在りの遊び 突き飛ばされたのだ、と気づくのには時間がかかった。
牀榻から転げ落ちて、まだ半開きの両の眼を擦りながら、藍忘機を見やった。
おまえが寝惚けるなんて珍しい、と軽口を叩こうとして、おや、と思う。
こちらを見る藍忘機の視線は終ぞ向けられたこともないほど、冷たく、そればかりか怒りすら宿していたのだ。纏う空気も随分とピリピリとしている。
様子のおかしい夫に、魏無羨は昨夜の名残のある重い体を起こした。
「なんだ、昨日の続きか?」
いつものように夜をともにしたとは言え、床に入る前に一悶着あったことを思い出し、頭をぼりぼりと掻く。
それには答えず、冷静さを装う硬い声が、落ちてきた。
「君は誰だ?なぜここにいる?」
「藍湛がおかしい」
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