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    震と、無為さんのところの艮ちゃんのうちよそリク小説です、お待たせしました~
    友情出演で🎲がいます。

    震艮➕🎲「艮殿を知りませぬか!?」

    自身の屋敷で酒を呑みながら寛いでいた火雷。表の方からドタバタと喧しい足音が聞こえてくると思っていれば、飛び込んできたのは青ざめた顔で汗を垂らした震為雷だった。いつも涼しげな彼の切羽詰まった様子にやや面くらいながらも、手にしたお猪口の酒をぐいっと飲み干した彼は、「知るわけねぇだろ」と返した。その返事を聞いて、震は、あぁぁ……と、情けない声を上げながらその場によろよろとへたり込んだ。

    「本当に、知らぬのですか……?」
    「そもそも、俺はてめぇの嫁と話したことすらねぇよ」
    「ああ、そう、そうですなぁ……我輩、貴方には彼女を近づけないようにしていましたからなぁ……では、いったいどこへ……」

    聞き捨てならない言葉が含まれていたような気がしたが、火雷はそれを無視して「わかったなら早く帰れよ」と促す。しかし震もまたその言葉を無視し、しわしわにしょぼくれた様子でため息を吐きながら、当たり前のように火雷がつまみにしていた棒たらをむしり、齧り始める。

    「あぁ……艮殿……むぐっ……我輩を置いて、どこへ行かれたのか……むしゃっ……腹を空かしてなければ良いのですが……」
    「おい、俺のつまみ勝手に食うんじゃねぇよ」
    「はぁぁ……傷心の弟分に、茶か水の一杯も勧めてくださらぬのですなぁ、この男は……」
    「てめぇ、そのお綺麗な顔面に一発食らわせるぞ??」

    そんなやり取りがありつつも、帰ろうとしない震に火雷は仕方なく、聞きたくもないことを聞かねば成らなかった。

    「嫁に逃げられたのかよ」
    「………」

    どうやら図星らしく、震は棒たらを握り締めたまま膝を抱えて蹲ってしまう。落ち込んだ時の姿は昔とかわらねぇな、なんて思いつつ、火雷は水割り用に瓶に入れてきていた水を、瓶のまま震の方へ滑らせた。

    「何した?浮気か?」
    「するわけないでしょう、貴方じゃあるまいし」
    「何でいちいち喧嘩売ってくんだよ殺すぞ?じゃあ何して逃げたんだよ」

    青筋を立てつつ火雷が質問を続ける。震は瓶の水で棒たらを流し込むと、じっと残った水の水面を見つめながら口を開いた。

    「……艮殿に、気安く話しかけた輩がいたのです……我輩、大人気なく嫉妬してしまい、男に牽制をかけたうえで、屋敷で艮殿を暫し離さなかったのです……貴女は我輩の嫁、誰にも渡さない、渡したくない、と、抑えきれずに何度も彼女を抱き__」
    「その辺はいい、んで?」
    「……元々、束縛を嫌う方ですから……しつこいのは嫌い、と言われて、気づけば姿を消していて……」
    「お前、本命には重いよな」
    「本命なればこそです!真剣に愛しているからこそ想いが強くなってしまうのですよ!」

    熱弁を振るう震を冷めた目で見つめつつ、火雷は再び酒を口にする。
    自分の(癪ではあるが一応)弟分である震為雷と言う男は、かつて人間の女を恋人にし、モノノ怪のせいでそれを失ったことで暫し心身喪失状態であった。復帰してからも女の遺髪を身につけているという執着ぶりであったが、その彼が最近、同じ剣士である艮の者を娶ったのだ。自分の屋敷に来てくれる剣士がいる。とても可愛らしい子で、妹のようでついつい甘やかしてしまう……そんな話を何度か聞かされてはいたが、まさか嫁にするとは思わず、「夫婦となりました」と報告をしに来た時は流石の火雷も面食らった。しかし、まぁ、それからの震はなかなかに幸せそうで、気味の悪い張り付いたような笑顔よりも、今は心底幸せそうな笑顔を浮かべることが多くなったのは、艮のおかげなのだろう。火雷も遠目に見たことはあるが、白髪が陽に輝くなかなかの美人だった。が、話を聞いている限り、癖もある嫁だなとは思う。が、それでも震は、女を心から愛しているようだ。嫁にねだられてエゾシカを飼う事になった、と聞いた時は、こいつの師匠に相談しに行こうかと真剣に考えたが。
    今も、嫁の嫌がることをしてしまった、今頃どうしているのか、と、自身の行いを反省し、嫁の身ばかりを案じている。

    「我輩、離縁されてしまうのでしょうか……」
    「……んな事にはならねぇよ」
    「わからぬではないですか……」

    (ならねぇよ。あいつ、お前のこと心底好きだからよ)

    そこまでは言わなかった。癪だったし、どうせ本気で慰めなくとも、そのうちこの夫婦は元の鞘に戻っているだろうと思ったからだった。
    結局、うじうじと悩む震を追い出すことができたのは、それから数刻後の事だった。


    数日後。酒を買って帰ってくると、震と艮が揃って屋敷の中にいて火雷はずっこけそうになった。

    「家主がいねぇのに上がり込む馬鹿夫婦が……」
    「いやぁ、先日は大変ご迷惑をおかけいたしましたなぁ!この通り無事に愛妻が戻りましたので、ご報告とお礼を兼ねて酒とおつまみを持って参りました!」
    「猫ちゃん……」
    「んふふ、この子は鮭とば殿ですぞ、艮殿。あちらで寝ているのがえいひれ殿、あそこで顔を洗っているのがあたりめ殿ですなぁ」

    火雷の飼い猫を撫でる艮に、その様子をにこにこと愛おしそうに眺めながら飼い猫の名前を教える震。
    親密そうな夫婦の様子に火雷ははぁーと深いため息を吐き、「酒とつまみ置いてさっさと出ていけ」と睨むのだった。
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