信一と龍兄貴と洛軍雑感信一は龍兄貴に大事にされてることをちゃんと知ってるけど、でも時々その眼差しが自分じゃない誰かを見てることにも気づいていて、死んだ自分の父親かなとか、知らない誰か過去の人かなと思いながら成長して、そのうち陳占のこととか知っちゃったりするんだけど、まあでも過去の人だし。今は自分が一番近くにいて、一番大事にされてるしって、半ば自惚れのような気持ちを持ってたんだけど、ある日洛軍がやってきて、兄貴が彼に向ける眼差しが、まさにあの眼差しで、ああ、自分は彼の代わりだったんだ、と思い知らされる瞬間があるんだよ。
で、どんな奴だよって観察するんだけど、ただただ真面目に働いて、庇の上で寝起きして落ちそうになってたり、入り組んだ通路で迷子になってたり、一番安い光酥餅をもそもそ食べてたりする姿を見て、ちょっと、肩透かし食った気になる。
ちょっとでも兄貴に取り入ろうとしたり、馴れ馴れしかったり小賢しかったり、何か嫌な面でも見せればとっとと追い出せるのに、洛軍はそんなことは全然なくて、無駄口は聞かないし、どんなきつい仕事も断らないし、魚蛋妹にも丁寧に接する。極め付きが、その小妹の母親の一件で、あんな、城砦の住人であってもさすがに躊躇するようなことを当然のごとくやってのけ、故人の最後の尊厳も守ってやる。こんなとこ目の当たりにしちゃったら好意を抱かずにはいられないだろう。
真面目なだけでなくて、人として誠実で実がある男だ。兄貴が、人知れず思い続けていただけのことはある。
その後の仕置きも、本当は四仔や洛軍が来なかったら殺してポイで済まそうと思ったのに出てきちゃって、しかもなんか息が合うし、なんならちょっと楽しかったし、人懐こそうに見えてめちゃめちゃ警戒心強い十二がすぐに受け入れたし、しょうがない、兄貴の一番をお前に譲ってやってもいいよって、ほんのりどこかで思い始めていたところであれですよ。
殺人王の息子とかなにそれ?
っていうか陳占の息子逃がしたのも龍兄貴なの?それでずっと、「あの子はどうしているだろうか」モードだったわけかって合点がいって、あーでもそういうことなら今すぐここから逃さなきゃならない。秋兄貴も虎兄貴も、洛軍を許さない。
って十二にまでそう思わせて必死になってんのに当の本人が逃げる気なしで、そりゃ密航までして香港にやってきて、それでも居場所もまともな職もなくて、やっとここで人らしい暮らしを得たんだもんな、出て行きたくないよな、でもそんな場合じゃねえっての、
ここで怒らない信一優しい。
結局逃げれなくて、秋兄貴、朝早すぎよねとか言ってる場合でもなくなって、秋兄貴と龍兄貴がぶつかり合うのかどうかの緊迫した瞬間に飛び込んだ虎兄貴すげー度胸だよね。あの2人ぶつかったら最終戦争だって知ってるから、自分が洛軍をまぁ半殺しくらいしたらちょっとは話の余地もできるかもって考えてたと思うんよ。だからちょっと手加減してたら洛軍の戦い方戦場仕込みなもんでそのへんのゴロツキとはもう全然違うからうっかりダメージ食っちゃって、せめてこれで秋兄貴が止まればなと思ったら余計火がついちゃってあちゃーな虎兄貴。
その一連をただ黙って見ている龍兄貴、目だけで信一や阿七をSTAYさせてるけど、どーすんの兄貴?洛軍どーすんの!?
っていう信一実況で全編お送りしたいけどこの先は信一がしんどいのでここまで。
あでもちょっと追記。
あのころの兄貴と同じ眼差しで洛軍を見つめる信一はいるよ。