チャーハン、ちゃーはんはじめてのお前のチャーハンは、しょっぱかった。
「塩より塩の味がするじゃん!」
「そんな事ない……うぇ、しょっぱ!マミーはいつもどのくらい塩を入れているんだ?」
でも美味かった。
十回目のお前のチャーハンは、べちょべちょだった。
「……まあ、食えるけどね」
「ううむ……、火加減なのか?油か?」
でも美味かった。
五十回目のお前のチャーハンは、具がなかった。
「炒め……ご飯?」
「仕方ないだろう?今月ピンチなんだ」
でも美味かった。
百回目のお前のチャーハンは、お手製チャーシューが入っていた。
「すっげー!チャーシューまで作ったのかよ!」
「ふふん、肉のスペシャリストと呼んでくれ!」
最高に美味かった。
千回目のお前のチャーハンは、塩味が薄かった。
「……なんか、味気なくねぇ?」
「そんな事ないぞ!お前、自分の腹見てみろ、健康のために塩分控えめだ」
でも美味かった。
二千回目のお前のチャーハンは、これでもかというぐらい野菜が入っていた。
「野菜炒めじゃん」
「……お互い長生きしたいじゃないか」
でも美味かった。
二千五百回はオレがはじめてチャーハンを作った。いただきますと小さな声が聞こえる。
しょっぱくてべちょべちょで大した具も入ってないチャーハン。後ろを向くと大惨事の台所の光景が広がっている。
「……なんか、美味くねえなあ、 ごめんな」
「何言ってるんだ。最高に美味いぞ」
ご自慢の眉毛にも白髪が混じってきた男はまた少し小さくなった気がする。
微笑む男の目尻の皺をゆっくりと撫でた。
「ありがとうな」