ぬいぐるみを貰った。
西部センク協会三課、ムルソーを模したぬいぐるみ。
動画配信者でもある彼はその見た目と見事な戦いから人気があり、この度彼のグッズが協会から販売されることとなったらしい。協会が個人をフォーカスするのは上層級の扱いと言っていいはずだが、当人はそこまで重要視していなかった。恐らく意識すらしていない。彼が求めるのは純粋な強さだから。
ともあれ、今度出ることになったのはよく見るフィクサーブロマイドと缶バッジ、そして、ぬいぐるみ。
前者二つは写真をそのまま使ったもので、ぬいぐるみは随分とデフォルメされて可愛らしかった。装飾の多い衣装も程よく再現されて、なるほどこれは女性ファンは喜ぶだろう、とぼんやり感じた。
目力はあるのに、ふっくらとした質感がそう思わせるのか。手に持つとほっと安心してしまう、ような。
「ふ」
試作段階というぬいぐるみをこね回しながらそんなことを思う。
なぜうちに試作があるのかと言うと、先日このぬいぐるみのモデルことオツキアイ中のムルソーが置いて行ったのだ。グッズのこともその時に教えてもらった。
「会えない間、これを私の代わりにしてほしい」とかなんとか、相変わらず熱烈なことを言いながら。
ぬいぐるみは可愛い。こんなおっさんが愛でて良いのか戸惑うほど。
今は部屋に一人だからと、誰に対してでもない言い訳してぬいぐるみと一緒にベッドへ潜り込む。
小さな柔らかさを頬に感じながら瞼を閉じた。
……でも、でもなぁ。
会いたいもんは、会いたい。
模造品じゃなく、合成音声でも、映像でも無く。
俺、こう見えて寂しがり屋だから。
広く感じるベッドに独り。
今日も夜が更けていく。