書きたいとこだけ そのきゅう 月に攫われてしまいそうだと、そう思った。
いつも和服を着ているわけじゃないなんて言っていたけれど、スオ~は和服がめちゃくちゃ似合う。もちろんおれたちKnightsが着ている騎士風の衣装も似合うけど。
和服のスオ~は凛々しくて格好いい朱桜司ではなく、淑やかな色気を放った朱桜司に見えるとおれは思う。窓辺でぼんやりと月を見上げていたから余計だ。ただそれだけのことなのに、ひとつの完成された絵のように見える。綺麗で美しい、おれの大好きな人。
でもさ、そっちの月もいいんだけど、おれだって一応『月』だって知ってるか? ていうかおれがお風呂から上がって部屋に戻ってきたことに気付いてないっぽい? なんでそんなに月ばっか見てるんだよ。おれだって見てほしいんだけど?
「スオ~」
「あ、おかえりなさいレオさん」
声をかけると儚い雰囲気が一変して、視線がおれへと注がれる。そのちょっとした態度でほのかな優越感が生まれるんだから、おれも相当やばいかもしれない。
見たか空に浮かんだ月。おまえよりおれの声に耳を傾けるんだぞこいつは。なんたっておれのことが好きだからな! おれのほうがもっと好きだけど!
「この浴衣? みたいなやつの着方わかんない! 帯結んで!」
「えぇ? まったくあなたは……修学旅行の時はどうされていたのですか」
「クロにしてもらった記憶がうっすらある!」
肩から引っかけただけの浴衣姿のおれを見て、近付いてきてくれたスオ~に帯を渡す。後はおれがばんざいしておけば着付けてくれるだろう。だって優しいもんな! 呆れている雰囲気は出しているけれど笑顔だから、きっとこいつも楽しいんだろう。
だって久しぶりの二人きりだから、嬉しくないわけないもんな?
「なぁスオ~」
「はい?」
「このあとどうせぐちゃぐちゃになるからそんなきっちり締めなくていいぞ?」
後ろで帯の形を綺麗に整えていたスオ~にそう告げると勢いよく腰を叩かれた。真実を言ったのにひどくない? そういうところにこだわったりするよなおまえ。そういうところも嫌いじゃないけど。
乱暴な態度を取られたところで愛しいことに変わりはない。いつもおれを引っ張ってくれる優しい手をおれから引いて、最初っから深いキスをした。
「……ッレオさん、窓、閉めないと……」
「いいよ。見せつけてやろう」
真っ白なシーツに散らばった赤髪に見惚れながら、浴衣の合わせに手を差し入れた。びく、と震えた身体が愛しくて、もっともっと暴いてやりたくなる。
これはだめ。おれのだから。お月様にもあげないよ。