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    sakanagi_out

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    リクエストいただいた、名古屋出張についてきた虎杖が悪気なくきしめんをリクエストしちゃったという悠七

    ##悠七

    あなたとひみつのはなし 子供にとって大人とは、見た目とか年齢なんかの分かりやすい記号があること以上に、ちゃんとしているかどうか、ということだと思う。次には能力で、経験値の差、みたいのを見せつけられるとやっぱり大人ってスゲーなぁって思う。もちろん、そんな年の差でマウント取ってきたりされると、大人って汚ねーなって思うこともあるけど。
     ともかく、つまり、俺にとってナナミンという存在は、そのちょっとばかり面倒くさがりなところも含めて見本のような「大人」だったので、そんな彼は何だってそこそこにこなしてしまうんだろうな、と勝手に思っていた。
     でも、そんな大人の男は、かれこれ二分近く四品ぐらいしかないはずのメニュー表とにらめっこをしている。どれを食べようか悩ましい、というのとはたぶん、違うなっていうのはわかる。普段パンを食べる順番を真剣に選んでる時なんかとは、なんとなく空気が違うからだ。
     そういえば最初からナナミンの態度はちょっとおかしかった、と店に入る前のことを順を追って思い出す。
     

    「折角の初出張ですから、食べたいものはありますか」

     五条先生から後学のためについてっといで、と言われて、俺はナナミンと一緒に名古屋に来ていた。もちろん任務で、である。これから先出張することもあるだろうからと、移動とか現地の補助監督との連携についてだとか「あの人はそうのは全然全く壊滅的にダメで全部伊地知くん任せなので、私を指名してくれて良かったですよ」とか言いながらナナミンは丁寧に教えてくれた後、昼時にさしかかって口にしたのが先の言葉だ。
     言葉の中にご馳走しますよ、という響きを敏感に感じ取って、あれでもないこれでもないも考えて、
    「きしめんが食べたいな!」
     と口にする。と、何故かナナミンは「きしめんですか」と微妙な顔で言った。
    「ここは名古屋ですよ? 名古屋コーチンや味噌カツにひつまぶし、他にも色々あります。君のように育ち盛りなら、そちらのほうがいいのでは」
     遠慮しなくて良いんですよ。私も食べるんですから。そう言われれば逆に遠慮も出てきてしまって、つい俺は首を振った。
    「いやーほら、夜もあるしさ。任務前だから軽めがいいなって」
     そう言えば流石に押してくることはなく、それでもまだ少し「……そうですか」と声が低いことに遠慮しすぎたかなあ、なんて思ってたらこの有り様で。どうもその目がありもしないサイドメニューを探している気配を感じて、俺はとうとう口を開いた。
    「……なあ、ナナミン。ごめんだけど、もしかして……きしめん嫌いだった?」
     すると、しばらくの間を開けて「はぁ……」と盛大に溜め息を吐き出して「苦手です」と白状した。
    「きしめんが、というか、平たい麺が苦手で」
     なので、ここは君だけ食べてください。とナナミンはメニューを閉じてもう一度息をついた。
    「私のぶんは後でパンを買いますので、遠慮はいりませんよ」
    「ん、わかった」
     嫌いだったのにそれを隠してまで優先してもらってる以上、遠慮するのはよくないな、と俺は頷いてさっさと注文を済ませた。
    「しっかし、なんか意外だったな。ナナミンてあんまり食べ物の好き嫌いとか無さそうなのに」
    「嫌いというか、本当に…………ただ、苦手なんですよ」
     理由を言いたくないのか、ナナミンは少し言い淀むのに深くは追求しないほうがよさそうだ。それにしても、そもそも苦手なら店に入る前に言えば良かったんじゃないだろうか。ということは、苦手なものを知られたくなかったのではないかと思い当たってしゅんっと思わず眉が下がる。
    「……なんか、ごめん……」
     そんな俺の態度に、ナナミンは緩く肩を竦めて「いえ」と首を振った。
    「誤魔化そうとした私が悪かったんです。好きなものを選べと言ったのは私ですし、君が食べたいと言ったものを、今さらダメと言うのは大人げないでしょう」
     そういうところが大人だよなぁ、と聞きながら思っていると、ナナミンはふと声を小さくして「それに」と続ける。
    「……君になら、知られても構わないかなと……思ったので」
    「えっ」
     その言い方に思わずどきっとしたが、ナナミンは普段と全然変わらない調子でふうっと息を吐き出す。
    「君は人の弱味をぺらぺらと口にするような子では無いでしょう?」
     ああなんだ、そういう。
    「そんなん、当たり前じゃん……」
     無駄に動揺したぶんちょっとガッカリしていると、ナナミンは「ちなみに」と声を潜めた。
    「……この件は、君以外には誰も知りませんから」
     秘密にしておいてくださいよ。
     そう言ってぷいと顔を背けたナナミンは、表情こそいつもとあまり変わらない無表情ぶりだったけれど、その耳が真っ赤になっていて、これは所謂二人だけの秘密だという、そういうアピールなんだとようやくわかって、可愛いなあ、と思ってしまったのだった。
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