竹タカ「八左ヱ門が懸想していると三郎が言うんだ」
雷蔵にこそっと言われて勘右衛門は「は?」と言ったまま答える事が出来なかった。ぽかりと口をあけて雷蔵を見ることしかできない。
「え、雷蔵。もう一回言って?」
「竹谷八左ヱ門が誰かに恋をしているらしいんだ」
「え、誰に?てか、ハチが?」
「僕が聞きたいよ。三郎はハチを見ていればわかるって言って教えてくれないし」
はーっと溜息をつく雷蔵の横で、唖然としたまま勘右衛門は呆けてしまった。
八左ヱ門と恋はなんとなく結びつかない。委員会では頼れる委員長代理で後輩の面倒見もいい。しっかり者で、同級生からも教師陣からの信頼も厚い。気のいい男で、陽気な人柄だが、恋には疎かった。
言い寄られても気がつかないし、遠まわしに思いを告げられても気がつかない。
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