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    絵置き場

    @TomaadoHK

    TLにそのまま流しづらい絵(極端にグロかったりCPっぽかったりネタバレだったり)を置くところ

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    絵置き場

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    更新日時見たら2004年3月23日ってありました。
    当時サイトにも載せてた気がするけど誰も覚えてないと思うので晒しちゃいます。
    ポ10稼働当時に書いたと思しきステラさんのSS
    当時の空気を味わうために修正などは一切してません。

    SIGN―――聞こえる




    ―――私を呼ぶ私にだけが解る信号が




    無限に広がる宇宙。
    虚空に浮かぶ人影ひとつ。

    すらりと伸びた長い足、
    長い袖が特長の白い制服、
    肩までの長さで切り揃えられたライム色の頭髪に、
    切れ長の蒼い目。
    尖った長い耳は、誰かからの信号をキャッチするためのものだろうか。

    「…あっちか」

    次の瞬間彼は移動を始める。
    光よりも早い速度で、星と星の間をくぐり抜け。




    段々と、彼を呼ぶ信号の「音」が大きくなっていく。
    たどり着いたそこには、一人の男が居た。

    ―――馬鹿な。あの信号はあの女の子にしか教えなかった筈なのに

    長袖のセーターに身を包んだその男性。
    この空間に存在するのは余りにも不自然である。
    下半身から爪先にかけて、青と黒のグラデーションが波打っていた。

    「お、やって来たな。お前さん確か…そう、ステラだかいう奴だろ?」

    こちらから名乗り上げてもいないのに、自分の名前を知っているなんて。
    ステラと呼ばれたその人物は、ぞっとした。

    「女の子の理想の王子様なんだってなお前。
    どうりで足の長さとか容姿が有り得ない訳だ」
    「何でお前のような奴がここにいる」
    「そうそう、俺様はMZD」
    「質問に答えろッ!」

    怒気を込めてステラは叫んだ。
    当のMZDは、やれやれと両手を上に上げてみる。

    「この”世界”はある少女の空想の世界。
    お前のような外部の住人が入れる場所ではない。
    何故お前はここに”存在”できる。
    そして何故あの信号を知っている」

    ステラが言うように、この世界はある空想化学小説好きの少女の空想
    (妄想とも言う)の世界。
    広がる宇宙も、星達もステラの存在も全てその少女の空想に過ぎない。

    「理屈臭い奴だな。空想化学小説の住人なのに」
    「悪いか」
    「べーっつにー?
    …まあ、話すと長いが平たく説明すれば、俺様が「神」だからだな」
    「神?…お前がか?」

    ふん、と鼻で笑うようにしてステラは言う。
    確かに、神と呼ぶに相応しい格好はしていない。
    むしろ人間の、大体二十歳前後の男のように見える。

    「バカにしたな?
    その気になりゃ、星一つ消せる。
    お前さん一人消す事だってワケないぜ?」

    と、MZDは人差し指をピン、と立てる。
    同時に彼の後ろから角の生えた魔神の影が現れ、それがいきなり衝撃波を放った。
    衝撃波はステラの頬をギリギリで掠めていき、遠くの惑星を粉みじんにした。

    「……っ」
    「信用してくれるか?」

    ニヤっと不敵な笑みを浮かべるMZD。
    ステラは声も出せず、ただ頷いた。

    ―――むしろ悪魔と言った方が正しいのでは…

    そう彼は思った。




    「…で、そんな神が私に一体何の用で?」

    しばらくして、落ち着きを取り戻したステラはMZDに問う。

    「あ、そうだった!
    忘れる所だったぜ…ほらよ」

    そう言ってMZDがステラに渡したもの。
    それはチケットの半券だった。

    「何だこれは」
    「俺様主催のパーティの招待券だ。
    ポップンパーティっつってよ。歌歌ったり聞いたりして楽しむパーティなんだ。
    …お前、音楽とか好きか?」
    「嫌いではない。むしろ好きな部類に入る」

    なら決まりだな。
    とMZDはにんまりと笑った。

    「その券に行き先と日付が書いてあるだろ?その日に来てくれれば大丈夫だからな」
    「しかし…私はこの通り空想世界の人間(?)だ。
    お前達の世界に行く事など出来ないのでは…」
    「その辺は心配無用だぜ。パーティ会場はメルヘンの世界だ。
    お前さんみたいな人だって来れる。普通の人間のが少ない位さ。
    狼男、吸血鬼、透明人間、幽霊紳士、ゴスロリゾンビ…
    お前さんと同じ宇宙人だって結構居る」

    MZDが話し終わると、彼の足元からさっきの影がにゅーっと出て来た。

    「コンナ偉ソウナ事言ッテイマスガ…」
    「し、喋れるのかこの影!」
    「何カンダ言ッテ、コノ人寂シガリナンデスヨ。
    宜シケレバ構ッテヤッテ下サ…」
    「てめェは黙ってろ!!」

    MZDが一喝すると、影はヒィ!と高い声を上げ、
    MZDの足元に吸い込まれるようにして消えた。
    その状況を、未だ把握出来ていないステラ。

    「あ、ビックリしたかー…
    さっきのは俺様の分身兼召使みたいなのだ。
    外見ああだから驚かれるけど…中身は常識人だぜ」
    「…そうなのか?」

    そうなんだよ。と目で言うMZD。

    「んじゃあ、チケットも渡したし、俺様は消えるぜ。
    いつまでも女の子の空想の世界に留まると、その子の精神に支障がでるしな」

    MZDの身体が、足元から生じる淡い光に包まれ始める。

    「じゃあな。その日に会える事を楽しみにしてるぜ」

    言うが早く、MZDの姿が完全に消え去る。
    後には光の粒の名残だけが残った。

    「…第10回ポップンパーティか」

    その場に残されたステラは、チケットを見、呟いた。

    「他の世界の住人と接するのも、いい体験かもしれないな…」

    ふと、ステラの顔に微かな笑みが漏れる。

    「!…また聞こえる…」

    長い耳がせわしなく動く。
    ステラは自分を呼ぶ声―――Sign―――の方へ顔を向けた。

    「次はあっちか」

    そして彼はまた、移動を始める。
    光より速く、星達の間を駆け巡って。




    Fin.

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