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    milouC1006

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    milouC1006

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    なんか書いた。こういうの好き……

     いや、悪いな。待たせたか? これでも走ってきたんだぜ。元をただせば、支度をするから待っててくれと言ったのはあんただしな。空き時間があったら、ついつい他の事に手を出しちまう質でね。まあ遅刻したのは事実だ。気に障ったなら謝るよ。
     ……ん、いい香りだ。俺の好きな奴かもしれないな。どの茶葉なんだ? ここの商人が卸す茶葉は結構な種類があるからな。――パルミラの? 随分珍しいのを持ってるんだな。輸入するのも一苦労のはずだ。レスターでもなかなか手に入らない逸品だが、香りの質も良い。流石は舌の肥えた貴族様を相手にする商人だ、仕入れに余念がないな。……今のちょっと皮肉っぽかったか? 他意はないんだ。それじゃあ冷めちまう前に頂くとするか。

     ……美味いよ。あんた、意外と茶を入れるのが上手いんだな。茶葉は嗜好品だが、昔から嗜んだりしたのか? ――最近学んだばかり、か。確かに茶器も新しい。貴族を相手取る教師なんだからそれくらいの嗜みは無きゃな。それでもこんなにうまく淹れられるとはね。どこかの執事ってのも似合いそうではあるよな、あんたは。

     さて、こうしてゆっくり話すってのは……実は初めてじゃないか? 何かと二人きりって時間は少なかった。あんたの面白い話が聞けたらいいんだが――俺のことが聞きたい? ふふ、そんな面白い話が出て来るかな。いいぜ、俺も話せる事はなんでも話すさ。お互い疑念は無い方が良いし、あんただけに喋らせるってのも不公平だからな。
    あんたが俺に聞きたいと思う事にさえ興味が……え?元気そうだって? まだどうして……ああ、いつもより饒舌だからか。俺は結構喋る方だと思うんだが、そうか。あんたとの初めての茶会だから浮かれてるのかもしれんな。いや、本当に楽しみにしてたんだぜ。何しろ、あの準備の時間のかかり方、手際の悪さ、初めて主催したんだろう。お見通し……って、あー違う……いや、違わないな。あんたが準備してるとこ、覗いてたんだ。こういう事も不慣れだろうから、なんとなく心配でな。上手くいってなかったら手伝ってやろうかと――遅刻は……ちょっとした策略だよ。いや、いたずら心って言う方が近いかもな。俺がいつ来るかと待っているあんたを観察するのが楽しかった、ってだけさ。俺があんたに興味を持ってるんだって話は、会った時からずっとしていたろ? まぁ、かわいい教え子のちょっとしたいたずらだ。多めに見てやってくれよ。

     ま、それはそれとしてだ。最近、雰囲気が変わったよな。いやいや、「誰のことだ?」みたいな顔しないでくれ。あんただよ。ベレト先生。最初に会った時は、それこそその通り名のようだと思ったもんだが……意外と人間らしい所もあるんだと、最近思うようになったんだよ。ほら、悪魔は花を育てたり五人前昼飯を食べたりしないもんさ。あ、まあ……食事に関しては人並とは言えないがな。ともかく、こうして俺を誘ってくれたりさ、数節前なら考えられなかったんじゃないか?

     ん? 俺の雰囲気も変わったか? まあ俺は一つ歳を重ねたしな。あんたの初茶会というめでたい今日に、だ。いやこれは誉れだな。あんたのはじめてを頂いちまった、ってことだ。ついでに、十八になった俺のはじめては、あんたが持って行ったんだ。ああ、他意はない。勿論、茶会の話さ。……いや、あんた本当に分かりやすくなってきたよな。目が泳いでるぜ?

     出会ってから数節。あんたも変わったし、俺も変わった。まだ折り返しにも至ってないが、それでもこう色々変わるんだ。卒業の頃にはどうなってるんだろうな。
    二人の将来? なんだか意味深長な言い回しじゃないか。まあ、勿論仲良くやれたらいいとは思っているよ。今年一年はここに勤めるだろうが、来年からはどうするんだ? また傭兵に戻るのか? ここでの縁を活用してどこかの貴族付きの騎士になる、なんてことも出来るだろうが……考えてなかった、って顔してるな。っはは、いや、あんたらしくていいな。それだけ今の生活が充実してるってことだろう。良い事さ。

     俺か? 俺は、そうだな。普通にリーガン家に戻って、同盟をまとめる勉強をもう少ししてから、盟主を継ぐ。まあ、うちの祖父さんも、最近は聞いてたより随分元気そうだからな。もう暫くは政治以外のこともしていられるかもしれない。もっといい雇先もあるかもしれないが、気が向いたらうちで雇われてくれてもいいんだぜ? あんたなら騎士でも使用人でも大歓迎だ。でもどこかに雇われるより、多少生きるのが厳しくても自由な方が良いと俺は思うね。……俺らしい? そりゃよかった。

     あー、なんだか大した話もしてないのにずいぶん時間が経っちまったらしいな。あんた、時計は持ってるか? へぇ、随分立派な懐中時計だ。ここへ勤めるからって親父さんが用意してくれたのか。まあそれはそれとして、な? 結構時間が経っていたろう? ぼちぼちお開きって時間だが……ふふ、寂しそうにしてるな。じゃあ最後に一つだけ俺から質問だ。

     あんた、今何周目だ?

     ……お~い、固まっちまってどうした? なにも、あんたにとっては大したことじゃないだろう? 別にそれを聞いてどうこうしようって話じゃない。いつも忙しそうだからちょっとぐらい労おう、ってことなんだ。だから気楽に答えてくれりゃ――へぇ、三十周。そりゃ大変だな。それだけ重要なことがあったんだろうが、俺なら一桁のうちで止めちまうがな。まあ結局、こうして最後の周に俺を選んでくれたんだから文句はないさ。

     は? 選んでない……って? いやいや、今現にこうして茶会を開いてるじゃないか。忙しい中最後に選んでくれたのは俺、ってことだろう? そんな呆然として……なんか話が食い違って様な気がするな。俺はこのガルグ=マクを何周したのか、って聞いたつもりなんだが、あんたの事を言っていたんだ?

     ……だんまりか。まあいい。あんただって人間なんだから、秘密にしたい事の一つや二つあるだろう。気が向いた時に話してくれると嬉しいね。
     さて、これ以上二人きりでいると皇女様に怒られちまうな。私たちの先生を独占して、ってさ。気のせいか分からんが、なんとなく視線を感じるんだよな。
     お茶ごちそうさん。美味かったよ。誕生日だけなんて寂しい事言わないで、これからも良ければ誘ってくれよ。あんたとはこれからも仲良くしていきたいんでね。
     それじゃ、三十周目も頑張ってくれよ、先生。
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