人外マシュレイ薬草や山菜、木の実。キノコはひだの裏や模様をちゃんとよく見て、確実に食べられるものを。腰から下げた袋と手持ちの編みかごは、慣れた手つきで既にいっぱいになっていた。
「〜〜、たいりょうたいりょう。さて、そろそろ帰りますかな」
手を頭上で組んで、立ち上がり伸びをする。しゃがみ続けて縮こまっていた若々しい身体を、年寄りじみた唸りと共にマッシュは解した。今しがた採った葉物と家にある根菜で汁物でも作ろうか。昨日釣った魚も残っているし、塩でも振って焼けばばっちり。
道端のゆすらごの実を拝借。口の中で果肉を弾けさせ、ぷっと種を吐き出しながら夕餉の算段を。瑞々しい甘酸っぱさが一仕事こなした身体に沁みれば、足取りも軽くなる。くるぶしくらいまで編まれた藁を履く足が向かうのは、一人暮らしの何の変哲もない我が家だ。
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