六文字の手紙/一カラ(白書)「死ねよ、クソ松。」
松野財閥の跡取り息子は口が大変悪かった。
口を開けば暴言ばかり、死ねだの殺すだの酷いものだ。
しかしその悪癖は特定の人物のみに向けられていた。
「まったく。口が悪いですよ、一松坊ちゃん。」
クソ松と呼ばれた男が、跡取り息子である松野一松を窘める。
彼は名前をカラ松と言い、松野財閥に複数人いる書生の一人であった。
歳は一松と同じで、学び舎も同じである。
「お前が鬱陶しいのが悪い。」
仏頂面で一松が言う。そんな様子にカラ松は溜息を吐いた。
「そんなことでは坊ちゃんを好いてくれる女性は現れてくれませんよ。」
「五月蠅い。死ね。」
そう吐き捨て一松は去っていった。カラ松はその場に取り残される。
一松にとって『死ね』という言葉は最早口癖のようなものだった。
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