宅配便配達員のタケル×お洗濯道流宅配便の配達員をしているタケル。
けっして愛想は良くないけれど、真面目な仕事ぶりと精悍なその姿で配達エリア内に隠れファンは多い。
ある夏の暑い日、その日もタケルはエレベーターのないマンションの上階まで荷物を届けていた。
届け先の部屋の前に到着しインターフォンを鳴らすと、中から「ちょっと待っててください！」と慌てたような声が聞こえてくる。
その声を聞いて少し後、玄関のドアが開くとそこにはエプロン姿の道流が。
洗濯物を取り込んでいた所だったのか、片手にはふわふわのタオルをどっさり抱えている。
道流はタオルを玄関の三和土のあたりに置いて、「お待たせしてすいません」とハンコを取り出す。
「いえ…そんな待ってないんで」と道流の明るい笑顔を眩しく感じながら、荷物を渡すタケル。
受取印を押して荷物を受け取ったとき、道流は間近に見たタケルが汗だくなのに気付く。
「すごい汗だな」
道流はそう言いながら、近くに置いていたタオルを素早く手にするとタケルの頬にそっと押し当て汗を拭き取る。
柔軟剤の良い匂いとタオルのふんわり柔らかな感触に、一瞬ほうっとなるタケルだが、お客様に洗濯したばかりのタオルを使わせてしまったことに気付いて、慌てて身を引く。
すいません！洗って返します！と半ば強引にタオルを奪って逃げるように帰って行くタケルに、道流は「気にしなくて良いから！」と声をかけて見送る。

マンションの下まで降りてきて、タケルはしっかりと握ったままの、強引に持ってきてしまったタオルに視線を落とす。
自分の汗を拭ってくれた道流の笑顔を思い出すと、途端にまたぶわっと汗が吹き出した気がした。
今日は暑いから、階段を駆け下りてきたから、とタケルは自分で自分に汗の言い訳をする。

後日、仕事が休みの日に本当にタオルを綺麗に洗って返しにきたタケルを道流は快く自宅に招き入れて、そこからプライベートでの交流が始まってなんやかんやタケ道してほしい。

自分が宅配便の配達員で荷物を届けに行ったら、柔軟剤の香りに包まれたエプロン姿の団地妻のような道流が現れた。なんて事があったら「奥さん！奥さん！」て全力で迫っちゃうが、タケルは真面目だからそうはならないよ。