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    poppokyo

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    POIPOI 17

    poppokyo

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    カカシがオビトへの愛を秘める話

    飴玉 カカシが中忍になって幾ばくか。その日はミナトが里外任務の不在日で、医療忍者のリンは病院勤務の日だった。珍しく、オビトとツーマンセル任務を行う日。それなのに、オビトは変わらず遅刻してきた。
    「ギリか!?」
    「とっくにアウトだよ!バカオビト!」
     一人、集合場所で待っていたカカシは組んでいた腕を解き、腰に手を当て道の向こうから走ってくるオビトを見据えた。
    「わ、わりぃ…今日は道の途中で困ってるおばあさん見つけちまって…」
    「また?その遅刻理由、何回目?」
     本当に何回目…いや、何十回…いや、何百回目だろう。
    「嘘つくな」
    「嘘じゃねーよ!」
    「ホントに反省してる?」
    「だから謝ってんだろ!」
     呆れるカカシに向かって、オビトは「だって無視するワケにはいかねーし…」と唇を尖らせた。
    「ハァ…もういいよ。だいたいお前ねぇ、今何時だと思ってる?」
    「うっ…すまねぇって……でもよォ、行く先々でおばあさんに会っちまうんだもん」
    「だから、何その理由?意味わかんないだけど。言い訳しないでくんない?てゆーか忍なら、ルールを守るのは常識でしょーよ!これオレ前にも言ったよな?あの時もお前、集合時間すっぽかして…」
    「あーもー!うるせー!それより聞け!今日はなぁ!お礼にいいもんもらったんだ!」
     長くなりそうなカカシの御小言を遮り、「見ろよ!」と開いたオビトの手のひらには、飴の入った包みがころんと転がっていた。
    「…?ただの飴じゃない」
    「ちげーよ!よく見ろ!ほらここ!」
     ずいっと差し出され、カカシはオビトの手のひらのそれを見つめた。よく見るとそこには『忍法!味変化の飴!』と書かれていた。
    「何これ?」
    「え!?お前これ知らねーの!?」
    「知らないよ。普段飴なんて食べないし」
    「最近出た夏限定のシリーズなんだぜ?」
     オビトがにっと笑う。カカシは「ふーん」と興味なさげにその飴を摘んだ。包装記載の説明書きを目に通す。
    「へぇ…陽遁にちなんで味が五種類あるんだ」
    「そうだ!その名の通り、舐めてると味が変わるんだ!火遁のイチゴに風遁のメロン、雷遁のレモンに土遁のコーラ!んでもって水遁のブルーハワイ!」
    「なんかかき氷のシロップみたいだな」
    「そうそれ!モチーフはかき氷で、普段はミルク味の飴なの」
     そしてオビトは飴の包装を破き、乳白色の飴玉を取り出した。
    「パッと見はいつものと変わんねーんだけど、舐めてると味が変わるんだ」
     気づけばカカシは口布を下ろされ、口にその飴を突っ込まれていた。
    「んぐ!?」
    「食ったことねーならオメーにやる。待たせた詫びだ」
    「ちょっと!オレ甘いの苦手なのに…」
    「あ。そーいやそうだったっけ…」
     わりぃ、と再びオビトが謝る。カカシのこめかみにピキッと青筋が立った。そんなカカシから逃げるように、オビトは数歩後退った。
    「ま、まあ落ち着けって…自分が得意なチャクラ属性にあった味に当たると、その日一日ラッキーらしいぜ!」
     雷遁に当たるといいな!とオビトは背を向け、ぴゅうと走り出した。変わりゆく味のそれを口の中で転がしながら、カカシは腹を立てて追い駆けた。

     ◇

     五影会談に向かう道中。笠越しに、店頭に陳列する飴袋を見つけたカカシは、そんな過去に記憶を飛ばしていた。
    「ハァ…」
     今思えば恥ずかしいくらい、昔の自分はバカだった。でもそれは今でもきっと、お互いに言えることで。
    「おい。どうした?」
     背後から声がかかった。あの頃と同じツンツンとした、けれどあの頃と違う、白髪の彼の姿。その男への感情は形を変えて、今のカカシを苦しめていた。
    「いや…懐かしいものを見つけてさ」
     水と油だった二人の関係は、昔と比べずいぶんと変わってしまった。あんなに火影になりたいと言っていたオビトが、今や火影となったカカシの補佐に徹している。
     外を歩く時は暗部の仮面を外すことなく。表沙汰にできない任務を自ら買って出ては、錆の匂いと共に戻ってくる。
     それは本当に、どうしようもないことで。いくらカカシが彼の『火影姿を見たい』と願っても、絶対に叶わない。それがカカシの夢で、今の現実だった。
    「ねぇ。あの飴、覚えてる?」
    「ん…?ああ、あれか…」
     仮面から覗けた目が一瞬儚く、懐かしげに細まる。そんな一挙一動にさえ、カカシの胸は締め付けられるというのに、オビトはそれ以上、何も言ってくれなかった。
    「……あれ、食べたい。買ってきてくんない?」
     だから、カカシはそう言った。
    「は…?お前、甘い物苦手だろう?」
    「いいから。火影命令」
     財布から一枚札取り出し、押し付ける。オビトは首を傾げながら、困惑した手でその金を受け取り、くるりと背を向けた。
    「忙し過ぎておかしくなったか?」
     釣り銭と共に渡された飴袋を、早々に開けたカカシを見たオビトが、眉間に皺を寄せた。カカシは「酷いなぁ」と袋を漁り、包みを一つ拾い上げた。ピリッと包装を破く。差し出された飴玉を前にして、オビトはまた首を傾けた。
    「なんだこれは?」
    「何って…お使いのお礼だよ」
    「いらん」
    「えー、昔はよく食べてたじゃない」
    「砂利じゃないんだ。お前が食べればいいだろう。それにオレは別に、食べなくても…」
    「はいはい。じゃあオレも食べるから。お前も食べなさい。ほら!」
    「ンぐ…」
     仮面を押し上げ、傷の残る口に突っ込む。あの日の意趣返しができたようで、カカシの気分は少し浮上した。そして宣言通り、飴袋からもう一つ取り出し、自身も一つ口に含んだ。
     相変わらず甘い物は得意じゃない。けれど、食べられないことはなかった。
    「ああ…またイチゴ味だ」
     そう呟いたカカシに、オビトは静かに「こっちを食べればよかったな」とこぼした。
    「…オレのはレモン味だ」
    「そう。じゃあ、交換する?」
     口布をずらして、舌に乗せた飴玉を見せると、オビトは「するかバカ」と視線を反らした。カカシは笑う。
    「交換したら今日の会談、成功するかもしれないよ?」
    「そんなことをせずともお前は成功させるだろ……五代目じゃあるまいし。火影とあろう者が、軽々しく運頼みなんてするもんじゃない」
     信頼ありきのお叱り付きで返されてしまったことに、カカシは「厳しいなぁ」と眉尻を下ろした。
    「でもさ…ゲン担ぎも必要でしょ?」
    「まさか。その為に苦手な飴を食べたのか?」
    「ううん。それだけじゃない」
     表に出せない想いをひた隠しにして、少しだけ本音を織り交ぜる。
    「オレはね。お前の今日一日が、ラッキーであって欲しかったの」
     そう笑うカカシに、オビトは仮面をかけ直し、本当に小さく「…バカカシ」呟いた。
    「ま!でもやっぱり…甘い物は苦手だな」
     甘い口に苦い心が合わず、カカシはゴクリと飴を飲み込んだ。
     がんじがらめの現実で、僅かに溢れる感情を拾い集める。たとえそれが幸福ラッキーでなくとも。
    「残りは全部、お前にあげる」
     手元の飴袋をオビトへと押し付ける。
     この飴みたいに、お前の中で溶けてしまえばいいのに。口内に残った欠片を飲み下す。甘い夢のようなそれが、叶わなくても。
     ただ幸福を。
     そう願う。カカシの想いに、嘘はなかった。
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    poppokyo

    MAIKINGけじぇふらっとさん(@kjefrat)が書いてくださった私の妄想(https://poipiku.com/11313044/12071594.html)をさらに広げました。人を選ぶやつなので何でもオッケーな方以外読まないほうがいいぜ…主にobt視点です。
    漏れや書き損じ、穴があったらすみません。
    えっちな続きはけじぇさんが書いてくれると信じて……なんてね。たぶん手が空いた方が書く。
    ドルパログラビア!?つー! うちはオビトは特殊な家庭で育った少年だった。いや、『家庭』というより『家系』と言った方が正しい。
     オビトの家系はいわゆる、芸能一族だった。その始祖は戦乱の世が治まったばかりの時代まで遡る。
     文化が栄え、華開いた平和な時代。低俗、下賤、無意味だと称されていたものに価値が見出され、評価をされて尊き立場までのし上がった文芸の数々──その一つに名を連ねる、とある伝統芸能を主軸とした『うちは家』が、オビトの直系であった。
     けれどオビト自身は、そのうちは家の一員であるという意識が全くなかった。それもそのはず。物心つく前に亡くなってしまったオビトの両親は自分達の一族から歓迎されない結ばれ方をしたようで、親族との関係は絶縁状態に近かった。そして遺されたオビトも当然、両親と同じ扱いを親族から受けていた。
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