悪魔着き小気味良いドアのベルと共に今日の最後の客が帰っていく。
軽く扉の向こうへ手を振ってからしっとりとしたBGMも消し、シンと静まり返った店内にはただ煌びやかな可憐さだけが残されている。
オレの知る美を瞳に写して一喜一憂する観客を見るのも好きだが、こうしてオレだけが美に囲まれるこの瞬間も満たされるような気持ちになる。
宝物に囲まれて眠るような、花畑で深呼吸をするような。
今まで知ることはなかった安寧を、全てを失ってからようやく享受できるようになっていた。
あちこちでおめかししてお迎えを待つ子達ひとりひとりへ、点呼と共にケアを施していく。
明日はもっと今日より綺麗になって、そうしていつか運命の人と結ばれますように。
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