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    Blanca_46red_HU

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    Blanca_46red_HU

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    #創作BL
    Original Bl

    蒼春3片桐先輩に絡まれるのが日常になってきた頃———中間テストの結果が返ってきた。赤点は回避したものの案の定順位は下の方で、恐らくこのまま行くと期末テストで夏休みが潰れる……。

    「はーるき、今日マック……あれ、どした?」
    「…………中間テストの結果が返ってきたんですけど 」
    「うん。どうだった?」
    「…………おれ、夏休み消えるかもしれない…… 」
    「んなわけ無いだろ。評価かテスト見してみ?」

    そう言われたため、カバンの奥に取り残された生物のテストを渡してみた。片桐先輩は「字綺麗じゃん」と機嫌よさそうにしていたが……みるみるうちに怪訝そうな顔になる……

    「……あのさ、ちゃんと教科書読んでんのかこれ 」
    「読んでますよ。読んでてこれだし、そもそも勉強自体そんなに得意じゃなくて……」
    「だってこれ、お前……えぇ……?これ基礎できたら解けるやつばっか……」

    片桐先輩の全ての言葉が攻撃的に聞こえてくる……。中学三年間引きこもっていたのがここまでメンタルに効いてくるとは思わなかった。

    「そういう片桐先輩はどうだったんですか 」
    「え?学年8位 」

    勉強してないしなーとおれの解答用紙を折りたたみながら笑う先輩を、おれは今後もきっと許せないだろう———

    「んじゃさ、勉強教えてやるよ。先生んとこ行くよりは聞きやすいだろ?」
    「そりゃ、まぁ…… 」
    「決まりな。こっちの教室行くぞ 」

    片桐先輩はおれの荷物を持って立ち上がり、サッサッと足早に廊下を歩いて行った。

    「おれのカバン持ってかないでくださいよ!」

    その先輩を追いかけて、おれも廊下を駆け足で通り抜けた。



    「……ここまででわかんないところ……まあ全部か 」
    「おれそこまで馬鹿じゃないですよ 」
    「んじゃこれ解いて。さっき作った 」

    先輩はルーズリーフをこちらに向けて差し出した。確かにおれに教えてる間に何か書いてたような……

    ……まあ解いてみるかとルーズリーフを受け取り、少し考えてみる。

    「わかんなかったら答えじゃなくて教科書から引けよ 」
    「……はい……」

    と言われても、何がわからないのかもわからない。でもテスト前よりは理解できてる気がする……。

    「……できました 」
    「お、早いな。んじゃ答え合わせするからこれ食ってな 」

    片桐先輩はルーズリーフ……もといプリントと交換で、個包装のマカダミアナッツチョコをくれた。しかも高いやつだ。

    「いただきます 」
    「んー 」

    生返事を聞きながら包みを開け、口に押し込む。チョコ自体は少し苦い系だ。しかし苦いだけでなくほのかな甘味とコクもあり、ナッツ自身もミルクみたいに濃厚で幸せな気持ちになれる。

    「美味し…… 」
    「すげー……周りに花咲いてるみたいな顔してる…… 」

    チョコを飲み込み、口が少し脂っぽいが余韻を楽しむため水分は取らない。ふぅ……とため息をつくと、片桐先輩はプリントを返却した。

    「はい、八割正解な。こんだけできてりゃ夏休みは大丈夫だろ 」
    「ですかね?」
    「信じろって。学年8位だぞ俺 」
    「本当に勉強してなかったんですか?」
    「あー……流石に教科書パラパラって読んだ 」

    なんて言っているが、本当はしっかり勉強したんだろう。学年8位なんてそうそう取れるものじゃないし。

    「んでさ、春樹……教えたお礼に何してくれんの?」
    「押し付けがましくないですか?おれ別に頼んでないのに 」
    「先に『夏休み消えちゃうかも〜』って不安そうな声出してきたのそっちだろ 」
    「そんなぶりっ子みたいな声出してないです 」

    筆記具を片付けながら対話をして……まあ確かにお礼はした方がいいかと思った。でも何がいいんだろう?

    「片桐先輩って好きな食べ物なんですか?」
    「鶏の唐揚げ 」
    「じゃあそれ作るんで、明日夕飯食べにきてください 」
    「え、春樹が作んの?」
    「はい。中学の頃から家族の夕飯作ってたんで、味とかは保証できますよ 」

    学校にも行かず、ずっと部屋に篭ってるのが申し訳なくて気まぐれに夕飯を作っていた。「これ食べたーい」と食材を用意されたり、家にあるので適当に作ってと言われたり……気付けば毎日の食事を作るようになっていたのだ。

    「俺、春樹とだいぶタイプ違うじゃん。親御さんとかびっくりしない?」
    「一人暮らしなんで誰もいませんよ 」
    「あ、そうなんだ……へぇ……」

    片桐先輩は何か変なことを考えているらしく、こちらを見てニヤリと笑みを浮かべた。

    「今日行くんじゃ駄目か?」
    「別にいいですけど……片桐先輩のお家、もうそろそろ夕飯作るんじゃないですか?」
    「あー、いいのいいの。今連絡するから 」
    「はぁ……そうですか 」

    ならいいかと納得し、冷蔵庫に何が残ってるか思い出しながらカバンのジッパーを閉めた。買うものは鶏肉とサラダ用の野菜くらいか。

    「いっぱい食べますよね。荷物持ちしてもらっていいですか?」
    「任せとけ 」

    唐揚げへの期待か、片桐先輩はとてもいい笑顔を浮かべていた。
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