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    ※めちゃくちゃ不穏なところで終わってるけどこの後ちゃんとハッピーエンドになるので安心してください

    ハッピーエンドしか認めない ずっとカーヴェのことが好きだった。
     その気持ちをアルハイゼンが自覚したのは、もう今となってはいつだったのか分からない。恋に落ちるのに理由はないとか突然落ちるものだとか言われるけれど、まさにその通りで、おそらく「気づいたら好きになっていた」というのが正解なのだろう。とにかくそんな気持ちを抱えて数年経ったけれど、それでもアルハイゼンはこの気持ちを本人に伝えるつもりはなかった。
     同性同士だからとか、元友人だからとか、ルームメイトだからとかそういう理由で隠し通すと決めたわけではない。問題はカーヴェのほうにあった。彼が悪い、ということではないけれど、とにかくアルハイゼンの想い人は「人からの好意を素直に受け取ることができない」という問題を抱えていた。加えて彼のあらゆる行動原理には「罪悪感」が付き纏っている。アルハイゼンが想いを伝えることで「君をそういう目で見ることはできない」と拒絶されるだけならまだいい。問題は、そうやって拒絶したことによって、カーヴェが罪悪感に苛まれるのではないか、という点だった。
     人の性格や考えは簡単に変えることはできない。それが、過去に起きた出来事に起因するものなら尚更。アルハイゼンは、カーヴェのことを無理矢理変えようだなんて思っていない。いや、変えることはできないのだと昔から知っている。だからこそ、想いを打ち明けて再び彼を傷つけてしまうくらいなら、このまま墓場まで持っていったほうがいいと思った。けれど、願わくば。いつの日か彼が人からの好意や愛情といったものを素直に受け取れるようになって、彼自身本心から好きだといえる人間に──それが、アルハイゼンではなくても──そんな人間に、出会えたら、と。


    *


    「好きだ」
     それはなんでもない日の朝のことだった。本当に、特別な日でも、何があったわけでもない。朝起きたら先にカーヴェが起きていて、おはよう、と言ってコーヒーを淹れていて。窓から差し込んでくる朝日に照らされてきらきらとしている彼を見て、あぁやっぱり自分はこの男のことが好きなんだな、と思った瞬間にはアルハイゼンの口からぽろりとその言葉はこぼれ落ちていた。とはいえ出た瞬間にはそのことに気がついた。出てしまった言葉は取り消せないと分かっているので、手で口を覆うなんてこともしない。ただゆっくりと視線を動かして、その言葉を聞いたであろう同居人の反応を待つ他なかった。
     聞こえなかったのであればそれでいいし、「好き」と言った対象がカーヴェ以外の何か──例えば今彼が淹れてるコーヒーのことだとか、そういった勘違いをしていればいい。寧ろここ数年のことを考えれば、予想される反応はそういったものに違いないと思っていた。けれど、アルハイゼンはカーヴェのことを侮っていた。人間の性格や考えはそう簡単には変わらないし、彼に関しては自分では変えられないと思っていた。けれど、過ごしてきた環境と年数で──じわじわと、ゆっくりと、変わっていくこともあるのだ。
    「……それは、僕のことか?」
     カーヴェは、いつものように大騒ぎしたり揶揄ったりすることはせずにそう言った。動揺して手に持っているカップを落とすなんてこともなく、ただ彼は、アルハイゼンの瞳をじっと見つめている。それは確実に、なんのことか分かっている反応だった。分かっていて、敢えて聞いている。
    「…………そうだ」
     アルハイゼンは誤魔化すことはできないと諦めて答えた。けれど、その言葉に対するカーヴェの反応は、照れるでもなく嫌悪感を示すでもなかった。彼は、少し俯いて、何かを考えているようだった。
     二人の間に、言葉はない。聞こえるのは、カチ、カチ、と時計の秒針が進む音だけだった。けれど、その時間もそう長くは続かない。1分にも満たない時間が過ぎて、カーヴェはハッとしたように顔を上げた。
    「あ……ごめん、黙っちゃって」
    「構わない。何を考えていた?」
     そんなことは聞かなくても分かる。好きだ、と言われて、それにどう答えるのか。それを考えていたのだろう。ただ、気持ちを伝えただけで「付き合ってほしい」という所謂交際の申し込みをしたわけではないから、返答に困っているのかもしれない。はっきりとそれを伝えるべきか、という考えがアルハイゼンの脳裏をよぎる。けれど、それを口に出す前に、カーヴェは少し恥ずかしそうに笑って、言った。
    「……いろいろ、腑に落ちたんだ」
    「というと?」
    「昔はさ、君が僕のために沢山のことをしてくれた、っていうのが理解できなかったんだよ。でも、それを今理解したというか……あれもこれも全部、僕のことを思ってしてくれたことだったんだなって……君って、僕のこと好きだったんだな、って。そう思ったら、今までの色んなことが全部腑に落ちた、というか」
    ──カーヴェは人の好意を素直に受け取れない人間だと、そう思っていた。いや、昔はそうだった。けれど今は違う。かつて愛を上手に受け取ることができなかった人間は、もういなかった。
    「……カ、」
    「アルハイゼンー! いるー?」
     名前を呼びかけたところで玄関から良く知る声が聞こえてきて、アルハイゼンは言葉を飲み込んだ。そういえば今日は旅人と秘境へ向かう約束をしていたのだということを、一瞬忘れかけていた。にしても、タイミングが悪すぎる。せめて話が終わるまで待ってもらってもいいだろうかと無視していると、カーヴェは困ったように笑った。
    「出てやれよ」
    「……まだ話の途中だ」
    「なら帰ってきてから続きを話そう。大丈夫、僕は逃げたりしないから」
     それだけ告げると、カーヴェは玄関のほうへと向かった。
     その瞳は真剣だった。誤魔化したり、逃げたりしない。彼はちゃんとこの件に向き合う覚悟があると言っていた。

     けれど、その日カーヴェが帰ってくることはなかった。
     あれから1週間、彼の姿は見ていない。
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    PROGRESS※めちゃくちゃ不穏なところで終わってるけどこの後ちゃんとハッピーエンドになるので安心してください
    ハッピーエンドしか認めない ずっとカーヴェのことが好きだった。
     その気持ちをアルハイゼンが自覚したのは、もう今となってはいつだったのか分からない。恋に落ちるのに理由はないとか突然落ちるものだとか言われるけれど、まさにその通りで、おそらく「気づいたら好きになっていた」というのが正解なのだろう。とにかくそんな気持ちを抱えて数年経ったけれど、それでもアルハイゼンはこの気持ちを本人に伝えるつもりはなかった。
     同性同士だからとか、元友人だからとか、ルームメイトだからとかそういう理由で隠し通すと決めたわけではない。問題はカーヴェのほうにあった。彼が悪い、ということではないけれど、とにかくアルハイゼンの想い人は「人からの好意を素直に受け取ることができない」という問題を抱えていた。加えて彼のあらゆる行動原理には「罪悪感」が付き纏っている。アルハイゼンが想いを伝えることで「君をそういう目で見ることはできない」と拒絶されるだけならまだいい。問題は、そうやって拒絶したことによって、カーヴェが罪悪感に苛まれるのではないか、という点だった。
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