太陽のようなお前に許しを神の零落
ノボリは地下王国バトルサブウェイに君臨する王の片割れ
鬼としてその施設の秩序を保ち、弟のことを信頼し、永きに渡って運行し続けていた
“ヒスイ”の夢を双子そろって見た後、クダリはまるで人間のような感情を良く見せるようになった
「あの夢みたいにノボリがいなくなっちゃうかもって、怖いんだ」
「夢は夢でございます。わたくしからすれば、クダリがまるで人間のようにふるまうことこそ恐ろしい。お前、今ならトレインに轢かれたならば死ぬのでは?」
「死ぬワケない。ノボリはボクを殺せない」
「そうでしょうとも」
しかしクダリは腹が減っただの、疲れただの、生理現象を訴える
ノボリはあいかわらず地下世界から発生した機構であるのでそのような人間的なことはない
しかし、片割れの零落には、閉口
「クダリ。早く元に戻りなさい。わたくしはお前が人間になろうとしているようにしか見えません。万が一、億が一にでも零落したお前が人間の様に怪我をしたり、儚くなったりしたならば、わたくしも後を追いますよ」
「大丈夫。ちょっと体験してみたかっただけ」
↓
クダリが元通りになったとたん、ノボリは酷くノドの乾きを覚える
翌日にはすさまじい飢餓感
ちょっとさわっただけで“肉体”が損傷し、治せたがあの程度で傷つくか?
↓
「クダリ!」
「あ、ノボリ。どうかな?」
「お前の“遊び”のせいで体がおかしくなったのになんてノンキな!」
「“遊び”じゃないさ。
だって、零落したノボリなら、ボクがきっちり支配できる!」
一気に“拡大”したクダリがノボリをのみこみ、大事に腹の中にしまいこむ
そうして“出力”したノボリとクダリ……人間のようにふるまう仲良し双子
実態は、重なって眠る神がほんの一部を夢のように発現させ、シミュレーションのように“出力”しているだけにすぎない
“神”だったノボリとクダリはいなくなったように見えるが、そうではない