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    だいたい七割

    六分九厘(https://poipiku.com/1090172/ )

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    だいたい七割

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    ドラロナ アラビアン メモ

    #ドラロナ
    drarona

    アラビアン ドラロナ
    盗賊 子ロナルドと金持ちドラルクの話

    ドラルクの城に子ロナルドが盗みに入る
    ドラルクはロナルドに鉢合わせ、ロナルドがドラルクを殺そうとするもドラルクがすぐ死ぬ吸血鬼だったことに毒気を抜かれる
    腹を空かせた子ロナルドにドラルクは料理を振る舞う
    心を開き始めた子ロナルド(ちょろい)は盗みをしていた経緯を話す
    子ロナルドは生き別れた兄妹を探しながら願いを叶えてくれる魔法のランプを探し(もう一度兄妹で幸せに暮らすため)、金持ちの家に当たりをつけて盗みに入っていた
    ドラルクは兄妹を探す手伝いをする代わりに盗賊をやめウチで働くことを申し出る
    吸血鬼のドラルクは砂漠の昼にはとてもじゃないが対応できない
    日中にやり取りしたい商人の相手をする小間使いを探していたのだ
    商人は裕福でランプを手に入れているかもしれない、そんな相手とパイプができる
    盗みをしなくていいし、何より美味しいごはんにありつける(あとかわいいジョンがいる)
    子ロナルドはドラルクの元で働くことにした

    子ロナルドはよく働いた
    夕刻になり起きて来たドラルクに日中にあった出来事を話しながら食べる夕飯が一番のお気に入りだった
    太陽の光に弱い(弱すぎる)吸血鬼がなぜ砂漠なんかに住んでいるのか、ドラルクに尋ねてみたところ、「探し物をしている」と返される
    具体的に何かは本人もわかっていなくて、ありもしないものを命の危険と隣り合わせで探している(長命種であるため気まぐれにだが)
    どこか自分に似ているかもしれないと子ロナルドは思った

    ドラルクがまだ寝静まり、商人との取引が終わった城は静まり返っている
    ドラルクは好きに遊んでいいと小遣いもくれているが、子ロナルドは城でドラルクが起きてくるのを待つようになった
    兄妹に会えない寂しさを仕事とドラルクとの生活で誤魔化しているうちに子ロナルドにとってドラルクと過ごす時間はかけがえのないものになっていた
    棺桶の隣りに座り、そっと蓋を撫でる
    自分はまだ子供で、人間で、ドラルクとずっと同じ時間を過ごせないことが悔しかった
    いつしかドラルクとずっと一緒にいることが彼の願いの一つになった

    ドラルクが目を覚ますと、棺桶の蓋が開かなくなっていた
    重しが乗っているようで力を振り絞り(何度か死にながら)蓋をずらすと子ロナルドが蓋に寄りかかって寝ている
    仕事で疲れたのだろうと思ったドラルクは頑張っている小僧にいつもよりちょっと豪勢な夕食を作ってやるのだった

    時は流れ、ロナルドは立派な青年になっていた
    未だ兄妹の行方は知れず、ランプも見つかっていないが仕事の合間に情報収集を行なっている
    そのついでに街で困っている人を助けていたロナルドはいつしか街のヒーローになっていた
    成長した若造をみて「さすが私!」と鼻が高いドラルクは一方でロナルドを自分のところに留まらせていいものか?と思い始める
    子供の時とは違い、遠くまで旅ができるようになった
    昼を生きる人間に愛され、必要とされている
    いつか手放さないといけないと思いつつ、彼と離れるのが怖くなっていた

    ロナルドも悩んでいた
    ドラルクのことを好きになってしまったのだ
    ただの契約関係から家族同然の信頼をおけるようになった相手に恋心を抱いている
    ドラルクの好みはわかっていた
    うなじの綺麗な美少女だ
    筋肉隆々に育った、ガサツで可愛げのない男には興味がない
    この気持ちを飼い殺しにしたままドラルクと過ごすことはできないし、もし本人にバレてしまったら気持ち悪がられてこの契約も破棄されてしまうだろう
    しかしドラルクと離れがたく何でもないふうに装いながら過ごしていた

    ある日、街で老人が倒れているのを見つける
    怪しく、みすぼらしい風体の男に近寄るものはいない
    ロナルドは彼を助け、そのお礼にと魔法のランプの伝説を教えてもらう
    そのランプがとある洞窟にあるというのだ
    ロナルドはこれを口実に城を出ることにした
    ランプは長年の願いを叶えられるし、これを持ち帰ればドラルクに恩返しができると思ったのだ
    ドラルクは面白いことが大好きでランプにも興味ありげだった
    ランプは彼の探し物の役にも立つし、ドラルクとジョンを幸せにできるだろう
    3つの願いのうち1だけロナルドのために使わせてもらって、後の2つはドラルクとジョンで使えばいい

    そう考えたロナルドは「魔法のランプを探してくる」と書き置きを残して昼のなかに消えた

    男に教えられた道のりは険しく、ぼろぼろになりながらもロナルドは進んでいく
    苦労してたどり着いた洞窟の奥は金銀財宝に溢れ、その中心にランプが鎮座していた
    目の模様があしらわれたランプを手に、ロナルドは帰路に着く
    途中足を滑らせ大きな傷を負ってしまう
    月あかりの中をふらつきながらもなんとかドラルクの城へたどり着いた
    鍵がかかっているだろうから、窓から侵入する
    その部屋では最初にドラルクの城に侵入した時と同じようにドラルクがジョンを抱いて座っていた
    「あ…ドラルク、」
    「……ロナルドくん?ロナルドくんなのか!?」
    ひさびさに聞く愛しい人にの声に安心して体から力が抜けていく
    「これ、盗ってきた。やる」
    ドラルクにランプを投げ渡すとそのまま床に倒れ込んだ
    何か叫んでいるドラルクの声が遠くなっていく
    眠気に耐えきれず、ロナルドはそのまま目を閉じた

    目を覚ますとロナルドはベッドに寝かされていた
    体はだるくて動かせないので顔だけで辺を見る
    ドラルク城のロナルドの部屋で、怪我は手当されていた

    ベッドの横にドラルクが座っている
    目を固くつむり、険しい表情を浮かべている
    顔色はいつもより悪く、死体のようだった
    「……ドラ、ルク」
    声も思ったように出せない
    ドラルクが弾かれたように目を覚ますと、そのまま死んだ

    「この怪我はなんだ」「あんな書き置きじゃ何もわからんだろう」「こんな危険なこと1人でやるんじゃない」
    高速で再生したドラルクは死んだり戻ったりを繰り返しながら烈火のごとくロナルドを叱り始める
    「もし、もし君が…死んだらどうするんだ……」
    ロナルドの手をそっと握りしめる
    「……」
    「まあ、無事に……無事ではないが、君が戻って来てくれたのならそれでいい。水を飲め。何か食べれそうなら作ろう。君が喋れるようになったら洗いざらい吐いてもらうからな」
    見張りにジョンを残し、ドラルクはキッチンへと立っていった

    心配してたんだからヌ!とジョンが泣きながら頬を撫でてくる
    ジョンってドラルクが死んだ時以外も泣くんだな

    ひさびさのドラルクのごはんを、うっすら泣きながら頬張る
    食えるようでよかったとこぼすドラルクはずっと俺を睨みつけていた
    「それで?君が私に一言もなく出ていって?こんな大怪我までして!?このランプを持ち帰って来たことについて話してもらおうじゃないか!!!」
    「書き置きしただろ」
    「あんなもんでどこにいったかわかるわけないだろ!出かけるならどこに誰と何時までに帰るか書いて、危ないところには行くなと何度も言ってきたはずだ!!!」
    ロナルドが子供の時から言われていたことだ
    もっともロナルドは夕飯までに帰っていたから実際に書いたことはなかったが
    ドラルクの中ではロナルドはいつまで経っても手のかかる子供なのだ
    でもいつかは親離れしないといけない
    「街で助けたお爺さんがランプについて教えてくれたんだ。で、行ったら本当にあったから持ち帰って来た」
    納得がいかないと言った顔を浮かべるドラルク
    「……君がランプを見つけて、兄妹と再会することは君の悲願だったからね」
    「おう、でこれ3つまで願いを叶えてくれるらしいんだ。1つは俺が使うけど、残りはドラルクとジョンで使ってくれ」
    「君がとって来たんだから君のものだろう」
    「恩返しだよ。ここまで育ててくれてありがとうな」
    直接いうのは恥ずかしくて、手に持って食器を見つめながら話す
    「お前ランプに興味があったみたいだし、これがあれば昼も歩けるようになるかもだし、探し物も見つかるかも。いや、何を願うかはお前次第なんだけど……」
    好奇心旺盛なドラルクは昼の活気溢れる街を気に入るだろう
    たくさんの人に囲まれて、ロナルドを含めて3にん(にっぴき)でいる時よりずっと楽しくなるはずだ
    「わかった。ありがたくいただいておくよ。君はご兄妹に会う前にしっかり傷を治しておきなさい。さ、食べたなら休んで」
    「おう!」
    「おやすみ、ロナルドくん」
    ひんやりしたてがそっと額に当てられる
    昔から寝かしつけでやってもらったこれが大好きだった

    怪我はすぐに治り、動けるようになってきた
    ドラルクの甲斐甲斐しい世話のおかげだ
    ただ、ドラルクはロナルドが日中に街に行くことを許さなかった
    徹夜(徹昼?)までしてロナルドを見張ろうとするから、根負けした俺はドラルクの棺桶の側で日中を過ごすことになった(じっとしていられないので筋トレしたり、起きてきたジョンにゲームの相手をしてもらった)
    棺桶の蓋をなぞる
    これができるのもあと少しの間だけ
    怪我が治ればここを出ていく

    日中、誰かが城を訪ねてきた
    ドラルクもジョンも寝ていたので対応をする
    「ここにロナルドさんという方がいらっしゃると聞いてきたのですが」
    ロナルドより背の低い、若そうな男が声をかけてくる
    「ああはい、俺がロナルドです」
    フードをとった男と目が合う
    男はロナルドと同じ髪と目の色をしていた
    「ヒデオか……?」
    「……兄貴……?」

    互いを確かめあった後に嬉しさのあまり抱擁する
    ヒヨシはロナルドの噂を聞きつけこの街までやってきたのだという
    「おみゃーが人助けをしていたおかげじゃ」
    えらいぞ、と頭を撫でる
    ヒマリは宿にいるらしく、今日はヒヨシが噂を確かめにきたのだ
    ロナルドさえ良ければまた3人で暮さないか?と持ちかけられたロナルド
    ドラルクの城を出ていくつもりだったと答える
    「それはダメだよ」
    声に振り向くとドラルクが立っていた
    「誰に断ってここを出て行こうとしているのかな?君は私のものだろう」
    「お前のものになったつもりはねーよ。俺は兄貴と会えたし、お前はランプを手に入れたんだから契約は終わりだろうが!」
    いや、本当は出ていきたくない
    「終わりなんだよ……」
    ロナルドは涙を流しながら呟く
    ヒヨシが口を開く
    世話になったんだからきちんと話し合えと言い残して宿へと帰っていった
    「さ、ロナルドくん入って」
    「玄関で話すのじゃダメか?日も暮れてきたし」
    「立ってたら疲れて死ぬ」
    「クソ雑魚」
    テーブルに夕食が並べられ、美味しそうに湯気を立てている
    食べながら話そうか、というドラルクにロナルドは食事に手をつけられないでいた
    ドラルクの食事はうまい
    ロナルドにとって思い出の、家族の大切味だ
    食べてしまえば決心が鈍る
    「……契約が切れたらここを出ていくのは自然なことだろ。俺も大きくなったし、お前に世話になったことにはすごく感謝してる。いつまでも迷惑かけられない」
    「私が君を迷惑だなんて言ったか?」
    「迷惑になる。それに兄妹のことだけじゃなくて、俺好きな人ができたんだ」
    ドラルクの目が見開かれる
    「好きな人がいるから、ここにはいられない」
    息を吐いて、お茶を一口啜る
    緊張で喉が酷く乾いていた
    「……なるほど。兄弟に思いびと。君が人間に目移りしたから私には興味がなくなったわけだ」
    「こんなことなら外に出すんじゃなかったな」
    視界が歪み、目を開けていられなくなる

    目を覚ますとロナルドはベッドに寝かされていた
    今回は知らない天井で、両手両足には枷がはめられている
    「目が覚めたかね」
    「なんのつもりだ……!」
    「君がここを出ていくというから、出られなくしたまでだよ。君はこの城でずっと私と、ジョンと、一緒に暮らすんだ」
    「頭おかしくなったのか」
    「おかげさまでね」
    ドラルクはロナルドの顔を覗き込む
    「出会った時はただの子供だと思っていたのに!いつのまにか手放せなくなっていた。私の探し物は君だったんだ。やっと見つけた。もうどこにもいかないでくれ!」
    ドラルクは泣きそうな顔をしていた
    「俺はものじゃない。お前に所有されて、お前に閉じ込められるつもりはない」
    「じゃあランプに頼もうか。願いをなんでも叶えてくれるんだよね」
    ドラルクがランプを取り出したことにぎょっとする
    「おい願いは3つしか叶えられないんだぞ!そんなことに使うなよ!」
    「私には、君が!何より大切なんだよ!」
    「……子離れする時が来たんだよ」
    「君が出ていった時、ぞっとしたよ。ランプなんて口実で、もう私のところには帰って来ないんじゃないかって思ってた」
    「そうだな。死んだら帰らないつもりだった」
    「でも戻ってきてくれた!これは運命なんだよ。もう逃してなるものか!」
    「ドラルク」
    「お願いだロナルド君外の世界のことは全部忘れて、私だけのものになって」
    「それは無理だ」
    ドラルクの体が膨らみ、裂けたように開いた口からは鋭い牙がのぞいている
    こんな力をどこに隠し持っていたのか
    腐っても龍の一族のであることを思い知らされる
    どう対処するか考えているうちに、ロナルドの腹の虫が空気を読まずになく
    ぽかんとした表情のドラルクは一度しんでからロナルドの上にへたり込んだ
    「俺はお前にもらった、全部のことが大切だから。外の世界のこともお前がおれに良くしてくれたから経験できたことだ。お前にもらった宝物なんだよ」
    「ドラルク、これ外してくれ。殺さないから」
    ドラルクはそっと枷を外す
    ロナルドはドラルクの背に手を回した
    「俺のこと心配してくれてありがとうな。でもやってることがヤバすぎる」
    「傷だらけで帰ってくるゴリラに言われたくないわ」
    いつもの調子に戻ってきたドラルクに安心する
    「俺は出て行かない。ずっとお前と一緒にいるよ」
    「なんで」
    「そりゃおれもお前のこと、す、すき……だから」
    「え?」
    ドラルクは砂になった

    契約関係から家族、そして恋人になった2人
    にっぴきはドラルク城で今日も賑やかに過ごしている
    「さぁ早くしたまえ!」
    「わかってるよ!擦るぜ!」
    間抜けな掛け声と共に魔法のランプを擦るロナルド
    現れた一つ目のランプの魔人はのちににっぴきの新しい家族の一員になるのだった
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