鳳凰于飛(冒頭) 傑物と評される曹操に仕えるべく、荀攸は荀彧や郭嘉らと共に許昌近くの街道で曹操の到着を待っていた。
人を集めるのならば、許昌に立ち寄るに違いない。軍師らの読みは的中し、やがて夏侯惇、夏侯淵を伴った曹操が姿を現した。
遠目にもわかる威風堂々とした佇まいは、洛陽で見かけた時よりも凄みを増しているようだった。
「――いらっしゃいましたね」
「ああ。では、行こうか」
荀彧、郭嘉が先んじる一方、荀攸は背後でぶつぶつと独り言を呟いている満寵を振り返る。満寵は「ここをこうして、こうすればもっと威力が……」とひたすらに手を動かしていた。
「満寵殿。曹操殿が到着しました」
荀攸が声をかけても、満寵は空返事すら返さない。目の前の自作の兵器以外に興味はないといわんばかりの彼に、荀攸は小さく嘆息する。こうなると何を言っても満寵の耳には届かないことは、短い付き合いのなかで嫌と言うほど思い知っていた。
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