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    0307_mhyk

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    0307_mhyk

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    ブラッドリーが暑さで体調を崩すお話です
    友情出演:フィガロ

    #ブラネロ
    branello
    #体調不良
    poorBodyConditioning

    溶ける「はあ……」
     あまりの暑さに、思わず漏れるため息。生粋の北の魔法使いであるブラッドリーにとって、中央の国の暑さは地獄だ。
     ソファの背もたれに全体重をかけ、手足を投げ出す。ブラッドリーらしからぬ動作だが、誰も見ていないのだから許されるだろう。先程から何だか頭が痛い気がする。それに、身体が燃えるように暑い。まるで、賢者の世界の「サウナ」とやらにいるみたいだ。自室には冷却魔法を施されているはずだが、ほとんど効果を感じられない。
     そうだ、ネロに頼めば、何か冷たい食べ物を出してくれるだろう。フィガロに治療されるよりもずっといい。そう思い立ったブラッドリーは、部屋を出るためソファから立ち上がった。

    「……っ」
     途端、視界が揺れた。やばい、とソファの肘掛けに手をつこうとしたが間に合わず、大きな音を立てて倒れ込んでしまった。
    「はは……、」
     北の魔法使いたるものが、情けない。
    薄れゆく意識のなかで、長年連れ添った相棒の声を聞いた気がした。


     鼻腔をくすぐる薬品の匂い。皺一つないシーツ。

    「やあ、目が覚めたみたいだね」

     そう話すのは、この部屋の主であるフィガロだ。
    最悪だ、と言おうとしたが、思うように声が出ない。かなり重症のようだ。こんなところに居るわけにはいかないと、ブラッドリーはベッドから起きあがろうとした。しかし、再びぐらつく視界に耐えきれずに逆戻りしてしまう。

    「こらこら、無理しちゃだめだよ。君、凄い熱あるんだから」
    フィガロはそう言うと、呪文を唱えた。
    「シュガーだよ。ただの気休めにしかならないけど」
    フィガロのシュガーなど絶対に食うものか。かといって顔を背ける気力もないため、ブラッドリーは精一杯睨みつけながら固く口を閉ざした。

    「君は嫌がると思ったけど、やっぱりその通りだったね」
    フィガロは怒ることなくシュガーを自分の口に運んだ。
    「頭痛薬と解熱剤用意しておくから、後で飲んでね」
    フィガロはそう言うと、部屋を出て何処かへ行ってしまった。アイツのことは気に入らないが、話が通じるだけまだマシかもしれない。

     フィガロは居なくなったことだし、もう一度眠ってしまおうか。そう思っていると、特殊なノック音が聞こえた。この叩き方には心当たりがある。盗賊団時代、ブラッドリーとネロだけが使っていた合図だ。

     「ブラッド、その…体調どう?」
     心配そうに覗きこんでくる金色の瞳。フィガロに伝えたのはこいつだったか。まったく、俺が嫌がると知っているくせに。

    「悪いな。あんた朝から顔色悪かったから、片付け終わったら様子見にいこうと思ってたんだけど、結構遅くなっちまって。……まさか、あんたが倒れるなんて驚いたよ」
    「俺の部屋に運ぼうか迷ったんだ。でも医者に診てもらう方が確実かなって。あんたは嫌だろうけど、あいつ、医術の腕は確かだからさ」

     ネロは自分よりも先に、ブラッドリーの体調が優れないことに気づいていたらしい。600年近くにいれば、何もかもお見通しなのだろうか。
     過去を隠したがるくせに、ブラッドリーのことを誰よりも心配している。相変わらずこの男の考えていることは分からないが、ブラッドリーにとってはそういうところが面白いのだ。

    「『アドノディス・オムニス』」
    ネロが唐突に呪文を唱えると、その手のひらに数粒のシュガーが転がった。
    「お前、あいつのシュガー絶対食わねえだろ。俺ので良ければ、その、いる……?」
    思わず大きな声を出して笑いたくなった。やはりこいつの考えていることは分からない。フィガロよりも自分の方が好かれている自信があるようだ。

     綺麗に整ったシュガー。彼の繊細な性格が表れている。
    ブラッドリーは素直に口を開けると、ネロの指ごと喰んだ。
    「……っ!!」
    ネロはみるみるうちに顔を真っ赤に染め、すぐさま指を引っ込めた。その様子が可笑しくて、自然と笑みが溢れる。

     ネロの作るシュガーは、優しい味だ。甘ったるくなくて、口の中ですぐに消えてなくなってしまう。まるで、彼のようだ。ネロのシュガーを食べるのは久しぶりで、どこか懐かしい気持ちになる。

     ブラッドリーが口の動きだけで「ありがとな」と伝えると、ネロは僅かに目を見開いた後、ふわりと微笑んだ。









     


     
     
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    44_mhyk

    SPOILERイベスト読了!ブラネロ妄想込み感想!最高でした。スカーフのエピソードからの今回の…クロエの大きな一歩、そしてクロエを見守り、そっと支えるラスティカの気配。優しくて繊細なヒースと、元気で前向きなルチルがクロエに寄り添うような、素敵なお話でした。

    そして何より、特筆したいのはリケの腕を振り解けないボスですよね…なんだかんだ言いつつ、ちっちゃいの、に甘いボスとても好きです。
    リケが、お勤めを最後まで果たさせるために、なのかもしれませんがブラと最後まで一緒にいたみたいなのがとてもニコニコしました。
    「帰ったらネロにもチョコをあげるんです!」と目をキラキラさせて言っているリケを眩しそうにみて、無造作に頭を撫でて「そうかよ」ってほんの少し柔らかい微笑みを浮かべるブラ。
    そんな表情をみて少し考えてから、きらきら真っ直ぐな目でリケが「ブラッドリーも一緒に渡しましょう!」て言うよね…どきっとしつつ、なんで俺様が、っていうブラに「きっとネロも喜びます。日頃たくさんおいしいものを作ってもらっているのだから、お祭りの夜くらい感謝を伝えてもいいでしょう?」って正論を突きつけるリケいませんか?
    ボス、リケの言葉に背中を押されて、深夜、ネロの部屋に 523

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    REHABILI大いなる厄災との戦いで石になったはずのネロが、フォル学世界のネロの中に魂だけ飛んでしまう話1俺は確かに見た。厄災を押し返して世界を守った瞬間を。多分そう。多分そうなんだ。
     だけど俺は全て遠かった。
     ああ。多分、石になるんだ。
    『ネロ!』
    『石になんてさせない』
     ぼんやり聞こえてくる声。クロエと、後は、ああ……。
    『しっかりしろ、ネロ!』
     ブラッド。
    『スイスピシーボ・ヴォイティンゴーク』
    『アドノポテンスム!』
     はは、元気でな、ブラッド。早く自由になれると良いな。囚人って身分からも、俺からも。
    『ネロ……‼‼』
    「……」

    「なあ、ブラッド」
    「何だよネロ」
    「今日の晩飯失敗したかもしんねぇ」
    「は? お前が?」
    「なんか今日調子がおかしくてよ。うまく言えねぇんだけど、感覚が鈍いような……」
    「風邪か?」
    「うーん」
     おかしい。俺は夢でも見てるんだろうか。ラフすぎる服を来たブラッドがいる。それに、若い。俺の知ってるブラッドより見た目が若い。傷だって少ない。
     何より俺の声がする。喋ってなんてないのになんでだ?
    「ちょっと味見させてくれよ」
    「ああ、頼む」
     体の感覚はない。ただ見ているだけだ。
     若いブラッドが目の前の見たことのないキッチンで、見たことのない料理を 2283