待ってるから、だから、 おれには、コイビトがいる。綺麗で可愛くて大好きな子。ずっと一緒にいたいし大事にしたかったから、同じユニットメンバーとして一緒にいられたらそれでいいと思っていた。でもあの雨の日、ずぶ濡れで泣きながらおれを好きだって言ってくれたその子を抱きしめて、おれも同じ気持ちだって伝えてから数日。
あの子との距離感が全然わからない。前はどんな会話をしてたんだっけ。ハグだって普通にしていたはずなのに、全然出来ない。なんか緊張するっていうか、恥ずかしいっていうか、そんな感じ。これからこんな調子で大丈夫なのかなとか思うけど、そのうち慣れるはずだと誤魔化しながら日々を過ごす。
いつか、いつかあの可愛い唇におれのをくっつけたりなんかして。そんな妄想をしていたのに。
「…………」
なにあれ。なにあれ!
あの子の手にはおれを模したおまんじゅう型のぬいぐるみ。髪色みたいに真っ赤になったあの子が、おれのおまんじゅうへと口付ける。ちゅって短かったり、ちゅーって長かったり。どこか難しい顔をして、それでもおまんじゅうへのキスはやめない。
どうしてそんな事をしてるんだって、聞かなくてもわかる。おれと、コイビトであるホンモノのおれと、そうしたいって、ことだよな? おれと、ちゅーしたいって、思ってくれてるって、そう思っていいのかな?
「……スオ〜」
「!!」
勇気ひとつなかったおれの背中を思いっきり押したのは、コイビトのスオ〜自身であって。おれは同じように赤くなってるであろう顔のまま、可愛いこの子に近付いた。
「おれからも、していい?」
さっきより更に真っ赤になったスオ〜は視線を少しだけ彷徨わせたのち小さく頷いてくれて。ドキドキとうるさい心を置いてけぼりに、おれはスオ〜へ手を伸ばした。
小さな可愛い唇まで、残りあと数センチ。