20220723 学生時代、友人から直接誕生日を祝われた記憶はほとんどなかった。当日に祝われたことはまったくと言っていいほどなく、直近に祝われることもまた少なく。低学年の頃はそれを寂しく思ったものだったが、夏休みを迎えた子どもたちに他人の誕生日を気にする余裕もなければ、わざわざ家を訪ねてまで祝う気などあるはずがない。夏休み中の誕生日なんてそんなものだと、一紗は早々に理解した。
付け加えると、小、中学生の頃は両親から直接祝われることも少なかった。共働きの両親に「心配だから」と言われるがまま、一紗と二葉は決まって祖母の家にあずけられていた。夏休みが始まってから一斉登校の日が来るまで、ずっと。電話越しの「誕生日おめでとう」はどこか空っぽに聞こえてあまり祝われた気がしなかったのだが、それはわがままだと飲み込んだ。
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