タイトル未定バレンタイン 二人とその他にも多くの鬼を乗せたエスカレーターが昇り、九階のサインが見えてくるとフロアには更に多くの鬼たちが行き交っていた。
「こんなに混むイベントだったとは……」
「あちらは並ぶのにも予約が要るようですね。もう少し調べてから来ればよかったでしょうか」
エスカレーターの降り口のすぐ横の店ではパーテーションで行列が整理されていた。スタッフらしき鬼が持っている最後尾札には「今の時間は予約が必要です」と小さく書かれている。
「私が調べるべきでした。すみません」
「謝ることはないです。貴女の興味のある店でないなら。私は貴女のチョコがもらえればかまいませんので」
鬼灯のやや平坦な返事に、彼はあまりこのイベントに乗り気ではないのではと彼女は少し勘ぐってしまった。
6460