いていたので、期待を込めて立ち寄ったのだ。
     太宰がビールをちびちびやっていると、カランカランとドアベルが鳴った。振り返った太宰は顔を輝かせる。
    「やあ織田作! あけましておめでとう!」
    「嗚呼。あけましておめでとう、太宰」
     手招きする太宰に誘われるまま、織田作は店主に「何時もの」と告げ、太宰の隣に腰を下ろした。
    「此処に居たら会えると思ってた」
     太宰が嬉しそうに笑うと、織田作も相好を崩す。
    「俺もだ。きっとそのうち安吾も来るだろうな」
    「そうだね」
     織田作の前にウイスキーが出されると、またドアベルが鳴った。安吾だ。彼は振り返った二人の顔を見て眼鏡を押さえた。口元は微笑んでいる。
    「不思議ですね。此処に来る時はいつもお二人が揃っている」
    「お前だって、俺たちが居ると思って来たんだろ」
    「……まあ、そんなところです」
     安吾はカウンターに腰を下ろすと店主に言う。
    「ゴールデンフィズを」
     安吾のお気に入りの酒だ。店主はひとつ頷いて黙ってカクテルを作り始める。三人がこのバーを気に入っている理由の中に、店主が寡黙であるということが入っている。
    「嗚呼、遅れましたが、あけましておめでとうございます」
     その言葉に太宰と織田作もおめでとうを返す。
     やがて安吾の前にゴールデンフィズが置かれると、三人はグラスを鳴らして乾杯した。
    「去年は色々ありましたが、今年もよろしくお願いします」
    「どうしたの安吾~。何時になく畏まって」
     安吾の言葉に太宰が茶化すように笑う。酒がすでに入っているので気分もいいのだ。
    「こういうのは言葉にしないと伝わらないところもありますから」
    「それもそうだな」
     織田作は一人うなずく。
    「じゃあ、二人とも。今年はどんな年にしたい?」
     太宰がカウンターに肘をついて頬杖をする。子供のような無邪気な笑顔で二人に問う。
     織田作はウイスキーを一口飲んでグラスを置くと、静かに言った。
    「俺は……子供たちが元気ならそれでいい」
    「僕はなるべく残業が少なくなるといいですね……織田作さんの後に言うと霞んでしまいますが」
     そして安吾は「そういう貴方は?」と太宰に水を向ける。太宰は待ってましたとばかりに笑った。
    「特製堅豆腐の完成を目指すよ! 目標、角に頭をぶつけて死ねるまで!
     ――あ、あと不発弾の処理もしてみたいな~」
     それを聞いて二人は苦笑しながら酒に口をつける。
     何時もの三人の穏やかで緩やかな時間が、今この時、此処にはあった。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works

    高間晴

    DOODLEチェズモク800字。眠れない夜もある。■インソムニア


     同じベッドの中、モクマはチェズレイの隣で寝返りをうつ。
    「眠れないんですか?」
    「なんか寝付きが悪くてな。……寝酒でもするか」
     起き上がろうとしたモクマの肩を押し止める。薄暗がりの中でプラチナブロンドが揺らめいた。
    「寝酒は体によくありません。それだったら私が催眠をかけて差し上げます」
    「えっ」
     モクマは少しぎょっとする。これまで見てきたチェズレイの催眠といえば、空恐ろしいものばかりだったのだから。するとそれを見透かしたようにアメジストの瞳が瞬いて眉尻が下がる。今にも涙がこぼれ落ちてきそうだ。――モクマはこの顔にたいそう弱かった。
    「モクマさん……私があなたに害のある催眠をかけるとでも?」
    「い、いやそんなこと思っちゃおらんけど……」
     言われてみれば確かにそうだ。この男が自分にそんなことをするはずがない。
     しなやかな手によって再びベッドに背を預け、モクマは隣に横たわるチェズレイと目を合わせた。
    「目を閉じて、ゆっくり呼吸してください。体の力を抜いて」
     穏やかな声に、言われるとおりにモクマは従う。
    「想像してください。あなたは果てのない広い草原にいます。そ 854