… 場地圭介は口より先に手が出る男である。
自覚はしているし、周りから指摘されることも多かったので、歳を重ねるごとにそれをおさえるだけの理性と忍耐を身に付けてきたはずだった。
しかし、目の前の潤んだ金春色に映る自身の顔に、その理性も忍耐も今回は役に立たなかったことに気付く。
それでも圭介は努めて冷静に、動揺を悟られないよう踵を返した。
しくじった、という焦りと、ほのかに残って消えない柔らかい感触が圭介の体を熱くしていて、振り返ることができない。
圭介は転がっている小石を数えながらそのまま歩き出した。いつもなら半歩遅れてついてくる音が、少し遠くから聞こえる。圭介はほっとして息を吐いた。
よん、ご、ろく・・・・・・なな。
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