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    高間晴

    @hal483

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    高間晴

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    書き初め。さんこいちのお正月。

    ##文スト
    #さんこいち

    あけましておめでとう 元日。夜更けのバー・ルパンにて。
     太宰は一人、カウンターでビールを飲んでいる。店内には相変わらずほの明るい照明に、居心地の良い音楽が流れていた。今日は正月にも関わらず開いていたので、期待を込めて立ち寄ったのだ。
     太宰がビールをちびちびやっていると、カランカランとドアベルが鳴った。振り返った太宰は顔を輝かせる。
    「やあ織田作! あけましておめでとう!」
    「嗚呼。あけましておめでとう、太宰」
     手招きする太宰に誘われるまま、織田作は店主に「何時もの」と告げ、太宰の隣に腰を下ろした。
    「此処に居たら会えると思ってた」
     太宰が嬉しそうに笑うと、織田作も相好を崩す。
    「俺もだ。きっとそのうち安吾も来るだろうな」
    「そうだね」
     織田作の前にウイスキーが出されると、またドアベルが鳴った。安吾だ。彼は振り返った二人の顔を見て眼鏡を押さえた。口元は微笑んでいる。
    「不思議ですね。此処に来る時はいつもお二人が揃っている」
    「お前だって、俺たちが居ると思って来たんだろ」
    「……まあ、そんなところです」
     安吾はカウンターに腰を下ろすと店主に言う。
    「ゴールデンフィズを」
     安吾のお気に入りの酒だ。店主はひとつ頷いて黙ってカクテルを作り始める。三人がこのバーを気に入っている理由の中に、店主が寡黙であるということが入っている。
    「嗚呼、遅れましたが、あけましておめでとうございます」
     その言葉に太宰と織田作もおめでとうを返す。
     やがて安吾の前にゴールデンフィズが置かれると、三人はグラスを鳴らして乾杯した。
    「去年は色々ありましたが、今年もよろしくお願いします」
    「どうしたの安吾~。何時になく畏まって」
     安吾の言葉に太宰が茶化すように笑う。酒がすでに入っているので気分もいいのだ。
    「こういうのは言葉にしないと伝わらないところもありますから」
    「それもそうだな」
     織田作は一人うなずく。
    「じゃあ、二人とも。今年はどんな年にしたい?」
     太宰がカウンターに肘をついて頬杖をする。子供のような無邪気な笑顔で二人に問う。
     織田作はウイスキーを一口飲んでグラスを置くと、静かに言った。
    「俺は……子供たちが元気ならそれでいい」
    「僕はなるべく残業が少なくなるといいですね……織田作さんの後に言うと霞んでしまいますが」
     そして安吾は「そういう貴方は?」と太宰に水を向ける。太宰は待ってましたとばかりに笑った。
    「特製堅豆腐の完成を目指すよ! 目標、角に頭をぶつけて死ねるまで!
     ――あ、あと不発弾の処理もしてみたいな~」
     それを聞いて二人は苦笑しながら酒に口をつける。
     何時もの三人の穏やかで緩やかな時間が、今この時、此処にはあった。
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    高間晴

    DOODLEチェズモク800字。モさんからチェズへのプレゼント。こんなんでもチェズモクと言い張る。■プレゼント


     夜。リビングのソファで二人飲んでいると、隣でモクマが思い出したようにポケットを探った。なんだろう、と思っているとチェズレイになにかの小瓶が渡される。
    「これ、プレゼント」
     それはマニキュアだった。淡く透き通ったラベンダーカラー。傾ければ中でゆらりゆらり水面が揺れる。瓶には見知った高級化粧品ブランドの名が金色で書かれている。いわゆるデパコスというやつだ。彼がどんな気持ちでこれを買いに行ったのだろう、と思うだけで小さな笑いがもれる。
    「あ、気に入らんかったら捨ててくれちゃっていいから」
    「そんなことしませんよ。
     ――ねえ、これ私に似合うと思って選んできてくれたんでしょう? 私の顔を思い浮かべながら」
     モクマはぐい呑みから酒を飲みながら、「そうだよ」と答えた。
    「化粧品売り場のお姉さんに、『彼女さんへのプレゼントですか?』って訊かれちゃって、方便で『はい』って答えちゃったのがなんか自分でも納得いかんけど」
    「まあそこで彼氏へのプレゼントですなんて言ったら色々面倒ですしね」
     まだこの世界では、異性同士での交際が当たり前で、化粧をするのも女性だけだと思われていることが 818

    高間晴

    DONE手作りの栞とファーストキスのチェズモクの話。■眠れない夜、君のせいだよ


     何、読んでんだろ。
     チェズレイはよく本を読む。今日もリビングのソファで読書をしている。それをモクマはソファの背中側に回り込んで、膝の上に開かれたハードカバーのページを見てみる。だが、数行読んだところで、何のことなのか頭がこんがらがるような感覚に襲われたので読むのをやめた。
    「どうしました、モクマさん」
    「いんや。お前さんやっぱ頭脳派だな~って思って」
     チェズレイは薄く微笑むと栞も挟まず本を閉じてしまう。それを見てモクマは目を見開く。
    「ありゃ、お前さん栞挟まないの?」
    「ええ。どこまで読んだかは覚えていますので」
    「は~……じゃあおじさんの作った栞、いらないかあ」
    「栞?」
     チェズレイが小首を傾げてきたので、モクマは背後に持っていた手作りの栞を差し出す。受け取って、チェズレイはまじまじと見つめる。紫色の花を押し花にして作った栞を指差してモクマが説明する。
    「お前さんよく本読んでるみたいだから、どうかな~って思って作っちゃった」
     そこでモクマは少し照れくさそうに笑う。
    「昔におカンやイズミ様が作ってたのの見様見真似だけどさ、なかなかうまく出来てる 2411