乱交しないと出られない部屋(仮)ここは邪神の遊戯場。外なる神より飛来せし結晶に秘められた神秘。ヒトには過ぎたる遺産、宇宙からの色に彩られ、矮小な人類に様々な怪を齎し翻弄する。
暗闇から笑う声がする。男のような女のような子供のような老人のような。捉えどころのない 声はまるで千の貌を持っているかのようで。
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ぱちり
1番に目を覚ましたのは誰だったのか。珍しく第13期研修チームの全セクターがパトロールの職務をこなして居たことは覚えているが、気付いたらこの部屋に居た。扉や窓のない四角い白い部屋にキングサイズのベッドとチェストと丸机がそれぞれ1つずつ置いてある。上を見上げると照明がいくつも付けられており、それを操作するためのリモコンと何かの紙が机の上に置いてあるのが見えた。
混乱して戸惑いを浮かべるウィルとオスカー、理解不能な状況に苛立ちを浮かべるレン。苛立ちながらも状況を把握しようと務めるフェイスとアッシュ、珍しい状況に少し楽しげなビリーの3人が1番始めに辺りを見渡して何を言うでもなくそれぞれが別々の物を調べ始める。
「ウーン、普通のベッドだネ?刃物とか爆弾とかも仕込まれてないみたい。何のためにあるんだろ?」
「照明のリモコンと…これは手紙?親愛なる人類へ…って書いてあるけど」
「じゃあ開けてみようよ!あ、でも剃刀とかには気をつけてね」
「誰の仕業かしらねぇがこんなところに閉じ込めやがって、壊せば済む話だ、ろっ!」
扉を探す素振りを見せていたアッシュがサブスタンスを発動して重力により威力を増した拳を壁に叩きつければ、辺りに響くような音を立ててサブスタンスの力をが吸収されるのを感じて盛大に顔を顰めた。
「…どうしたアッシュ」
「チッ、どうしたもこうしたも上手くサブスタンスが機能しねぇ」
ガンと力任せに蹴りを入れるもビクともしない壁にイライラを募らせるアッシュを見て、ウィルが地面に手を当ててサブスタンスを発動する。もしここが地面であれば植物の蔓で突き破ることも可能かもしれない、けれど、何一つ手応えがなく立ち上がって首を振った。
「ダメだ、近くに植物の反応を感じない……ここに来る前は街路樹とかがあったんだけどな…」
「……場所が移動してるってことか」
「どうだろ、アッシュさんが言うにはサブスタンスが機能してないみたいなんだけど、レンはどう?力使える?」
「そうだな……」
レンがすいと手を動かせば、粉雪のような雪の結晶が空間にぱらぱらと散る。
「……確かに…思う通りにならない…」
「はぁ?何これ…」
「あちゃ〜…思ったよりヤバい感じ?」
手紙を開けて中身を取り出して読んだフェイスが思い切り不機嫌な声で内容を睨みつけ、ビリーの口端も少し引きつっている。
「何が書いてあったんですか…?」
アッシュと同じように壁を壊そうとしていたオスカーが傍に近寄ると、フェイスが嫌そうに手紙を摘んでひらひらと振る。
「読んでみなよ」
「ええと…」
フェイスから手渡された手紙に書かれた文字を追いかけながらオスカーが読み上げる。
「親愛なる人類へ、この部屋は手紙の指示を実行しない限り外に出ることが出来ない部屋だ。どんな力を使おうとも指示に従わぬ限り出れん。タイマーが開始して24時間以内に従うことが出来なければ部屋の中に致死性の高い毒が流し込まれるです。現れる指示は絶対、変更は出来ぬ。諸君らの健闘を祈る。詳細は2枚目をご覧下さい。指示を行うための道具は用意しております。必要なものがあれば申し付け下さいませ。指示に関係ないものは現れませんね。」
文法の違いや微妙なニュアンスでかなり読みづらい文章を辿りながら読み上げて、2枚目を捲り、見出しのように大きく書かれた文字列を読み上げて、最後の言葉を読みあげようとしたオスカーの唇がぴたりと停止する。
A room your can't get out of without sex.
「オスカーパイセンにはちょっと刺激が強いかもネ。代わりにオイラが説明すると〜、この部屋からの脱出条件はずばりセックスをすること。1人必ず1度はトップかボトムのどちらかの役をする、必ず2人以上の相手と触れ合うこと。セックスの条件満たすのは中に入れた、もしくは
入った状態で射精すること。だよね、DJ」
「よく平然と言えるよね…。女の子が居るならまだしも男ばっかじゃん、ほんと無理なんだけど…」
「ンだよそれ!巫山戯てんのか!?」
「…、他の脱出方法を探そう」
「う…でも壁も床も天井も壊せないしどうやって…」
「こういう時は、元凶を引き起こすサブスタンスが近くにあるはずだ、と、ヴィクターが言っていた。…中にあるかまではわからないが…」
「…そっか……」
明らかに戸惑い不安そうなウィルの声に顔を上げたレンが下からその顔を覗き込む。
「平気か?」
「えっ、ああ。心配かけてごめんなレン」
「別に…」
ガションと突然機械の音が響き壁のち一部が開き、その中に電光掲示板が現れる。
24時間のカウントを告げるタイマーのパネルとと、この場にいる全員の名前とその下に縦に2つ0が並ぶ小さなパネル。ゲームが開始した合図だった。
どうにか知恵を絞って考えようとしても抜け出すためのいい案も思い浮かばない。この状況を作り出したサブスタンスが見つかる気配も無く、荒唐無稽な条件を満たさなければ出ることが出来ないのだということが嫌という程理解出来てしまう。沈黙の間にもタイマーは刻一刻と時間を減らしていた。
「ンー、俺っちは別にエッチしても良いけど、みんなはどうする?」
考える素振りを見せていたビリーが指をぴっと伸ばして全員の姿を見渡す。ゴーグルをしているため表情は見えないが、その言葉にフェイスは眉を寄せる。潔癖症のビリーは肌の触れ合いが得意ではないはずだ。家で寛いで風呂に入って体を清めている訳でもなくパトロール中で外気に晒されていて余計に汚れていると感じるだろうに。
「……本気で言ってる?」
「えー?DJってばやっさし〜!」
「優しいとかそういう話じゃないでしょ、大丈夫なの?」
「モチロン!俺っちDJとなら出来るカモ〜!DJって綺麗だしネ」
「はぁ?何それ」
「汚くないから大丈夫ってコト?」
「なんで疑問系なの…」
フェイスの清潔さに顔面の美しさ、内面も好ましいと思っているビリーとしてはイーストセクターの3人や父親と近しい場所に位置する存在だ。だから触れることくらいなら本当に大丈夫なのだということは言わないまま、フェイスの言葉を躱しながらビリーはまだ渋い顔をしているフェイスの肩に手を乗せた。
「まーまー、物は試しって言うし、どこまでが接触の範囲内になるのかっていうのも気になるところだしネ。DJって男はダメなんだっけ?アカデミー時代に可愛い男の子と一緒に居たことあったよね?」
「………確かにボトムの子になら迫られたことはあるかな、丁重にお断りしたけど。…女の子なら恋愛感情無くても抱けるけど男はどうだろ」
「今試してみたらいいんじゃナイ?」
「…ビリーが女役?」
「どっちでも!DJが好きな方でイイヨ」
「好きな方って…」
そもそもビリーとセックスをすることが有り得ない。どうせしないといけないのであればフェイスには1人にしか体を許すつもりはない。だからするならトップ側だ。それにと一瞬視線を動かせば、唇を引き結んだ厳しい表情で立ち尽くすオスカーの姿が目に入る。そんなに嫌なら奪いに来れば良いのにと思いつつ、2人以上の接触が必要だということを思い出して、ビリーの肩に触れる。
「まあいいや、とりあえず接触がどれくらいからカウントされるのかだよね」
「アイアイサー!」
敬礼しながら返事をしたビリーがゴーグルの中の瞳を閉じるのを確認して顔を傾けて、もちりとした柔らかな頬にそっと唇を落とす。音も出ないほんの少しの接触だけですっと顔をどければ、それだけ?というビリーの視線とかち合った。それを無視してカウンターのパネルへ目をやれば、ビリーとフェイスの名前の列の下の段は0から1に変化していた。
「これで良いんだ?」
「……茶番は終わったか」
ビリーの頬にフェイスの唇が触れた瞬間、思わず飛び出そうと足を踏み出したオスカーの肩を押すようにして留めたアッシュはカウントが動いたことを確認してすぐに二人の傍に近づいてビリーの体をフェイスから引き剥がすように自らの体へと引き寄せる。わ、と驚いた声でなすがままに腕の中に収まったビリーの顎を掴み、首を捻ると噛み付くように唇を押し付ける。
「んぅ、む、んー!」
抗議する声をあげるビリーを無視して口内を舐めて舌同士を絡める。唾液が溢れそうになった所で唇を離せば、ビリーがごくんとそれを飲みこんだ。
「は、」
息を付いたビリーが笑みを浮かべるのを見てアッシュは眉を寄せる。
「ダーリンってば嫉妬?痛っ!?」
ばちんと額を指で弾かれてビリーが悲鳴を上げる。確かにビリーにとってはちょっとした茶番だ。いくら仲が良いとはいえ絶対的な必要性に迫られなければベスティと体の関係を持つなんてごめんだし、ここに居る全員の秘密を知るビリーからすれば、提示された脱出の条件は羞恥を覚えることを除けば比較的達成が難しいものでは無いと知っているからだ。
「Boo!でも恋人以外とも触りあったりしないと行けないんだからただの茶番じゃないヨ!DJが大丈夫って言うのはホントだし」
「え、何、ビリーとアッシュって付き合ってるの?」
言い争いながらも触れ合えそうなほどに距離の近い二人に横にいたフェイスが驚いた声をあげる。
「ンフフ〜どうでしょー?」
「だからどうした」
意味ありげに笑うビリーと鼻を鳴らして答えたアッシュの言葉はほぼそれを正解だと言っているようなものだ。
「こんな状況だから言っちゃうけど、DJビームスとオスカーパイセンも付き合ってるデショ?」
「えっ…」
「…はぁ……仕事減らしてるとはいえ情報屋は情報屋か」
諦めたようにため息を付いたフェイスは、状況を把握出来ず困惑するオスカーの元へ近づいてぺちりとその頬を軽く叩く。
「ちょっと、しっかりしなよ」
「ふぇ、フェイスさ…その…いいんですか…その…」
「ブラッドもウエストのみんなも知ってるんだし今更でしょ」
付き合っていることをブラッドに報告することをかなり嫌がっていたフェイスだからきっと他人に関係を知られることを厭うだろうと出るまでもやもやとする心を持て余しながら状況を静観していたが、やっとフェイスからお許しが出たと思うや否や、フェイスの腰を引き寄せて唇を触れ合わせた。
「ん」
ビリーの頬に触れた部分を全て覆うように唇を食みリップノイズを立てて離す。嫉妬を如実に表すようなキスにフェイスが機嫌よく小さく笑う。
そんな二組を見ていよいよ混乱を極めているのが取り残されているレンとウィルだった。
いきなり性行為を強要され、同じ立場であるルーキーのビリーとフェイスがセックスをする前提で会話を初めたと思えば、アッシュとビリーが、フェイスとオスカーが付き合っているという事実が発覚した。途中からレンの思考は完全に停止し、ウィルは顔を赤くしたり青くしたりと大忙しだ。
「レンレンとウィルソン氏も付き合ってるよネ?レンレンはあんまり変わんなかったけど、ウィルソン氏とアキラっちは分かりやすいよネ〜」
「へぇ、確かにおかしいなとは思ってたけど付き合ってたなんてね」
「え…!」
「な…」
既に2人の雰囲気に入り、レンとウィルを置いていったまま始まりそうだったのに突然自分たちに矛先が向いて2人して絶句する。そんなに分かりやすかったのかとじわじわと頬を染めたウィルがううと小さく唸り完全に俯いたのを見てレンがビリー達を睨みつけた。
「お前たち、デリカシーがないのか」
「ちょっと、ビリーと一緒にしないでよ。状況が状況だからそうも言ってられないけど」
「DJ酷い!アッシュパイセンもなんか言って!」
「あると思ってたのかよ」
「ひどい!」
さめざめと泣き真似をしたビリーの頭をアッシュが軽く叩くと、Booと不満を漏らしながらも顔を上げてレンとウィルの方を見る。
「二人ってどこまで進んでる?稲妻ボーイとかなら17歳だから相手によっては未成年淫行だケド二人はそうじゃないデショ?でもでも、僕ちんの勘では健全なお付き合いしるんじゃないカナーって」
びくりとウィルの肩が大袈裟に竦められるのを見てフェイスとビリーとアッシュがそれぞれ気の毒そうな視線を向ける。初体験が他人の目の
前だなんてどう考えても不憫だ。何か言いたげに口を開こうとして閉じたレンの服の裾をウィルがくっと引く。庇うように前に出ていたレンが振り返ると唇に指を当てながら俯いているウィルの姿が目に入り、驚きと心配に目がほんの少し開かれる。
「ウィル」
「お、俺は…その、えっと…あの…ご、ごめんレン…!」
さ迷わせた瞳をぎゅっと閉じて開き、レンの腕を引きその勢いのままレンの唇に自らのそれをぶつけて離す。突然のキスにきょとりと呆けたレンがぱちぱちと瞬きすれば、真っ赤な顔をあげたウィルが視線をレンに合わせる。
「シよう、レン」
「は?」
さっきまでもじもじしていたのはなんだったのか覚悟を決めた表情にレンが怪訝な顔を向けた後で、はたと気付く。ウィルは基本真面目で優等生的なのに妙に頑固で1つ決めたらそこに向かって突っ走ることがあると言うことに。レンやアキラが何かを言ったとこでウィルを納得させられたことはあまりなかった。そして今ここで性行為なんてしなくても出られるという確証はなく、かたかたと緊張に震えるウィルの覚悟をレンは袖に出来なかった。
「…………………わかった…」
全員が行為に同意してしまえば後は早い。同じ場所、見える位置で乱交が行われるということに気まずさや抵抗感はそれぞれあれど、今はそんなことを言ってる場合では無いのだから。
遠く離れた場所に居たレンとウィルがベッドの近くにやってくると、ビリーがチェストの引き出しを引っ張った。
「ひゅ〜!」
中には大人の玩具と呼ばれるものが沢山入っていて、その中からゴムと潤滑剤を取り出して上に乗せる。
「ちゃんと3組分はあるみたいだネ。定番のからSM用品まで揃ってる」
「完全にヤリ部屋じゃん」
「……あ!」
ごそごそとチェストの中を見ていたビリーが小瓶を取り出した。
「何それ」
青色のプラスチック容器の中で揺れる液体の量は少ない。巻きついたラベルを読む。
「んっと、幸福薬…?…あ、でもオキシトシンと精製水って書いてる」
「オキシトシン……って確かホルモンだったっけ
?んー…彼女が何か言ってたな…愛情ホルモンを増やして痛みを緩和したり、緊張感や不安感を減らしてくれる…だったかな」
「つまり媚薬ってことだネ!さすがにこんな状況だし使ってみる?」
「あー…その方がいいかも」
ビリーの手から小瓶を受け取ったフェイがキャップを開くと噴霧口が現れる。
「オスカー、口開けて」
「は、はい」
後ろに控えていたオスカー呼んで口を開かせてワンプッシュだけ液体を噴霧する。口の中に広がる微妙な苦味をこくりと飲み込むのを確認してフェイスも口の中に薬をかけてビリーに返す。
「ん、苦」
「じゃあオイラも…」
「おい」
ベッドに我が物顔で腰掛けていたアッシュの声にビリーが振り返る。
「ダメ?」
「決まってんだろ」
「はーい、じゃあウィルソン氏どーぞ」
「えっ、わっ…」
生真面目でストイックなアッシュは基本的に薬を使うことを嫌う。仕方ないなぁと肩をすくめて小瓶をウィルの方へ放り投げる。レンに渡せば使うことを躊躇うだろうから。案の定瓶をキャッチしたウィルはレンが止める間もなくぷしゅりと口の中に薬を散布した。
「わ、ほんとに苦い…」
「あ…」
「レンはどうする?」
「………はぁ…貸せ」
ウィル1人だけに媚薬を飲ませる訳にはいかないと薬を使ったレンは再びビリーへと瓶を投げて返す。そのままチェストに薬を戻して閉じたビリーはローションとゴムを手に取ってアッシュの元まで戻っていく。
「初々しいカップルの二人のためにも俺っち達がお手本みせないとネ、DJ」
「はいはい」
同じようにものを手に取りオスカーを引き連れてベッドにフェイスが移動する。そこにウィルが近づいてくるのをレンが追いかけてキングサイズのベッドの傍に3組のカップルが集まった。
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ここからスケベのターン。