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    kito_kabe

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    kito_kabe

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    最終回アフター
    いきおいで連ツイした尾を夜明けに送り出す杉の話

    #杉尾
    sugio

    君まとう道中々怪我の状態がよくならない尾のもとに杉が
    「お前治るのおせぇんだよ、ほら食料」
    とぶちぶち言いながらこたん近くの街にひっそり匿っている家に通うのに一年たった、ってことですよ。
    尾を助けて森の小屋で介抱していたヴァを見つけた杉がこっそりと二人を匿ってたまに食料とかをもっていき、錯乱状態が続いていた尾も時間とともに回復していき
    「お前もよほど暇なんだな、一等卒」
    「俺もお前ももう軍属じゃねえだろ」
    とかって軽口たたけるくらいになるし、お互いに色々と身軽になってるから
    「お前、帝国ホテルでふるちんで走り回ってただろ」
    「あっ!?なんで知って…あ、そうか!お前、あそこにいた軍人かっ」
    と色々と話ができ、もちろん勇の話も出る。話せば話すほどに出会うキッカケが違えばこんな形にならなかったのだろうかと、お互いの満身創痍な姿にそっと思いを巡らす杉。
    話の終わりに尾は毎回
    「ところでいつ俺を軍に引き渡すんだ」
    と言う。
    軍がどういう結論を出したのかは杉は知らないが、鯉と月は杉と尾がここにいることをしっている。ここだけだと、見ている。軍にとって要注意人物である二人がこの北の大地から離れることをよしとしないだろうし一歩出ればすぐに拘束されることもわかっていた。尾はそれをわかって軍に戻ろうとしている。
    列車の上でなにを見て、見させられて、そして答えを出したのか。杉が絶対に知り得ることのない世界を知っている尾はどこか満足気に、それでいて諦めたような顔で日々を過ごしていた。
    「お前って目がいいじゃん」
    「なんだいきなり、片方をえぐったのはお前だろ。杉」
    「まあそうなんだけど。…良すぎるから、見えすぎたんじゃねえの」
    「いいや、見えてなかった。見えてないことに、しようとした。それだけだ」
    「だからだろ。正直いけすかねえ奴だと思うけどさ、お前は、目をそらさない奴だから」
    あまりにも真っ直ぐな人間だったことに杉は気付くのが遅すぎたのかもしれない。
    「なあ、尾。お前さ、ずきんちゃんの国に行ったらどうだ」
    「は?」
    あっちなら軍も介入できないだろうことを言っても尾は訝しむばかり。それどころかさっさと自分を軍に付き出せと言う。それには杉が頷かなかった。
    「俺が助けてんだ、お前を生かすも殺すも俺次第だからな」
    「横暴だな」
    「るせー」
    それでも頷こうとしない尾に
    「花ざわ勇は地獄にはいないだろうけど、いつかあっちにいったら会えるかもしれないだろ。その時にさ、話してやれよ。ロシアのこと。勇は戦場しか見られなかったんだ。犬ぞりもバーニャもなんにも知らない。だからお前が教えてやれ、あっちでさ。土産話いるだろ。勇のぶんもいきて、世界見て、謝るついでに話してやれって」
    尾はぱちり、とまるで幼子のように目を瞬かせると、やがてゆっくりと瞳を伏せた。
    「そうか」
    深く吐いたため息はどこか震えていた。
    「そんな話を、あの人は、したかったのかもしれないな」

    鯉たちにだけ事情を話し、船を用意してもらい見送りも杉一人。尾はいらないと言ったけれど、杉が頑として譲らなかった。
    「言っておくが戻ってこないからな」
    「わかってるよ、戻ってきたらぶっ殺してやる」
    以前とは逆の言葉に尾は小さく笑んだ。顔を覗かせた太陽に照らされる姿はどこか眩しくも見え杉は目を細めた。
    「お前ってさ」
    ちらりとこちらを振り返った姿に、杉はこれ見よがしにため息を落としながら言った。
    「強いよな」
    認めたくはないが。そんな言外の言葉も尾はわかったのだろう。いつものように髪を撫で、誇らしげに顔を上げて尾は笑う。
    「どんなもんだい」

    その後、白から届いた手紙に触れた杉はざらりとした異国の紙に目を細めた。
    中に入っていたコインの輝きは、あの日見た夜明けの輝きにどこか似ていた。そういえば、戻ってこないとは言われたが追いかけてくるなとは言われてないな。そう考えながら杉が見上げた空を、自由な鳥たちが悠々と舞っていた。
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    hisoku

    DOODLE作る料理がだいたい煮物系の尾形の話です。まだまだ序盤です。
    筑前煮 夜の台所はひんやりとする。ひんやりどころではないか。すうっと裸足の足の裏から初冬の寒さが身体の中に入り込んできて、ぬくもりと入れ換わるように足下から冷えていくのが解る。寒い。そう思った瞬間ぶわりと背中から腿に向かって鳥肌も立った。首も竦める。床のぎしぎしと小さく軋む音も心なしか寒そうに響く。
     賃貸借契約を結ぶにあたって暮らしたい部屋の条件の一つに、台所に据え付けの三口ガス焜炉があるということがどうしても譲れず、その結果、築年数の古い建物となり、部屋も二部屋あるうちの一部屋は畳敷きになった。少し昔の核家族向けを意識して作られた物件らしく、西南西向きでベランダと掃き出し窓があり、日中は明るいが、夏場には西日が入ってくる。奥の和室の方を寝室にしたので、ゆったりとしたベッドでの就寝も諦め、ちまちまと毎日布団を上げ下げして寝ている。また、リフォームはされているが、気密性もま新しい物件と比べるとやはり劣っていて、好くも悪くも部屋の中にいて季節の移ろいを感じることが出来た。ああ、嫌だ、冬が来た。寒いのは苦手だ。次の休日に部屋を冬仕様をしねえとと思う。炬燵を出すにはまだ早いか。洋間のリビングの敷物は冬物に替えとくか。気になるところは多々あれど住めば都とはいったもので、気に入って暮らしてはいて、越してきてもう三年目の冬になった。
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    hisoku

    DOODLE昔書いた掌篇小説です
    杉語り、尾の寝る時の癖に気付いた話です
    両手に収まりきらない程の 同棲を始めて毎晩一緒に寝るようになって、尾形が寝ている間はいつも両手を握っていて、ぐーをしている事に気が付いた。毎晩、毎晩、時には眠る前に手を繋いでいたりすることがあっても、いざ眠りに落ちて繋いでいた手がするりと解けると同時にぐーになる。きっかり両手を握り締めていて、ぱーの手になっていた事がない。柔くもなく常にきつく握り締められていて、それに気付いてから目にする度に不思議だと思った。
     こいつは力んで寝ているのだろうか、そんな力を入れたまま寝て休めているのだろうか。夜中にトイレに起きたついでに気になって握っている手の指を開かせてみたくなった。腹這いになって尾形の手元に顔が来るように寝そべり、一本ずつ曲げている指の関節を伸ばしてやろうと指に触れる。親指は人差し指の隣につけられていたので、先ずはそれをそっと横にずらした。出来た隙間から人差し指の第一関節を優しく掴むと起こさないよう細心の注意を払いながら手のひらから離すように伸ばしてやる。開いたら、自分の手の甲の縁で押さえて中指も広げようとした時に声がした。
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