【夏五】空席の同級生 転校初日って、どういう気分でいるのが正解なのだろうか。いつも悩む。
きっちり閉じられた、古い引き戸を見つめる。小学6年生ですでに170をゆうに超えているので、上部にあるすりガラスの窓から向こうがぼんやりと見える。これから担任になる教師が説明している声がくぐもって聞こえる。まだ若い女性教師で、快活で、声がでかい。それが第一印象。
新しい学校、新しい教師、新しい同級生。
今この瞬間飛び込もうとしている、新しい環境での新しい生活に期待と不安で緊張しまくるのが普通なのかもしれないが、あいにくこれが2年ぶり3回目の転校である。
しかも小学校6年生ともなればいやだいやだと駄々をこねることもない。そんなことをしたって状況が変わらないことを知っているからだ。親の庇護の下にいる子どもに、選択肢などない。
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