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    nawoki

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    カルデアでのⅡと王様③
    イスⅡ
    深く考えない人向け

    イスⅡ【小説より】


    少年時代によく読んでいた探偵もののシリーズが綺麗に揃っている書架を見つけ、Ⅱ世は郷愁に誘われてつい手に取っていた。
    書架の前に立ちながら没頭して読み耽っているとふいに書物に影が差した。誰か大きな人物が自分の背後に現れたのだ。
    本当は誰だかわかってる。
    今すぐ本を閉じてくるりと180度旋回して絶対に回しきれない胴に抱きついて腕を回したい。
    だがカルデアの、誰がどんなふうに見ているか分からないこの場所で『そういう事』をするわけにもいかずⅡ世は努めて冷静に
    「何か用か?」
    と背後の人物に問うた。
    心躍る書物はあるか?と背後の人物、つまり愛しの我が王、ライダーは問い返す。
    「イリアスもいいが、ミステリーも面白いぞ」
    と言いながらⅡ世は自らが読んでいた名作中の名作を手渡した。
    「まあここにはシャーロック・ホームズもモリアーティもいるわけだが」
    ネタバレが闊歩しているなんてどんな魔術だ、と呆れてしまう。
    「Fact is stranger than fiction.事実は小説よりも奇なりとは言うが。全く馬鹿げた話だ。物語の登場人物が現界しているなんて」
    Ⅱ世の呟きを聞き流しながら、ふむふむと視線を落として書物の文字を辿るイスカンダルの瞳を見た。いや、見惚れた。その頬に鼻筋に触れたい、と再び思ったがなんとか耐えた。
    人目が気になる、それだけではなかった。
    Ⅱ世の視線に気づいて、イスカンダルはなんだ?と声をかける。
    「貴方の、その本を読んでいる時の横顔が、好きだ」
    ほぉ、と口角を上げる王にⅡ世は嬉しくなる。
    だからずっと見ていたいんだ、と続ける。三文小説のような台詞である。しかし自分は劇作家でもなければ詩人でもない
    そもそもこれは誰かに読ませる小説ではなくただの事実だ。ただありのままの事実を述べているにすぎない。
    「戦場を駆ける貴方もいいけれど、こうして書を読む貴方もいい。知的で、静謐な雰囲気で」
    この王も直球な文句は嫌いではなかったようだ。王の手に持っていた名作中の名作は本棚に返された。これを借りるのはまた今度にしよう、と決めた。今は一刻も早く部屋に帰るべきだった。二人で。
    Ⅱ世は引き続き事実を述べる。
    「官能小説よりもsexyってことだよ」
    書架の影で唇が合わさった。
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