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    田@Chestnut-118

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    同室のくりへし

    同室のくりへし
    始まりは手だった。
    秋の入り口の少し肌寒い夜。寝ぼけていたんだろう、俺は近くに感じた温もりを両手で挟み冷えた頬の下に敷き込んで眠ってしまった。
    障子越の朝日で目を覚ますと眼前に布団に片肘をついてまじろぎもせず俺をじっと見つめる大倶利伽羅。俺が挟んで敷きこんでいるアタタカイモノの先に大倶利伽羅。
    声にならない声とともに布団から飛び起きた俺を気にかける様子もなく大倶利伽羅は部屋を出ていった。
    静かに障子が閉まり遠ざかっていく足音。過度の馴れ合いを嫌う奴だ、近いうちに主から同室の解消について打診されるのだろうか。今晩からでも大倶利伽羅は伊達の部屋に戻るのだろうか。失われるであろう大倶利伽羅と過ごすこの部屋が長谷部にとって心地いい空間であったことに気づき再び深くため息をもらした。

    日課を終えしょんぼりと部屋の障子をあけるとそこには二組の布団が重なるように敷かれた大き目の寝床ができあがっていた。
    障子に手をかけたままで立ち尽くす俺に、大倶利伽羅はなんともないいつもの心地よい静かな声をかける。
    「寒いのだろう、俺は暑い。ちょうどいいな」
    布団の上で大あくびをしながら「俺はもう寝る。」そして、「来い」と。
    その日から大倶利伽羅と俺は同じ布団で寝ることになった。
    最初は背後から抱き抱えるように温めてくれていたのだが、首筋に当たる暖かい寝息と背中に伝わる振動とそれから冷えた手と足に絡まる体温に炉に入ったような鎚で打たれているような何とも言えない感覚が日々強くなり寒い日の夜よりも眠れなくなってしまった。これでは本末転倒だと丁重に同衾を辞退するがそれならばと大倶利伽羅は腕枕を提案してきた。
    腕枕。よかった。最高だ。大倶利伽羅の体温は心地いい。俺は安眠を手に入れた。のだが…。
    気付いてしまったのだ。もう甘えてはいけない…。
    腕!痺れてるだろ!絶対!!
    朝食の膳を左手で持つようになったし、今朝は箸を落としていた。
    安眠腕枕と大倶利伽羅の厚意に丁寧に礼を告げ、もう大丈夫だからと伝えてみたものの、大倶利伽羅は同衾どころか腕枕も一向に止める気配がない。長谷部の体温が心地良いから俺がしたいんだと言われてしまえば(俺だってホントは心地良いから)厚意に甘えたままだ。
    ならばしびれないように、どこに頭を置くと負担がかからないのか考える。起こさないように頭の位置をちょっとずつ変える。そして、大倶利伽羅より分け与えられるぽかぽか睡魔との闘いの末辿り着いた。
    ココだ。
    腕の付け根から胸にかけての部分。そっと頭を乗せる。仰向けがいけないのかもと腕を大倶利伽羅の胸腹に回してからだを寄せる。大倶利伽羅から伝わる鼓動が大きくなった気がするが、まぁ、いぃ…か、ねむ…。

    長谷部の呼吸が規則正しくなったころ大倶利伽羅は軽くなった腕をスヤスヤと上下する肩に回した。自分の胸の上で広がる煤色の髪を梳く。まろいあたまを優しく撫で額にキスをする。そして今日も満足気に眠りにつくのだった。
    くりへしくりへし。

    ② 深夜2時
    三条会からやっと解放されたふわふわ長谷部の足取りはおぼつかない。自室の障子をスススと控えめに開いた後、敷居につまづき、文机に脛をぶつけ本棚に引っかかりハンガーを落とす。長谷部は物音を立てる度、人差し指を口に当てて敷居を文机を本棚をハンガーを戒める。「シー!静かにしないか、大倶利伽羅が起きるだろう」

    あちこちぶつけながら大倶利伽羅が眠る布団に辿り着く。すやすやと眠る姿を満足そうに確認すると額にかかるやわらかな栗色を横に流しそっと触れるだけのキスをする。

    「…ただいま」

    そーっと大倶利伽羅の腕の中に体を収め大好きな温もりのなか眠りについた。

    ③ 加州と長谷部のコショコショバナシ

    「ね、いつから付き合ってるの?」
    「ん?」
    「長谷部と大倶利伽羅」
    「付き合ってないぞ?」
    「そうなの?」
    「それに、俺のことは別に『好き』ではないと思うぞ?」
    「なんで?」
    「好き同士だとココの鼓動が高まるのだろう?」
    顕現時に渡された指南書に書いてあったから知ってる、って心臓の辺りに手を添えてるけど、なんでドヤ顔なの?
    「毎晩、聴いているがいつも同じ拍動だぞ」
    「えと、聴いてるの?」
    「ああ、こう、胸に耳を当てて」
    「当てて、」
    「温くて寝やすい」
    「そう、」

    長谷部の教育係誰だよ!
    大倶利伽羅か!
    まだ手ェ出してないよね?
    んー、一応ね、
    「長谷部、嫌なことはちゃんと嫌だと伝えなきゃダメだよ?」
    「??わかった」
    ああ、これ絶対分かってない。
    本人たちがいいならいんだけどさ。
    『別に好きじゃない』って言った長谷部の顔が少しだけ寂しそうだったのをアイツには教えてやんない。

    ④ 夢
    小春日和の廊下で膝の上、背中合わせ、腰布の中。昼寝する大倶利伽羅と小虎。ほのぼのとしたその光景を遠くから眺める長谷部。別に、いつもの光景だ。別に、、、、

    「…!!」
    自分の寝言で目を覚ます
    隣には規則正しい寝息の大倶利伽羅。ぷくっとほほを膨らませて「お前が悪い」と呟き腕の中に潜り込む。「まだ寒いから仕方なくだ」なんて口の中で唱えて。
    寝たふりの大倶利伽羅は長谷部が再び寝入ったころ、クククっと肩をふるわす
    『俺の!俺の大倶利伽羅だ!』
    夜明けの一歩前に見た夢は縁側の小虎たちと大倶利伽羅の膝枕をかけて壮絶真剣勝負するバイオレンス。
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