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    dreamingMush

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    横さんと遊んだ時にやった、「一段落ずつ交代で小説を書いてく」遊びでできた小説です。ウスロナはいいぞ。横さんありがとうございました!
    お題「朝」
    先手▶まひゅ
    後手▶横さん

    空が白んできた。ロナルドはドラウスが焼けてしまわないよう、遮光カーテンを閉める。吸血鬼向けのホテルは、日を避ける設備があったり、夜〜昼にかけて泊まれるプランがあるから便利だ。
    「もう寝る?」
    「ああ、寝ようかな」
    シャワーを浴びたロナルドは、ソファに腰掛けた。

    ドラルクもそうだが、人間と吸血鬼の生活リズムは合わない。我々が活動を始めるこの時間、ロナルドを1人置いて眠ることを心優しいこの人は申し訳なく思うらしいが、俺からしてみればそんなことはない。
    普段は少し高い位置にある睫毛の本数を、誰にも邪魔されず、じっくりゆっくり数えることが許されるのだから。
    白いシーツに包まる彼の寝息が深くなるのを、そわそわと心待ちにする。

    「パパ、寝た……?」
    耳元でそう囁く、返答はなかった。もう眠りについたのだろう。ロナルドは口角をあげた。今だけはこの人は俺だけのものだと、そんな小さな、自分でも気づかないような独占欲を抱いて。ロナルドはドラウスが起きないよう、静かにその頬を啄んだ。

    1回。ちゅ、と音を立てて、離れて。
    その端正な顔に変化がないことを確かめてから、抑えきれなかった笑みが口の端から零れた。
    2回、3回。その瞳が開いてしまわないかと恐る恐る。でもこればっかりは止められないのだ。何度同じような朝を重ねようとも、いつだって瑞々しく心を満たしてくれる。

    ねぇ、パパ。ねぇ、ねぇ、起きないよな。いつも、頬へのキスでは目を覚まさないよな。
    「じゃあ、唇にち、ちゅーしたっていいのでは……?」
    ぽつり、と呟く。ドラウスの瞼が少し動いたような、動かなかったような。頭の中が、唇にキスしたいって気持ちでいっぱいになっていたロナルドが、それに気づくことは無かったが。真っ赤な顔で、ん、と唇を尖らせ、その距離を詰める。唇が触れる寸前、ロナルドは恥ずかしさのあまり瞼を伏せた。

    ふにと感触が伝わったのは唇の端。ほんの一瞬で離してしまったそこに、目測を誤ったのだと理解が追いついてしまえば勢いで顔を覆った。
    は、恥ずかしい……!誰も見ていないからと調子に乗ってしまったらしい。のたうち回る内心を沈めようとベッドの脇で膝を抱えた。

    ふ、ふ、と荒くなってしまった息を整える。俺、寝てるパパにまで弄ばれてる、と。別にそんなことは無いのだが。自己嫌悪を振り払うように、丸まった体を大きく仰け反らせる。ごん!と壁に頭をぶつけ、大きな音がした。
    「大丈夫か、ロナルド」
    思わず声をかけたであろうドラウスは、あっという顔をして目を逸らす。
    「い、つから起きてたんだよ」
    「い、まさっきだよ、ごんって音がしたから目が覚めて……」

    釈然としない。俺はこんなに振り回されているというのに!
    から回った自分の八つ当たりではあるのだが、打ち付けた後頭部をさすりながら、むむと柔く下唇を食む。
    どうにかこの男の調子を狂わせたい。そう思い立ってしまえば悪戯心がわいて治まらない。なにか、ひと泡吹かせられる方法は。

    ロナルドはえいやっとドラウスにタックルする。ドラウスはその力に流されるまま、ベッドに押し倒された。
    「ロナルド、なにを」
    ロナルドは、目を見開いて、今度は外さないぞとその唇に食らいついた。もう、こんなことだってしてやる、あんたもすこしはびっくりすればいいんだ、と舌をねじ込んだ。しかし、今までロナルドから能動的にディープなキスをしたことなんてない。ここからどうすればいいんだ?とロナルドは硬直した。

    いつもパパにされてる気持ちいいキス……どんなんだっけと思い出そうとするが、それは全くの逆効果であった。長い舌、ざらついた感触、殊更に冷たく感じる体温。その全てからもたらされる快感が、この瞬間の重なる唇とリンクする。
    昨晩の残り香にゾクリと背筋が震えるが、負けてなるものか。ロナルドは懸命に舌を動かし、はふはふとドラウスの口内を貪る。

    ドラウスの手が背中と後頭部にまわり、ぎゅうと抱きしめられる。もう、身体中余すところなく密着して、お互いの鼓動が感じられるほどだった。やがて、息が出来なくなったロナルドが口を離す。どうだ、俺だってやるんだぞ、とドラウスを見やると、その目は微笑ましそうに細められていた。
    「お手本をしてやるから、よぉく覚えなさい」
    ロナルドの息が整う前に、唇が奪われる。蹂躙、という言葉がふさわしい舌使い。舌で押し返そうとするささやかな抵抗すら許さない。ロナルドの体から力が抜けていった。

    容赦なく口の中を責め立てられ、すっかりとろとろになったロナルドはドラウスの胸板に倒れ伏す。
    荒い呼吸に混ざる唾液が彼の服を汚すのも仕方ないだろう。せめてものお返しだ……という意図があったわけではないが、また負けてしまったと内心悔し泣くロナルドに、気を回す余裕などなかった。
    大きく息をついたら、次いで眠気が襲ってきた。ええいもうこのまま寝てしまえ。さぞ得意気な顔をしているだろうドラウスを、まるで敷布団の如く扱う。ホテルの柔らかなシーツよりも、何倍も心地よく安心できるその体躯が愛おしく恨めしい。昇る朝日に背を向けて、ロナルドはゆっくりと瞳を閉じた。

    [完]
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