モブマカ冒頭デトロイト――正直この街にいい思い出はない。
前時代から後を引く煤けた空気が澱のように漂っている。凍り付いた五大湖から吹きすさぶ風が街全体を覆い、長い冬の間は曇り空をにらめつけて過ごすほかない。
何よりも地獄だったのはハイスクールで、馬鹿笑いして口を開けばゴシップを垂れ流すゴミと、脂肪だか筋肉だかをごてごてと張り付けて脳に栄養を回していない豚ばかりの檻のような場所だった。気を紛らわせることもできずに毎日ただ同じことの繰り返しを続けてたが、よくもまぁ気を狂わせなかったものだ。
幸いなことに早い段階でそんな地獄に見切りをつけることができた俺は、灰色の空と同じくらい澱んだ目でカスどもを一瞥して、ひたすらに血のにじむような努力をした。ガリ勉だなんだと罵られようと。糞くらえ。
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