雑渡さんからの贈り物贈り物をしたことがある。
高価な口紅だったと思う。
彼女はそれを付けて他の男に口付けをした。
背が低く平凡な顔立ちの、育ちの良さそうな、地味な男だった。
あの時感じた憎悪、失望、嫌悪、そして妬みは、忘れることなど出来るわけもなく。
その日から、彼女に物を贈ることはない。
「浮気を許しているつもりは無いんだけどね。そう見える?」
🌸の着物を開けさせながら、雑渡は言う。
着物でかろうじて隠れるあたりの、🌸の胸元には、どこの誰かわからない男の残した口付けの跡が赤く残っていた。
それを隠そうともしない🌸に、苛立ちが募る。
「まさか。あなたが私を許さないと知っているから、こうやって他の殿方にも足を開くのよ。あなた、物凄く嫌がるでしょう?」
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