僕、ウツボの人魚なので「私が生まれた国では、今日は七夕という日なんですよ」
「タナバタ? なんですか、それは」
「あるところに織姫と彦星という夫婦がいたんですけど、お仕事しないでずっといちゃいちゃしていたら、織姫のお父さんに怒られちゃったんです」
「それは妥当ではありませんか? 夫婦といえど、けじめはつけるべきです」
「先輩の言う通りなんですけど、最後まで聞いてください。結局2人は引き裂かれて、その間に大きな天の川が作られたんです。橋がないから会いに行けないんですけど、七夕の日だけは会えるんですよ」
「なぜそのタナバタとやらの日だけなのですか」
「織姫があまりにも悲しむので、お父さんが七夕の日だけ会うことを許したんですよ。諸説ありますけど、一般的なのが今の話ですね」
「僕にはさっぱり理解できませんね。仕事をサボったから愛しの妻と離れることになるなんて、甲斐性なさすぎませんか?」
「それほど一緒にいたかったってことですよ。ロマンチックですよね。もし、私達が織姫と彦星なら、先輩はどうしますか?」
「愚問ですね。お忘れですか、僕は人魚です。毎日貴方の元へと通います。なんせ、僕はウツボの人魚ですから。通うのは専門特許です」
「……ジェイド先輩って、本当にずるい。好き」