ふれる しとどに濡れるを図解したらこうなるだろうなと、どこか冷静な自分が楽しそうにしている。
七月に入って少し。治の休みに合わせて出掛けた直後ゲリラ豪雨にやられた。来た道を全力で引き返し治の家へ駆け込んだけれども、濡れていない箇所を探す方が難しい有様だった。
狭い玄関で、標準よりも大きい男二人は立ち尽くした。室内にも水溜りを作るのは目に見えて上がることを憚られる。少し顎を上げると家主もこちらを見ていた。
「ふ」
「ふは」
「ははははは!」
どちらともなく、笑い出した。普段より大きな声も、ばちばち、ごおごおという音がかき消していく。
ひとしきり笑うと、大きく息を吸った。ぽつりと向かいの前髪から雫が落ちた。
ああ好きだと不意に認識した。何度目のことだろう。
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