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    AO03ixx

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    AO03ixx

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    現パロすれ違う☀️🌿
    支部にあげたものの全年齢バージョンです(R指定部分をカットしたもの)

    「僕と大地獣、どっちが大切なの?!」今を輝く売れっ子モデル、ファイノン。
    太陽のような微笑みと、不意に見せる儚げな表情であまたの女性を虜にしている彼にも、悩みがある。
    それは_____

    「っほんと!先生ったら僕に見向きもしない!!」
    ダンッ、と耳に響くジョッキの音に眉をひそめながら、首の後ろまで赤くしたファイノンを見やるのは、友人のモーディス。
    「やかましい。静かにしろ。」
    「べつにいいだろうきみの家なんだから」
    「俺の家なら尚更だ。」
    ため息をついた後、恋に悩めるファイノンに水を手渡し、座り直す。どうやらこの愚か者は恋人が自分に興味が無いと嘆いているそうで、心底どうでもいいが聞くだけ聞いてやろうと腕を組む。
    「それでね?!僕が遊びに行こうって誘っても研究で無理って言って……いやわかるんだよ忙しいのは!僕も先生が楽しいならそれが一番いいと思ってる。でも!夜一緒に寝てくれないんだ!誰と寝てると思う?先生お気に入りの大地獣のぬいぐるみだよ!それにまだキスもできてない!手を繋ぐのもこの前やっとだ!」
    よくもまあ聞いてもいないのにそんなにペラペラと話せるものだ。だが、わかりやすい。つまりこいつは拗ねているのだ。自分にかまって貰えないからと、でかい図体を情けなく縮こませながら、うぅ〜、と唸っている。哀れだ。
    「……なら言えばいいじゃないか。俺と一緒に寝ろやらなんやらと。」
    「……言うって、いっても……」
    「それで先生が、僕のこと嫌いになったらどうすればいいのさ……」
    あぁ。めんどくさい。モーディスの心の中に出た言葉はそれだった。とりあえずこの酔っ払いをどうにかしなければならない。変に家に泊まられても困る。それはそれは困る。
    「なら一生そのままグズグズしておけ。そして帰れ。」
    「モォディス〜…!!君も僕のことを見捨てるのかい…?!」
    新しい水を汲もうと立ち上がれば、服の裾を掴まれそのまま顔を擦り付ける。やめろ。汚い。離せとでも言うようにファイノンをはらい、水を汲みファイノンにかけてやろうかと思ったが、カーペットが濡れることを危惧し机の上に置くことに留めた。
    「……はぁ、本当にそのまま愚図っていると状況は変わらんぞ。」
    「……わかってるさ…でも、変なことを言って先生を傷つけたくない………嫌われたくもない…なら、ずっとこのままでも、いいんだ……」
    ファイノンの声色に、少し掠れた悲しみが滲む。一見相手思いのように思えるそれは、自分よがりな押しつけでしかない。はぁ、とため息をついた後ファイノンの背中と服の間にに氷を滑り込ませる。
    「ひィっ?!つめっ?!君、なにっ」
    びくりと肩を跳ねさせ、辛気臭かったその顔は一気にいつも通りの表情へと戻る。モーディスはファイノンの憂いを帯びた顔が苦手だ。どう接したらいいのか、どう声をかけていいのかわからなくなる。だからこそ、うるさい方がまだマシなのかもしれない。
    「頭を冷やせ。もう少し周りを見ることだな。」
    「じゃあ背中に入れなくても良かったよね?!」
    「やかましい。帰れ。」

    かちゃ、とドアノブに手をかけ、控えめに扉を閉める。同居…というより同棲している恋人の部屋に明かりは着いているが、帰ったことに気づいていないのか、はたまた気づいているが行かない選択肢を選んでいるのか、顔をのぞかせることは無かった。
    「…………はぁ」
    リビングのソファーに座り込み、まだ少し酔いの残る額を摩る。付き合ってからもう少しで1年。教え子である時から、じんわりと内に滲む恋心に気づいていたファイノンは猛アピールをしていたが、アナイクスは子犬のじゃれとでも思っていたのか、まったくもって手応えがしなかった。卒業後、離れ離れになってしまうと思ったファイノンが連絡先を教え、たまに研究室に顔を出し、外へと連れ出していた。その行動が、正しかったのか、正しくなかったのかは、今のファイノンにはわからない。
    長年の恋心を募らせて限界だと思ったその日に、ファイノンはアナイクスに告白をした。玉砕覚悟の身投げではあったが、意外にも返事はあっさりとしていた。
    「構いませんよ。」
    いつもの調子で言ったその返事に、ファイノンは足が浮き勝手にステップを踏んでしまいそうなほど有頂天になっていた。とはいえ、恋人らしいことは1年経ちそうな今になっても特にない。好き、という言葉も聞いたことがないし、スキンシップもすんなりと躱されてしまう。不満だと言えば不満である。が、本気で彼のことが好きなのだ。ふと見せる微笑む顔が、自分を導く声や手が、小さくて細いがだれよりも頼りがいのある背中が、誰よりも、好きだった。
    「……アナイクス先生」
    ぼそ、と彼の名前をつぶやく。分かっていた。自己中心的で、自分よがりな考えばかりしていることは。
    「周りを見ろ。」
    先程のモーディスの言葉が、ファイノンの中で反芻する。嫌われたくない、傷つけたくない。そんな思いが、アナイクスを縛り付けているのではないか。告白を受けいれたのも、仕方なくなのではないか。あの人は優しいから、ありえてしまう。
    なら、いっそのこと……
    「…………いっそのこと」

    「…ファイノン」
    突然背後から、低い声が響く。
    「!あ…せんせ……ただいま」
    「おかえりなさい…どこへ行っていたのです?」
    大地獣のパジャマに身を包んだアナイクスが、キッチンの方へ向かいながらそう問う。意外だった。今まではどこへ行っていたかなど聞いたことがなかったから。まさか……いや、そんなはずは無い。
    「えっ?あ、ぁあ。モーディスの所だよ。少し呑んでたんだ」
    「ふむ。だから酒臭かったのですね。シャワーもまだでしょう?」
    ふとファイノンのとなりにコップを持ったアナイクスが座り、そしてファイノンの首元へ顔を近づけすんすん、と匂いを嗅ぐ。びく、とファイノンが肩を跳ねさせれば、アナイクスは小首を傾げる。
    え、なんだか、今日の先生……
    「あ、えっ、そうっ、だね……まだ、入ってないや、はは……は、はいってこよっかな!」
    「…えぇ。そうしてください。寝室で待っていますよ。」
    「……ぇ、あ、えっ、あ!う、うんっ」
    足早に風呂場へ向かい、一拍置く。今、なんと?「寝室で待っています」つまり、シャワーを浴びたあとアナイクスの部屋に迎えということだろうか。一体、なんの吹き回しだろう…なんの……
    ……いや、浮かれている場合では、無いかもしれない。
    ファイノンは知っている。我が恩師アナイクスは、表面上はああでも優しい人だ。最後の思い出作りをしてあげようと、慈悲を与えようとしているのかもしれない。
    「……ごめんね、先生」
    そう一人で呟いた後、ファイノンは全てを洗い流そうと衣類をゆっくりと脱ぎ始めた。

    ……怪しい。
    いつの間にやら帰ってきていたファイノンをリビングで見つけたアナイクスは、声をかけようとした時に聞いてしまった。
    「……いっそのこと」
    何を企んでいるんだ。あの子は。そもそも、この時間に帰ってくることも少し違和感だ。いつもならばこんな真夜中にはならないし、もしなるとしても連絡を入れる。それがファイノンという男だ。少し顔を近づければ目を逸らし、身体をそらす。自分に見られたくないなにかや、嗅がれたくないなにかでも纏っているのだろうか。
    はぁ、とため息をついた後、水を1口飲み込む。分かっていた。ファイノンが自分よりも、他にいい人が山ほどいるということも、選び放題であるということも。
    ファイノンから恋心を向けられていることに気づいたのは、ファイノンがまだ学生の頃。人の視線に人一倍敏感なアナイクスは、ファイノンからの目線が妙な熱を孕んでいることなど、見通していた。だが、嫌ではなかった。まさに太陽、そう形容される人はあまたにいるが、彼が放つそれは、光の届かない惑星でさえ照らしてしまうような、底抜けの明るさがあった。しかし、彼に不安定な面があることも分かっていた。彼は優しい。優しいからこそ、こんな私にも、陳皮な目を向けず接してくれるのだ。あまつさえ、恋心を抱き、ずっと後ろを着いてきてくれる。返事こそ適当であったが、アナイクスは確かに、ファイノンの事を好いていた。
    だからこそ、解放してあげたい。血色の悪い顔、色気のない肋骨の浮き出る体、世間から後ろ指を指される背中。全てが、彼の隣には似合わない。そう思っているのに、一丁前に嫉妬してしまう、あなたのそばにいたいと思ってしまう自分が、心底嫌いだ。
    「……ごめんなさい、ファイノン」
    とぼとぼと、寝室へ向かう。ベットに寝転がれば、いつだってそこに居た大地獣のぬいぐるみと目が合う。ふと感じた心細さを埋めるように抱き締めれば、大丈夫になれる気さえした。

    寝室の前で立ち尽くし、深呼吸をする。
    「……よし」
    いざ、と覚悟を決めて、心底のドアノブをひねり、ゆっくりと扉を開ける。
    そこで目に入ったのは、こちらに背を向け、大地獣のぬいぐるみを抱きしめている恋人、アナイクス。いつもの光景だった……いつものなら、そのまま流していた…が、ファイノンはズカズカとアナイクスの方へ向かい、大地獣のぬいぐるみを掴み引っこ抜く。行き場を失ったアナイクスの両腕は、ふと失った温もりに困惑していたようだった。
    最後、最後だし、いってやる……!
    「っ先生!」
    「僕と……僕と大地獣、どっちが大切なの!」
    寝室に流れる、静寂の時間。
    「…………えっ」
    困惑、その2文字が、アナイクスの頭の上にある気さえした。
    「っい、いつも僕と寝てくれない…!この大地獣とばっかり……!少しは、僕と一緒に……」
    最初こそ勢いは良かったが、だんだんと羞恥心が滲み始め、もごもごと口の中で言葉が積もっていく。どうしよう、こんなことを言って…面倒くさいと思われる、嫌われる……でも、どうせ……
    「…………ファイノン」
    そんな思考を巡らせていると、ふと、自分の頬に手が触れる。細くて、少し冷たい、大好きな手。
    「…私は、なによりも、貴方の事が好きです。」
    真っ直ぐこちらを見て、そして一語一語をしっかりとした口調で発音し、そう告げられる。大地獣よりも、を越えた、"なによりも"
    「……えっ、あっ、え」
    一気に自分でも分かるほど顔が紅潮する。全身が震えてしまうほど鼓動は高まり、耳なんてヒリヒリするほど赤く染ってしまう。
    「…好き、ですよ。」
    「………好き、で…ごめんなさい」
    「………………え?」
    その恩師の言葉に、一気に目の前が鮮明になる。
    好きで、ごめんなさい?ファイノンの浮かれきった脳では、一瞬で理解ができなかった。
    「…貴方は、優しいから気を使っていたのでしょう。もう、大丈夫ですから…」
    この人は、なにを
    「……もっといい人の所へ、行ってください。」
    目の前が、真っ暗になった気がした。頬に触れられていた手は、酔いで保たれた体温が混じり、いつしか冷たさを感じ無くなっていた。するり、と頬から離そうとするアナイクスのその手を、ファイノンは強く握った。
    「そんなことっ……できるわけないだろう!」
    思わず声を大きくしてしまう。驚いたのか、アナイクスは朝焼けにも似た虹彩を大きく見開かせた。
    「っ僕も、先生のことがこの世のなによりも大切で、大好きだよ」
    「…そんなに、僕の愛は…伝わってなかったのかな」
    鼻の奥が、つん、と痛む。出したくもない涙が、瞼に溜まってしまう。アナイクスは手をそのままに、額をファイノンに寄せた。
    「…すみません……」
    謝罪の後に続く言葉は、いつもより低く、そして震えていた。
    「愛は、伝わっていました……しかし…私なんかが、貴方の隣にいるなど、おこがましいと…」
    震えながらもしっかりと紡がれた言葉達。なんども考えていたことなのだろうと、察することができる。お互い、言えなかったことを、ぽつりぽつりと雨が降るように口にしていく。
    「…僕はアナイクス先生の全てが好きだよ。性格も、顔も、体も、声も全部……だから、先生……」
    「…その手を、離さないで」
    ぎゅ、とアナイクスの手首を握れば、それに返すよう、アナイクスは片方の手もファイノンの頬に添える。
    「たくさん傷つけて、しまいましたね」
    「……もう、離しませんし、離すつもりもありませんから。」
    ふと、アナイクスの顔が近づく。思わず目を瞑った瞬間に唇に感じる、ふに、とした感覚。
    「あ……」
    ふふ、と妖艶に微笑むアナイクスから、目が離せない。
    「ファイノン」
    「たくさん我慢をしていたでしょう。」
    「……見せてください。貴方の全てを。」
    そう言ってもう一度、唇に同じ感覚を覚えた時、ファイノンは無意識に、アナイクスの腰を抱いていた。


    お互い程よく湿気た髪をベッドに散らし、寝転がったまま向き合う。先程風呂へ行き後処理をしていたらまたファイノンのモノが元気になってしまい、2ラウンド目があり…アナイクスは若者の体力に脅えながら現実と夢の間を泳いでいた。
    「…先生」
    さっきあれほど恥ずかしいことをしたのに、ファイノンは顔をほのかに赤くさせながらアナイクスを抱き寄せる。それに応えるように抱き返してやれば、さらに強く抱きしめられる。ファイノンの高い体温にじんわりと包まれ、意識は夢の方へと引っ張られる。
    「………あい、しています…」
    そうポツリと呟き、我慢できず瞼を閉じる。
    「…僕も、愛してるよ……」
    アナイクスの額にキスを落としたあと、部屋の隅で行き場をなくした大地獣のぬいぐるみに勝ち誇った顔をしながら、ファイノンも瞼を閉じた。


    「それでさ!先生ったらそれでなんて言ったと思う?」
    「……おい、この前のアレはどうなったんだ」
    友人の家で酒を飲み、頼んでもないのに惚気話をペラペラと喋るこの男は、つい3日前まで自分の恋にグズグズしていたファイノンという愚か者だ。
    「?あ、あ〜…その〜……素直に言ってみたら…先生がちゃんと好きって伝えてくれて……ふふ…それで…………ね」
    「わかった。それ以上は話さなくていい。」
    下世話な話になりそうな予感がし口で制す。とはいえまぁ何だ、あの妙に憂いを帯びたファイノンを見なくても済むのは、モーディスにとってもいい事だった。
    「それがあってか、先生、最近素直になってくれたんだ。ワガママも言ってくれて……あのワガママ耐えられるの、きっと僕しかいないよ」
    ……雲行きが怪しい。
    「ううん、それでいいんだ。僕だけずっと、見てくれたら……」
    「……チッ」
    部屋に響き渡るほどの舌打ちをかましてしまう。また別方法に面倒くさくなるとは、つくづくアナイクスという男は魔性なのだろう。


    時計が真上を指す前。寝ているかもしれない恋人を起こさぬよう、ゆっくりとドアノブを捻り扉を開ける。
    「……遅い。」
    玄関前の壁にもたれ、不機嫌そうに眉を寄せるアナイクス。ファイノンはごめんごめんと眉を下げながらも、内心は嬉しくてたまらなかった。近づき抱きしめるも、すぐに押しのけられ
    「酒臭い。早く風呂に入りなさい」
    そのまま背中を押され風呂場へと押し込められる。あぁ、幸せだ。直接的なことは言わないが、あれは嫉妬している時にする行動。愛されているという自覚、そして、自分以外を感じたくないという怒り、焦り、その感情全てが愛おしかった。
    さっさと風呂を済ませば、アナイクスの方から擦り寄ってくる。
    「…どう?いい感じ?」
    と、すんすんと嗅がせれば
    「……よろしい」
    と返答が返ってきて、存分に抱きしめる。もう二度と、この身体を離さないよう、そう誓うように。
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