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    suimelo0524

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    1812♀
    頭の中ではそりぁもう、完結までいって心の中の自分が拍手喝采なのに文字へと落とし込めなくてここまで書いて力尽きた(まだ序盤)もの

    1812♀松野おそ松はここ最近、おかしいのだ。


    きっかけは先日の事、妹のカラ松の部屋に漫画を借りようと襖を開けたことだった。
    「キャッ!」
    黙って襖を開けたのが悪かった。ちょうどカラ松は着替えの最中だった。
    「あ、わりぃ」
    一言だけ告げて慌てて襖を閉める。閉めた襖の向こうから
    「…開けるときには一言言ってくれないか」
    と小さな声が聞こえる。…うん、確かにそうだよな。
    こくこくと誰に見せるわけでもなく頷き、襖に手をかけたままおそ松は動けずにいた。バットで頭を殴られたような衝撃でグワングワンと視界が揺れる。かけたままの手は燃えるように熱かった。

    小学校までは普通に六つ子として男も女も関係なく過ごしたはずだ。中学校になってカラ松だけがセーラー服で。そんなカラ松を弟達と「似合わねー」なんて笑った気がする。そして高校に進み、服装は違えど俺達は一緒。おんなじ六つ子だと思っていた。
    それなのに、さっき見たカラ松の身体。
    白くて丸みのあるライン
    水色のブラジャーの中で乳房が揺れていた
    女性にしては低めの声のはずのカラ松が発した「キャッ!」という高い声

    なんだあれ
    なんだあれ!
    なんだあれ!!

    今まで考えもしなかった「カラ松の性」をリアルに感じ取ってしまった。

    あいつは女なんだ。

    それ以来、カラ松の事を何となく目で追ってしまう。
    弟達がどたどた音を立てて廊下を歩く中、少し軽めの音がする。
    みんなが胡坐をかいてちゃぶ台に座る中正座しながら背筋を伸ばしてご飯を食べる。
    肌が白いので頬のニキビがより目立つ。鏡を見ながらため息をつく横顔、長い睫毛が伏せられる。

    こいつ、女だったんだという感情。

    これが松野おそ松がおかしい原因だった。






    朝。
    ふわああと欠伸をしながら階段を降りる。下まで降りると廊下を歩く軽めの音がする。制服姿のカラ松と目が合った。
    「おはよう、おそ松」
    「あ?お前早くね?もう学校行くの?」
    「うん、定期公演が近いから。…朝練なんだ」
    「ふーん」
    興味なさそうに答えてカラ松とすれ違う。すれ違いざまにふわっと髪からシャンプーの香りが漂う。
    「///…ッ!」思わず振り返る。カラ松は髪をなびかせながら玄関に向かっていった。
    靴を履き、おそ松と目が合い小さく「行ってきます」と告げ、出ていった。
    (あいつ、そういえば髪、伸びたよな)
    フェイスラインを覆うぐらいまで伸びたカラ松の髪の匂いを思い出しながらそんな事を思う。
    カラ松は今まで「邪魔だから」と言って小学生からずっとショートヘアでいたのだ。
    (伸ばしたい理由がある、とか)
    そんな事を思うと何故か左胸がきゅうきゅうする。なんだこの感じ…と胸をさする。
    ドタドタと他の兄弟が階段を降りてくる音にハッとしてブンブンと頭を横に振りながら居間へ向かう。
    居間ではチョロ松とトド松が朝ごはんを食べていて、おそ松が席に着くと十四松が入ってきた。一松のものらしき階段を降りる音も聞こえる。

    「カラ松姉ちゃん、これからずっと朝練だから一緒に学校行けないなあ」
    トド松がしゅんと頭を下げる。
    「ああカラ松、何の役だっけ?」
    チョロ松がトド松に訊ねると
    「木の役だって。一言だけセリフがあるからって張り切ってたよ」
    丸くて赤みのある頬をさらに赤くさせて答えるトド松に
    「木かぁ。あんなに頑張ってるんだからもうちょっといい役になってもいいと思うけど」
    といいながらチョロ松が味噌汁を啜る。
    他の兄弟は黙っているが二人の会話に耳を傾けている。おそ松はもちろん、一松や十四松も興味ない風に見せかけて紅一点、ちょっと気弱な姉の事を気にかけているのだ。皆ちょっとソワソワしながら飯を食べ、身支度をする。


    かったるい授業を教科書に落書きすることでなんとかやり過ごし、放課後。
    弟らは各々どっかに散ってしまった。なんだよ、つまんねーと思いながらグラウンド脇を歩く。すると校舎脇の方で複数の女子の掛け声が聞こえる。
    なんだ?と思いひょいと覗き込む。何人かの女子と男子が発声練習だろうか?早口言葉のようなものを揃って繰り返している。
    その中に見慣れた姿があった。
    カラ松だ。
    カラ松はみんなと一緒に声を張り上げる。普段、見たことのない真剣な表情と大きな口。いつもは下がり気味の太めの眉毛がきりりと上がっている。
    (木の役だろ?そんなに真剣にやんなくてもよくない?)
    そんな風に思いながらもその懸命な姿に目が離せなかった。
    発声練習はしばらくの間続き、誰かが吹いた笛の音が終わりを告げた。「休憩ね!」と女子の声がすると真剣な目つきだった他の部員達もホッとした表情を見せた。水筒を取り出したり隣の人と談笑を始めたりでさっきとは違う賑わいをみせる。カラ松も他の部員らと水筒を手に取り笑う。屈託のないその笑い顔は最近家の中ではみせない笑顔だった。
    「なんだよ。そんな顔出来んのかよ」
    思わず口から溢れた言葉にはっと手で口を抑える。そしてそのままそそくさと場を後にした。
    帰り道、夕焼けがおそ松の体を紅く染める。頬の赤みも夕焼けのせいなのか、それとも他のせいなのか。

    家に帰り弟達が何人か帰っているので夕飯を食べる。一松とカラ松が帰っていない。トド松によると一松は友達と食べて帰るので夕飯はいらないらしい。
    台所のテーブルを見るとカラ松の分だけ取り分けられたおかずにラップがかかっている。
    自分たちより小さめのハンバーグ。あいつあんなに声張ってたのにあれで足りるのかよ。
    そんな事を考えながら白飯をかっこんだ。


    次の日の放課後、おそ松は部活棟をそっと歩いていた。
    別に兄妹の応援をしたっていいよな。と誰に向けてかわからない言い訳をする。演劇部の部室は一階の階段横にあった。ドアのガラスから覗こうとしたが明らかに覗いているのがバレそうだ。慌てて靴を履き外に回ることにした。校舎の柵によじ登るとちょうど中が見える場所があったので腰掛ける。
    部員達はみな手に青色の冊子を手にしている。おそらく今回の台本なんだろう。奥の方にカラ松の姿が見えた。おそ松の心臓が跳ねる。
    カラ松は台本と周りを交互に見ながらじっと立っている。周りの人は時々体を動かしているのをみると、噂の木の役になっている最中らしい。窓辺では男女が向かい合わせで何か話していて、何となく二人が劇の主役なんどろうなと思う。
    場面が切り替わったようで窓際の二人がウロウロと動き出したせいでカラ松が見えない。
    おそ松はチッと舌打ちをして柵から飛び降りた。
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