オンボロ寮には、よく他寮の学生たちが泊っていく。それはほとんどが監督生の同学年の友人たちで、彼らは定期的に集まっては勉強会という名目でバカ騒ぎをする。
だがそれ以外で個人的に泊まりに来るのは、ひとりだけだ。少なくとも、デュースはそう認識していた。自分だけ。たとえエースだって、一人で朝までいることはない。
腕の中で、眠ったままの監督生が身じろぎする。一時間前には濡れて熱く火照ったはずの肌はすっかり冷えており、デュースは上掛けを引っ張る。世界があまりにしんと静まりかえっているのは、雪が降っているせいかもしれない。暖炉の火はすでに消え、真夜中のオンボロ寮で起きているのはきっと自分だけだ。さっきまで、彼女と体を重ねていた時にはこんな気持ちにはならなかった。その時だけは、いつも夢中になれる。余計なことは考えずに。
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