花陽浴と可愛らしいラベルの酒瓶を掲げ先日の礼だと大倶利伽羅を晩酌に誘った長谷部。葉桜一歩手前の桜と庭池にまばらに浮かぶ花筏を肴に縁側に並んで座る。
長谷部の話にああとかそうかとか短く相槌を打つばかりの大倶利伽羅に無理して付き合わせてしまったかなと反省する。「あー、その、すまない。この間はとても助かった。その、礼をしたかったんだか、」そろそろお開きにしようか、と立ち上がりかけた長谷部の腕を掴む大倶利伽羅。その手のひらは驚くほど熱い。
「…やら」
目の縁を赤く染め不貞腐れた顔で長谷部を見上げる大倶利伽羅。長谷部は思わず瞬きを繰り返した。盆には空になったグラスが2つと話に夢中で気が付かなかったがいつの間にか半分くらいに減った酒瓶。
「俺にだって下心くらいある」
ぐい、と腕を引かれバランスを崩した長谷部は床に倒れ込み「ふぇ」と間抜けな声を発する間もなく大倶利伽羅に喰らいつかれるのだった。