ギラギラとした照明にこの場が燃えてしまうのではないかと思うほどに次々と上がる花火、そして様々な感情がいり混ざる声。それを上から見下ろしている西谷。
そんないつもの光景に
「つまんねぇな」
と愚痴を漏らす。そばにいた女性たちはビクリとし、「よぉ言いますわ」と言いたげな顔をして西谷の椅子の後ろにたって報告をしに来た獅子堂。西谷のかつての地位からここまで上がってくるのにはそう長くはかからなかった。あの人にあってからかあの人のために役に立ちたいと思うようになってから…。だからだろう。
今がとてつもないほどにつまらないのだ。西谷にとって今のあの人は
「俺より下のやつらと楽しそうにしている。」
それが彼にとっては気に食わなかった。そう思えば思うほどだんだんいらいらしてきた西谷は周りの女性たちに八つ当たりをし、獅子堂はそれを黙って見ていた。
そこで目が覚めた。
無機質な天井を見つめぼーっとする。あれから西谷の身には色々あった。死んだはずの人間とやりあって、信じていた人に裏切られ、新しく生きていくために付けられたはずの地位や名前を全部消されてこんなとこにいる。最初、西谷は従うことが久しぶりだったせいか酷く反発をしていたが、今は大人しくしている方ではあった。しかし同じく大道寺にいる獅子堂には、
「昔とさほど変わってませんけど」
と言われた。
…そんなことをベットの上で思い出していた。
「さっさと起きろ。」
扉の方から声がした。西谷に首輪をつけてる管理者の声…吉村だ。吉村は西谷の部屋になんの躊躇もなく入ってきて彼に話しかけてきたのだ。その行動にムッとした西谷はからかうように答えた。
「今日は任務なんてねぇだろ。それともあれか?休みまで管理するほど暇なの?」
西谷の返答に若干怒った顔をした吉村。西谷は吉村をからかった時に出るこの顔がたまらなく好きだ。つーんとして感情なんて微塵も出さない人間に感情を無理やり引き出すことができるからだ。あとはただ単に吉村をいじることが西谷は面白かった。嫌そうな顔をしつつも吉村は話を進める。
「……急用の任務だ。要件はそれだけだ。さっさと支度してこい。」
「めんどくさ……。」
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任務がスムーズに終わりなんてことない顔をして吉村の車に戻って報告をした。いつもの淡々とした作業を終えたあと吉村は何も言わずに車に乗る。「今日もつまんねぇ。」と愚痴り西谷は車に乗った。
しばらく静かな車内の中でいきなり吉村が口を動かした。
「なんか思うことでもあるのか。いつにもなくつまんなさそうなかおしてやがる。」
「は?なんだよ。意味わかんねぇ。」
「朝から変だって言いてぇんだ。」
「ふーん。あんたが俺の事気にするとかおもしれぇこともあるんだな。」
「この中で殺ったっていいんだぞ。人が心配してやってんだ。」
「はいはーい。……特にはねぇけど朝方、夢見た。」
「夢…?」
「今までの記憶。あいつのためにのし上がって俺が役に立ってるって証明したくて色々やったし物もつくった。でもよ…裏切られてここまで落ちた。」
「……。」
「……ま、つまり今の俺はいる意味ねーんだなって。」
運転している吉村の手がピクリと動くが淡々と話す。
「そうか。お前からそんなしおらしいセリフが出てくることに驚きを隠せねぇんだが。」
「……。」
「俺殺すんじゃねぇのか?最初ここに来たばっかの時散々言ってたろ。「あんたをぶっ殺す。花輪ってやつもだ。…大道寺なんて俺が壊してやるよ。」ってよ。」
「………。」
ヒュンッ。
吉村に向かって短刀が飛んだが、吉村はあっさりと避けた。舌打ちをし西谷を怒ろうとしたが
「やっぱそうだったわ。殺さねぇと気がすまねぇ。殺す相手に慰められるとかごめんだわ。」
そう言われバックミラー越しに移った西谷はいつもの生意気な顔に戻っていた。西谷は運転している吉村の頬にキスをして座っていた位置に戻って外を見た。イラッとしつつ「めんどくせぇやつだ。」と思いながら吉村は再び運転を続けた。西谷は少し笑いながら吉村に聞こえないように呟いた。
「やっぱりつまんねぇな。」
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後日西谷を見かけた獅子堂曰く、
「ここに来たばっかの時より会長、なんかスッキリしたよーな顔してましたわ。吉村さん、なんか言いました?」
と吉村にちょっかいかけ、仕事を増やされましたとさ。