エルスさん 「旅」 ガラの悪い奴ばかりだ。この町に入ってから、スリかさもなくば暴漢か、そんな奴にばかり出くわす。金はくれてやってもいいが、この形見だけは渡してなるものか。
胸元のポケットを触り、形見であるブローチが入っていることを確かめる。首から下げられるように皮紐を通してあったが、町に入ってすぐにポケットに仕舞った。
向かいからまた数人、ゴロツキが群れて歩いてきた。視線が殺気立っている。ここまでに伸した、どいつかの仲間なのかもしれない。随分仲間思いなこった、と考えている間に、全員が地面に這いつくばっていた。
「わぁ……!!!」
気配を感じなかったのに、背後で子どもの声が上がり、思わず勢いよく振り返る。
「お前……!!まだついてきてやがったのか……!!」
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