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    ottotto503

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    ottotto503

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    クラティ あくむ

    ##クラティ

    自分が酷く汗をかいていることに違和感を感じて、目が覚めた。
    眠っていたはずなのに、まるで激しい運動でもしたかのような呼吸の乱れ。今の今まで、息をするのを忘れていたように、肺が酸素を求めて運動を繰り返す。

    悪夢にうなされていたことなんて、思い出さなくても、考えなくてもわかった。
    ふう、と、大きく息をつく。内容をはっきりと覚えていないのが、不幸中の幸いかもしれない。

    忘れた頃に、いや、考えないように努めていた頃に、それは俺に忍び寄る。
    まるで体の中に、頭の中に、別の生き物が住んでいるかのような感覚。確実にあの時、あの頃から起こり始めた違和感。
    声がする。こっちに来いと呼んでいる。遠い場所から、時にすぐそばから。


     
    夢から目覚めたということは、おそらく今夜もそれに打ち勝ったんだろう。

    だが、意識の上で克服してもそれが体から消滅することはない。
    きっと最期を迎えるまで、この「別の生き物」は俺の中に生き続ける。



    「……」



    額の汗を拭ってから、ゆっくり、物音を立てないように体を起こす。ベッドのスプリングが無機質に鳴る。
    身体中が酷い倦怠感に襲われていて、これでは眠っている意味がないなと一人苦笑した。

    無意識に、隣に感じる体温に目をやる。
    ティファは幸い、よく眠っていた。たまに俺がうなされている時から起きていて心配させてしまうこともあるから、安心しきっている寝顔を見ると、自分も心が落ち着く。



    「……、」



    彼女を起こさないように気を配りながら、月の光をまとう黒髪を撫でる。

    ティファは、いつも何も言わずにそばにいてくれる。助けを求める声に、俺自身よりも先に気づいてくれる。
    俺が何度失敗しても、何度道を間違えても。それでも俺を信じようとしてくれる。



    (…貰ってばっかりだな)



    俺が拙い言葉でどれだけ説明をしても、ティファがここに生きていてくれることの意味は、本人には伝わりきらないんだろう。
    俺はこの感情をいびつでない、人に伝えられる形にする方法を、どこかに忘れてきてしまったから。

    身をかがめて、あどけない寝顔を見せるティファの額に口付けを落とす。
    それから額を合わせて、そこに温もりがあることを確認してから、ゆっくりベッドを出た。










    コップ一杯の水を飲んで、部屋に戻ってきたとき。
    ティファはちょうど今目を覚ましてしまったところのようで、体を起こしてぼう、としていた。
    時計は3時を指している。まだ夜中だ、半分寝ぼけているんだろう。

    部屋に戻ってきた俺と目があったティファは、何も言わずにただ微笑んでくれた。


    「ティファ」


    小さく名前を呼ぶ。続けて、悪い、起こしたか、と言うつもりだった。
    だけど何も考えられないまま、体がティファのもとに動く。その体を抱きしめたくて、先に手が伸びる。

    俺は寂しいのか?嬉しいのか。それとも何かが、怖いのか?

    わからないまま、ティファの温かい体を抱きしめた。
    あっという間に冷え切っていた自身の体に、その体温が馴染む時。これまでの不安が全て消えるように、優しい気持ちが俺を包んだ。

    もう大丈夫だ。頭の中で、自分の声が聞こえた気がした。


    「…ティファ」
    「うん…」
    「……、」
    「…ここにいるよ、クラウド」


    優しく何度も何度も背中を撫でてくれる、小さくて華奢な手。
    この手を、ティファを守りたくて走ってきた。何度も立ち上がってきたつもりだった。
    守られていたのは俺の方だったと、気づくまでに随分と時間がかかったけれど。

    大きく、何度か深呼吸をしてからゆっくり体を離す。

    ティファの頬に手を添える。顔が見たかった。
    ティファは俺の心中を察してか、何の曇りのない優しい顔をしていた。


    「…落ち着いた?」
    「……ああ」
    「すっごく早起きしちゃったね」
    「…悪い、」
    「ううん、いいの」


    その代わり。ティファがなぜか嬉しそうに呟いた。


    「ちょっとお話しよう」


    ぽんぽん、とさっきまで俺が横たわっていた場所を叩く。首を傾げながら俺はそこに座り直す。
    俺がティファなりの定位置についたことを確認してから、ティファはシーツから抜け出す。
    それから俺の脚の間を割って、背中を預ける形で俺の腕の中におさまった。

    薄い肌着しかまとっていない彼女が寒くならないように、くちゃくちゃになったシーツを引き寄せて、自分ごとティファの身体を包む。
    ティファは嬉しそうに、満足そうに、頭だけ振り返って笑ってくれた。


    「へへ…クラウドが毛布になったみたい」
    「…機能性は悪いが、我慢してくれ」
    「ふふ…」
    「…寒くないか?」
    「うん、大丈夫」
    「……」


    ありがとう。
    音になるかならないかぐらいの声を、ティファの首筋に顔を埋めながら呟いた。
    ティファは何も言わない。ただ小さくうなずいて、俺にゆっくり体重を預けてくれた。
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    ottotto503

    DONEはつこい 無印ED後?何事もなかったかのように服を纏い直して、何事もなかったかのように呼吸を整える。月さえどこかに隠れた真夜中、ひっそり元通りの姿に戻っていく私の様子を、彼は服も纏わずベッドに腰掛け黙ったまま見つめている。

    ここで眠ってもいい? 朝まで一緒にいたいの。一緒に過ごしていたこと、ばれてしまっていいんだよ。悪いことは何もしていないのだから。

    頭の中で暴れ、駄々をこねる本音に蓋をして、元に戻った私は彼を振り返る。彼は「戻る準備」のできた私を、私とおんなじ作り笑顔で出見送る。

    「……じゃあ戻るね」
    「…ああ」

    引き止めて。せめてもう少しだけ一緒にいようよ。お日様が目を覚ます前には戻るから、それまで隣でまどろみを感じさせて。

    かちこちの笑顔を構成するわがまま。戻ると言いつつ部屋の出口を振り返れないことが、その強さを物語る。

    彼の目を見る。彼は私の目を見てる。言葉で表現するのが下手な私たちは、視線で気持ちをやり取りする。受け取る気持ちが、受け取る想いが、正しいのかどうかもわからないまま。

    このままだと本当に、時間が止まって動かない。お月様も眠れないし、太陽は朝を連れてこれない。小さなため息と 1050

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