青天に紅潮 折からの長雨がようやく止み、雲ひとつない青空が広がっている。戸を開けば心地よい風が抜けてゆき、閉めきってよどんだ空気もさらっていってくれるようだった。
やるべきことはいくらでもある、次にいつ晴れるかわからないのだから、この貴重な日を無駄にするわけにはいかない。そんなわけで、長屋の住人たちが忙しく働きまわる間を、同じようにちょろちょろと動きまわる影がひとつ。
「土井先生、洗濯はぼくがやっておきますから。先生は子守り、お願いしまぁす!」
「きり丸、お前は一体いくつかけもちしてるんだ」
「どうせうちのこともやるんだから、ついでに儲かるならいいじゃないですかぁ」
「そういう問題じゃない!」
背中に乳飲み子を背負い、どう見繕っても二人分ではすまない洗濯物を抱えながら、きり丸の目は銭の形のまま戻ることはなかった。
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