剣道部の留三郎くん今日は道場で練習試合が行われていた。僕は委員会の活動でたまたま道場の前を通った。激しい気迫が渡り廊下の外まで溢れてくる。入り口では何人かの女の子達が試合を見ていた。その間から中を覗くと、ちょうど留三郎が試合を始めたところだった。激しい打ち合いは長くは続かず、勝敗はすぐに決まった。留三郎の勝ちだった。礼をして、留三郎は面を脱ぐ。留三郎の顔が見えた瞬間、小さな黄色悲鳴が上がった。
「食満先輩ってかっこいいよね」
「ねぇ〜噂によると料理とかも上手らしいよ」
「あと優しいって同じ委員会の子が言ってた!」
確かに留三郎はかっこいいし、料理もうまい。それにとっても優しくていつだって僕に元気をくれる。けどそんな姿を僕以外が知っているのは少しだけ面白くない。モヤモヤした気持ちを抱えたまま委員会に戻ろうとしたときだった。
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